第三十七章
結局、ラヴァルンへは使者が送られた。
大仰な期待や、すぐに明快な答えが返ってくるという希望を抱いてではない。単純に、これ以上先延ばしにするほうが愚かだったからだ。山脈の向こうから本当に何か新しい圧が下りてきているなら、獣や魔物の流れがただの一時的な増加ではなく、継続したものになっているなら、隣国の沈黙はもう「向こうの勝手」では済まない。
エドランは一つの華やかな使節団ではなく、小さく、よく選ばれた使いをいくつかに分けて出した。道も分け、名目も分けた。表向きには、接触の回復、状況確認、情報交換の提案。だが実際には、向こう側にまだ理性ある秩序が残っているのか、それとも返答という行為そのものが成り立たないほど何かが崩れているのか、それを知りたかっただけだ。
まだ返事はなかった。
日だけが過ぎる。
戻ってくるのは中継地点からの短い報せだけだ。峠に着いた。古い街道に出た。最近の人の動きは少ない。天候が悪い。待機する。
その「返ってこない」という事実が、家の中では細く強い糸みたいに張っていた。誰も毎刻それに触れはしない。だが、全員が皮膚の下で感じていた。
そのあいだ、リラはすぐそばにいた。
もう壊れそうな薄さではない。
青ざめた影のようでもない。
だが、以前のリラでもなかった。かつてなら、彼はただ後ろから近づき、髪へ触れ、首筋へ唇を落とし、腰へ手を回せば、それだけで世界は静かなやさしさの中へ落ち着いていった。今は違う。今の彼女との близость は、外側では遅くなり、内側では深くなっていた。以前なら、彼女の中へ入ることは温かい沈み込みだった。今はもっと別のものだった。
溶けることに近かった。
そこが、いちばん怖かった。
悪いからではない。
強すぎるからだ。
一歩深く入ったら、もう戻りたくなくなるのではないか、そういう怖さだった。
それが見つかったのは、すぐではなかった。
何度か彼は近づいた。触れた。口づけた。隣に横になった。どれも間違ってはいなかった。だが、どこか届かなかった。二人とも分かるところまで、まだ行けていなかった。前の形へ引き戻そうとしている気もしたし、新しいものの縁で彼自身が止まっている気もした。
それが起きたのは、ほとんど不自然なくらい静かな夜だった。
カイラはもう寝所へ下がっていた。もっとも、たぶん眠ってはいなかっただろう。アヤノは隣の部屋の窓際にいて、本を開いていた。二人に必要な距離を与えながら、家のつながりからは外れない、その立ち方だった。城壁の外では、風が石に沿って流れ、時おり鎧戸をかすかに鳴らした。部屋の中には灯りが一つだけあって、その半明かりは身体を隠すのではなく、むしろ近くした。
リラは寝台の縁に座って、髪をほどいていた。
彼は近づき、その前で止まった。
背後からではなく。
正面から。
リラが目を上げた。その目の中には、昔のような、最初にこちらを包む柔らかな流れはもうなかった。そこにいるのは変わらずリラだった。だが、そのいちばん奥に、戦いの時に見たあの静かな恐ろしさが残っていた。ただしここでは、それは殺意ではなく、受け入れる深さとしてあった。彼がこの中へ入ってきて、全部を持っていかれ、そして前と同じままでは出ていけないことを、彼女は最初から知っているようだった。
彼は彼女の前へ腰を下ろし、ほとんど同じ高さで向き合った。膝へ手を置き、そのまま太腿へ、布の上を滑っていく。布越しにも、そこにすでに生きた熱があるのが分かった。リラは動かなかった。ただ呼吸だけが少し深くなった。
「どうしたの」
静かにそう訊かれて、彼は普通の言葉では答えられないと分かった。
「欲しい」では足りない。
「愛してる」でも足りない。
今の彼に必要だったのは、彼女を抱くことそのものではなかった。もっと危ういものだった。彼女の中へ深く入り、その温度と匂いと呼吸と、この新しくなった底の深さの中へ、自分ごと沈みたい。そうしておきながら、なお自分の中に、カイラとアヤノと、この家と、まだ外にある世界と、そういうものを保っていたい。
彼はリラへ口づけた。
やわらかくではなく。
荒々しくでもなく。
貪るように、深く。長く息を止めたあと、ようやく空気を吸い込めた時みたいに。
リラはすぐに応えた。せかすようでも、ためらうようでもなく、最初からその動きのために開かれていたみたいに。片手が彼の首へ、指先が髪へ入る。その触れ方には、導こうとする気配がない。ただ完全な「はい」だけがあった。
彼は頬を両手で包み、もう一度口づけ、顎へ、首へ、鎖骨へ下りていった。衣が肩から落ち、肌が現れる。それを見た瞬間、彼は自分の中に起きる荒い欲をはっきり感じた。ただ見たいのではない。ただ美しいと思いたいのでもない。その胸を掌でつかみ、乳首を口に含み、彼女の息が少し乱れるのを聞きたい。その熱を、もっと露骨に自分のものとして感じたい。
彼はそのままそうした。
乳首に唇をつけると、リラは短く息を吸った。指が彼の後頭部へ深く入り、軽く押さえる。そのわずかな動きだけで、彼の下腹はさらに強く熱くなった。
もう、以前の二人ではなかった。
昔の近さには、もっと光があった。やさしさと、ゆっくりとした確かめ合いがあった。今は違う。もっと濃く、もっと暗く、もっと深い。彼は彼女の胸、腹、脇、太腿へ、口と手を落としていった。それは「慣らす」ためではなく、彼自身がもう、彼女のどこに触れても足りない状態に入っていたからだ。彼女の肌も、匂いも、息も、この喪失のあとに立ち上がった新しい深さも、全部を一度に欲しがっていた。
リラは静かに横になった。
そこが、たぶんいちばん強かった。
受け身ではない。
従順というだけでもない。
ただ静かだった。海のように。岸へ頭を下げるわけではないが、入ってくるものをまるごと包む、その静けさだった。彼女は自分から脚を開き、彼をもっと近くへ入れた。彼の手がそのあいだへ滑ると、彼女の身体はすでに温かく、濡れ、開いていた。性急だからではない。彼女自身もまた、彼のほうへ来ていたからだ。
彼は指でゆっくり触れ、さらに奥へ入れた。リラの身体はすぐにそれを受けた。腹で、腰で、胸で、呼吸で。声は大きくない。だが、短く切れる息と、わずかに自分から腰を上げるその動きだけで、彼には十分すぎた。
彼は入った。
急には入らない。
だが、ためらいもない。
長く帰れなかった場所へ、ようやく深く戻る時のように、重く、深く。
リラはすぐに脚で彼を抱き、そこですでに、彼の内側の均衡を少し壊した。それは単なる受け入れではない。飲み込まれる感覚に近かった。彼女が彼を中へ入れるのではなく、内側へ引き込んでいくような。
彼はまた口づけた。唇へ、首へ、口角へ。そうして腰を動かし始めた。最初は深く、一定に。まだ、物事の輪郭を保とうとしていた。だが、リラはそのたびに返してきた。背中へ置かれた手、髪へ入る指、顔を上げた時に頬へ触れる掌。そのひとつひとつが、彼に「ただ抱いている」のではないことを分からせた。彼女は彼を、自分の中へ招き入れながら、同時に自分のほうへ取り込んでいた。
そこから先、彼の内側は危うくなった。
カイラといる時には、彼は支配と力を感じる。
アヤノといる時には、応酬と熱を感じる。
だが、リラと今こうしている時、彼は「自分が取っている」という感覚を少しずつ失っていった。あまりに強く、「彼女の中へ溶けている」という感覚が前へ出てきたからだ。彼女は彼のものだ。間違いなくそうだ。だが同時に、彼もまた、彼女の内側で形を失いかけていた。
それは交換ではなかった。
均衡でもなかった。
飲み込まれることだった。
彼はそこで、もっと強く動いた。深く。速く。ほとんど焦りに近い勢いで。彼女の中へ入ることそのものではなく、自分が消えてしまいそうなこの感覚へ、なお抗うように。ここで全部を失わないように。頭のどこかに、まだ外の世界があることを残すために。カイラがいる。アヤノがいる。家がある。彼女だけがすべてではない。そういう意識を、かろうじて握り続けるために。
だが、その удерживание を可能にしたのも、結局は彼女たちへの愛だった。
もし、リラしかいなかったなら。
もし、彼の世界が今ここで彼女一人へ閉じていたなら。
たぶん彼は、喜んでそのまま沈んでいた。
この女の中へ。
この身体へ。
この静かな、「私はあなたのもの」であると同時に「あなたも私の中にいる」という、あまりに危うい感覚へ。
彼はリラをもっと強く抱いた。片手で首の下を支え、もう片方で太腿を持ち上げる。角度が変わり、奥まで深く入る。そこでリラは、ただ息を漏らすだけでは済まなかった。小さく、低く、はっきりとした声が出た。その瞬間、彼の中の何かがほとんど痙攣するように反応した。リラはもう、ただ受けているのではなかった。脚はさらに彼を締め、髪に入った指は強くなり、胸は呼吸に合わせて何度も上下し、その濡れと熱は一歩ごとに彼を内側へ引きずり込む。
彼は口を重ね、喉へ下り、胸へ触れ、また唇へ戻った。そのあいだずっと、頭のどこかでは恐れていた。もしここで、ほんの少しでも気を抜けば、自分はもう「リラを抱く男」ではいられない。彼女の中に沈み込んだまま、そこを唯一の現実にしたくなる。もはや、彼女との близость は慰めでも、やさしさでも、昔の意味での愛でもなかった。それらを含みながら、それよりさらに危ういものになっていた。人が他人の中へ добровольно 消えていく、その手前にあるものへ近かった。
だからこそ、カイラとアヤノを愛しているという事実が、彼を保った。
義務ではない。
均衡のためでもない。
本当に彼女たちもまた、彼の現実だからだ。
そのことが、リラへ沈みきることをかろうじて止めた。
彼はさらに深く入った。リラの身体は、もう完全にその動きの中で生きていた。太腿も、腹も、胸も、喉も。彼女は「もっと」とは言わない。だが身体のほうが、すでに何度もそう言っていた。脚は締まり、腰はほんのわずかに迎え、彼の一つ一つの打ち込みを逃がさない。
リラが果てた時、それは静かだった。
だが深かった。
叫びではない。
ただ、目が閉じ、唇が少し開き、彼を包む内側が一気に変わった。それだけで彼には分かった。波が、彼女の全身を通っている。締めつけ、熱を上げ、受け入れをさらに深くしていく。その瞬間の彼女は、もはや単に「愛される女」ではなく、彼をもっと内側へ迎え入れる存在そのものだった。
そこからは、彼もほとんど持たなかった。
あと数度、強く、続けて入り、首筋へ顔を埋めるようにして、彼はそのまま果てた。そこで出たのは、ただの快感だけではなかった。怖れも、戸惑いも、彼女の中へ消えてしまいたいというあの危うい衝動も、全部まとめて吐き出されたような感覚だった。
しばらく、二人はそのままだった。
彼はまだ彼女の中にいる。
彼女の脚はまだ彼を抱いている。
彼女の手は彼の後頭部にある。
彼の顔は彼女の肩へ沈んでいる。
部屋はひどく静かで、隣の部屋の鎧戸を風が触る音まで聞こえた。
最初に動いたのは、リラのほうだった。
離れようとしたのではない。
ただ、指先で彼の頬をなぞり、それから、とても小さな声で訊いた。
「少しは、楽になった?」
彼はすぐには答えられなかった。
「楽になった」という言葉では、さっき彼女の中で起きたことに、あまりにも足りなかったからだ。




