第二十六章
エドランは、結局その瞬間を逃した。
考えが遅かったわけではない。
考えそのものは間に合っていた。早すぎる打撃は、敵をこちらではなく、向こう側の殉教者にしてしまう。遅すぎる打撃は、連中に組織化する時間を与える。そのこと自体は、彼も正しく理解していた。
だが、理解していることと、その瞬間に実際に届くことは別だった。
その夜には、もう遅れていた。
家の中は、まったくの安眠ではなくても、少なくとも“家の夜”ではあった。ここ数か月のあいだに、彼らの暮らしにはあまりに多くの隠れた動きが入りすぎていて、誰一人、完全に安心しきって眠ることなどなかった。だが、それでもなお、あれは戦場の夜ではなく、家の夜だった。火床の熱はもう静かな残り火になっていた。サレットはその日は泊まっていない。リラは昼のうちに少し疲れていて、珍しく素直に早く横になった。カイラはまだしばらく、なぜかまた“あるべき場所にない”刃物にぶつぶつ言っていた。アヤノは寝台のそばで記録を読み、やがてそれを置いた。彼自身もすぐには眠れなかったが、それでも最後にはかなり深く落ちていたらしい。最初の音では、何が起きたのか分からなかった。
分かったのは二度目である。
叫びではない。
もっと悪いものだった。
金属。
短く、乾いた、そして近すぎる音。
彼は一瞬で起き上がった。手はもう剣へ伸びていた。その動きの途中で、彼は理解した。遅れたのはエドランだけではない。
自分もだ。
もう全部、彼の介入なしで始まっていたからだ。
通り部屋では、もう戦いが起きていた。
いや、戦いと呼ぶには短すぎた。
最初の影は、窓を突き破って入ってきた。裂けた布の向こうから夜気が流れ込み、そのまま床へ落ちるより先に、カイラはもう立っていた。あとで思い返そうとしても、彼には順序をきちんと復元できなかった。ただ全体として、怒りと美しさと、人間離れした速さだけが残っている。短く乾いた雷が、床へ足がつくより先に彼女の指先から走った。
相手を弾き飛ばしはしなかった。
劇的に胸を貫いたわけでもない。
ただ、顔と喉を一撃で焼いた。白く鋭い閃光のあと、さっきまで任務を帯びた人間だったものは、そのまま床へ落ちた。もう死んでいた。
二人目は、扉から来た。
こちらのほうが賢かった。
静かに。
刃を握って。
もう音は上がっていると分かっていたのだろう。無闇に速さへ賭けるのではなく、短い距離での仕留めに来ていた。
アヤノが迎えたのは、闇だった。
芝居じみたものではない。見栄えのする演出でもない。ただ、目の前に“濃い暗さ”を落とした。光の不在ではなく、向けられた暗がりだった。男はそこで半歩だけ空間を見失った。その半歩で十分だった。足元の床板から、硬く、ほとんど石のような縁が立ち上がる。脛が砕けた。男は倒れ、アヤノはすぐには終わらせなかった。薄く乾いた光の刃が、ほとんど色もなく喉を横に走った。血が噴いたのは、身体が一度痙攣したあとだった。
その時、リラは慌てて立ち上がったわけではなかった。
彼が寝室から出た時、彼女はもう見えていた。
下腹へ、もうすっかり癖になったあの手の置き方を一瞬したまま立ち、部屋の中心でもなければ、最前でもない場所にいた。まさにいるべき位置に。弱い点ではなく、結び目として。
三人目は、そこを狙った。
おそらく、ここでいちばん狙いやすいのは妊婦だとでも思ったのだろう。家の中で最も強くない相手。最も壊しやすい相手。そういう愚かな確信を持って。
そこで彼は本当に飛び出した。
だが、またしても間に合わなかった。
リラは水で迎えた。
水差しから流れる水ではない。もっと重く、圧のある水だ。卓に置かれた器から一気にすくい上がった水が、ほとんど硝子の棒みたいな密度で男の顔へ叩きつけられた。頭が持ち上がり、視界が潰れる。そこで、もう最初の一人を片づけていたカイラが、二発目の雷をそのまま入れた。こっちは最初よりも荒く、明るく、怒りに寄っていた。男は即死しなかった。アヤノが一歩入って、床板の縁をそのまま肋の下へ持ち上げた。それで終わった。
彼は、半ば抜きかけた剣を持ったまま、そこで立ち尽くしていた。
何もかもが終わるのが早すぎた。
そのあとの静けさは、襲撃そのものと同じくらい不気味だった。
裂けた窓布がまだ夜気で揺れていた。下ではもう、人が走る音がしている。音に起こされた者たちだ。匂いは、雷の焦げた臭いと、濡れた木の匂いと、血と、焼けた肉の混じったようなものだった。
カイラは裸足で立ったまま、最初の死体を見下ろしていた。息は荒い。顔には、ほとんど侮辱されたような不満がある。
「これで終わり?」
彼女は言った。
「本気で? これが殺し屋?」
アヤノは何も言わなかった。
ただ、ゆっくり息を吐いて手を下ろした。その顔は、とても静かだった。静かすぎるくらいに。だが、あのホウセイの野営地のあとで見た、あの死んだような静けさではない。違った。ちゃんと動きに入り、ちゃんとそこから戻ってきた人間の静けさだった。
最初に座ったのはリラだった。
怖かったからではない。
もう座っていい段階になったからだ。
彼はすぐそばに行った。
「無事か」
リラは頷いた。
「うん」
それから、壁際の死体へ視線を向けて、静かに言った。
「私なら間に合わないって、本気で思ってたんだね」
カイラが悪く笑った。
「今日はみんな、そういうどうしようもない思い違いを抱えてたってことよ」
彼がそれに何か返す前に、外で鐘が鳴った。
家の警鐘ではない。
もっと悪い。
城全体のものだった。
しかも、そのすぐあと、下のほうから叫び声が上がった。
ここではない。
もっと遠い。
町側。
学校のほうだ。
そこで全部が繋がった。
一つではない。
二つだ。
しかも、本命はあちらだった。
彼がエドランのところへ駆けた時には、アヤノももう服を整えてついてきていた。カイラはリラのそばに残った。顔だけ見れば、彼女にとってそれは一種の拷問に近いくらい不本意だったろう。だが残った。それが正しかった。
エドランは執務室ではなく、移動の途中で彼らを迎えた。
顔が、もう怒りを通り過ぎて悪かった。
「学校だ」と王は、彼らが問う前に言った。「火が出た。複数の班が、別々の方向から入った。教師が動いたのは早かった。だが最初ではなかった」
「何人だ」
彼が問うと、エドランは正面から答えた。
「いま確定しているだけで四人。子どもだ。負傷者もいる。もっと悪くなっていてもおかしくなかった」
四人。
その数字は、妙に生々しく入ってきた。大虐殺ではない。皆殺しでもない。つまり、違う。
ヴェイルはその一分後に来た。まだ外套を着たままで、袖に煤がついていた。つまり、もう現場に行ってきたのだ。
「狙い方が選別されていました」
彼は挨拶もなく言った。
「建物全体ではありません。人です」
エドランが頷く。
「そうだ」
ヴェイルは続けた。今度は彼を見て。
「いくつかの寝室と、一つの教室棟にはすぐ火が回った。だが北側の棟――二つの特定の家筋の娘たちをまとめていた場所――そこには手がついていない。まったくです。触れようとすらしていない」
彼の中で、非常に冷たい理解が固まった。
「なら、狂信じゃない」
「まったく違います」とヴェイル。「“新秩序への憤怒”ではない。もう完全に、家の論理で選んでいる。脅し、止め、値段を見せる。その一方で、傷つけてはならない自分たちの子は守る」
エドランが、低く言った。
「足跡だな」
三人は夜明け前にそこへ向かった。
焦げた木の匂いは、学校に着く前から分かった。被害は一部だけだった。建物全体ではない。そのことが、かえって重かった。混乱でも、無差別でもない。必要なだけ傷つけて、必要なだけ残したのだ。傷跡と警告だけを残すように。
中庭には、もうヴェイルの配した人間がいた。教師たちは青ざめており、疲れ切っていて、話す言葉は短かった。年長の女たちも何人かいた。その顔には、あの稀な表情が出ていた。悲しみがまだ涙にならず、ただ“数え、運び、生きている者を удерживать”という働きに変わっている時の顔だ。
子どもたちの遺体には、もう布がかけられていた。
それについては、彼は感謝した。
見られないからではない。
見たくなかったからだ。頭の中に、これ以上余計な像を増やしたくなかった。
ヴェイルが中へ案内した。
北側の棟は、たしかにほとんど無事だった。煤や煙や、混乱の跡こそある。だが、火も侵入も決定的なものはない。対して南と中央は違った。
「ここにいたのは、大きな後ろ盾のない子たちです」とヴェイルは言った。「あるいは、もう従うしかないと受け入れている家の子たち。逆に、こちらには、まだ“自分たちは特別だ”と思っている家の傍流の娘が二人いた。そこはまったく無傷だった」
「他の者たちは、もう買われたか、折られたか、あるいは事実上同意したということか」
彼が言うと、エドランは即座に答えた。
「そうだ。この数家だけが、まだ“失わずに交渉できる”と思っている」
ヴェイルが二人を見る。
「そして、今夜で、彼らは陰謀から行動へ移りました」
彼は、煤けた壁を見ながら黙っていた。
頭の中では、二つの働きが同時に進んでいた。
一つは数える側だ。これで足跡がついた。範囲が縮まった。自分の子だけは傷つけなかった家は、自分で名乗ったも同然だ。きわめて実用的で、冷たい意味でほとんど完璧な痕跡だ。
もう一つは別だった。
間に合わなかった、という感覚だ。
彼は自分に言うこともできた。主目標は学校で、家への襲撃は並行する撹乱にすぎなかった、と。自分が眠らず、食わず、呼吸を止めていたとしても、同時に二か所へは行けなかった、と。子どもたちが死んだのは、自分の計算ミス一つのせいではない、と。
全部、事実だ。
だが、足りない。
もう一つの事実がある。彼は助けに間に合わなかった。
エドランは、彼の考え方を読んだのだろう。非常に平らな声で言った。
「いまは、距離の問題で自分を噛む時間じゃない」
彼は振り向かなかった。
「じゃあ何の時間だ」
「 последствия の時間だ」と王は答えた。「これが連続の最初ではなく、最後になるようにする時間だ」
ヴェイルが、もっと乾いた調子で続けた。
「彼らは自分で作業を狭めてくれました。他の者たちは、もう買われたか、受け入れたか、あるいは“同意するか全部失うか”の選択の前に立たされて、結論を出しています。この数家だけが違う。つまり、無力化すべきなのは彼らです」
それは、熱も復讐も含まない言い方だった。
だから、なおさら重かった。
三人が城へ戻ったのは、もう朝だった。彼の頭の中には、ずっと「四人」という数だけが残っていた。統計ではない。誰かが自分たちの影響の輪郭を描くために穿った四つの穴として。
家の中は、もう片づけられていた。
死体は運び出されていた。割れた窓には応急の布が張られている。血も洗われている。匂いだけは、まだ残っていた。その中で、かえって奇妙だったのは、生活そのものは壊れていないことだった。
リラは卓に座っていた。布を掛けて、杯を持っている。
生きている。
カイラはそのそばにいる。顔だけ見れば、“三つ死体を作って正しかったくせに、もっとまともな戦いをさせてもらえなかったこと”にまだ腹を立てている。そしてアヤノは、彼と一緒に戻ってきて、戸口のところで止まった。
そこで彼は、彼女について二つのことを同時に理解した。
一つ目。彼女はちゃんとやり切った。
「生き延びた」ではない。
やり切ったのだ。
彼なしで。指示なしで。彼の力を軸にせずに。ついこの前まで、ホウセイの野営地ひとつで内側から崩れかけていたアヤノが、いまは家への襲撃のあとで、乾いて、整って、すでに次にどこを詰めるか考えている。
二つ目。そのことは彼を、安堵させるのとほとんど同じくらい強く傷つけもした。
男の愚かな“必要とされたい”とは違う。
もっとややこしいものだ。
彼の内側には、まだ古い反射が残っている。自分が間に合わなければならない。自分が塞がなければならない。自分が最初の удар でなければならない。だが、現実のほうは、もうそこを追い越していた。彼の女たちは、常に自分の身体で覆うべき存在ではなくなっている。彼女たちは、自分で殺せる側へ来ていた。そして今まさに、その新しい力で、彼がまともに戦列へ入るより前に、刺客を粉にしていた。
カイラは、その顔を見て、ほとんどすぐ言った。
「それ、やめなさい」
「何を」
「今の顔。半分は“学校に間に合わなかった”。でももう半分は、“こっちは私たちだけで片づいた”ってやつ」
彼は彼女を見た。
「そこまで分かるのか」
「ひどいくらい」とカイラは言った。「安っぽい本みたいに読みやすい」
リラが、静かに息を吐く。
「学校には間に合わなかった」
彼女は言った。
「それは、本当に痛い。でも、こっちには来た。思っていた形じゃなかっただけで」
彼は何か言い返そうとした。
できなかった。
形式だけ見れば、滑稽ですらある。彼は家では、本当に“半拍遅れの観客”だった。剣を抜ききるより先に、自分の女たちが終わらせたのだ。
アヤノはゆっくり中へ入り、腰を下ろした。
「それを、恥だと思わなくていい」
彼女は言った。
声はひどく落ち着いていた。
「そんなことは言ってない」
「言ってない。でももっと深いところでは、少しそう思ってる。露骨には。じゃないけど」
彼は窓のほうを向いた。
そうだった。
恥ではない。
だが、それに近い、もっと嫌な再調整の痛みがあった。彼の内側の秩序が、また現実とずれたのだ。世界はそれを何度も見せてきた。だが今日は、ことさらに乱暴だった。学校で子どもたちを守るべき時には、彼はいなかった。家で盾になるべき時には、盾は必要とされなかった。
そこへ、サレットが割って入った。幸か不幸か、この日も彼女は早めに来ていた。夜襲のことを聞いて、週の予定を無視して来たのだろう。
そして、彼女は誰も自分では言えないことを、きちんと言った。
「男って、自分の女たちが、もうただ守るだけの存在じゃなくて、自分の手で人を殺せる側でもあるってことを、なかなか受け入れられないものなのよ」
カイラはすぐ鼻を鳴らした。
「最悪のタイミングで、いちばん痛い真実を選ぶの得意よね」
「今日は、快い真実で済ませる気だったの?」
サレットは返した。
それには、もう誰も反論しなかった。
その後、エドランとヴェイルは、もう動き始めた。
公にはまだでない。
だが、いまや問題は“誰が邪魔か”ではなく、“誰を最初に潰せば、残りが順序を理解するか”になっていた。
彼もすぐに加わった。ここまではまだ、“価値があるから残すか、危険だから切るか”という贅沢な天秤を持てていた。だが、それは終わった。学校を狙い、自分の家の子だけは避ける。そこまでやった人間は、もうこちらのために答えを出している。
それでもなお、彼はそのあとエドランと名を追い、家系を辿り、金の流れを見て、夜だけ妙に体調を崩した衛士や、都合よく壊れた荷車の話を整理しながらも、ずっと二つのものを同時に感じていた。
学校。
四人の子ども。
焼けた棟。
間に合わなかったこと。
そして家。
指先に雷を残したカイラ。
土と光を迷いなく使ったアヤノ。
水で刺客を叩き潰したリラ。もう“弟子”ではなく、たった一度だけ自分を侮った相手を、その一度で終わらせた女として。
その二つのあいだには、都合のよい結論なんてなかった。
残っていたのは、ただ両方を持つことだけだった。
自分が間に合わなかったということと、彼女たちはもう自分がいなくてもできるのだということと。




