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第十九章

ヴェイルとの会話は、急に変わったわけではない。


だからこそ、変化がよく分かった。


最初は、単に来る回数が少し多いだけだった。形式の上では、もう彼と話すのは必要な時だけでよいはずなのに、妙に顔を出す。次に、用件が終わったあとも、数分だけ余計に残るようになった。さらにある日、内部の魔術師再配置について話し終えたあと、彼は卓の籠からまだ温かいパンを一つ取り、リラに一言そうしてもよいかと訊いた。その訊き方があまりにも自然で、まるでこの家の卓に手を伸ばすのがすでに初めてではないみたいだった。そしてそのまま腰を下ろし、カイラが三度目も林檎を思った場所へ飛ばせずに悪態をついているあいだ、動かずに座っていた。


その時にはもう分かっていた。


この会話は、ただの仕事ではなくなりつつある。


完全な意味での友情ではない。まだ早い。あいだには、地位も、警戒も、前の首席魔術師の血も、世界の構造そのものも横たわっている。だが、計算だけの同盟でもなくなっていた。そこには別のものがあった。相手が、自分の世界観を神聖なものとして最初から守る義務を負っていない、そのこと自体を面白がれるような、危ういが珍しい対話の愉しさだった。


ヴェイルがとくに興味を示したのは、彼の世界の“過去”だった。


細かな文化差や、奇妙な道具や、衣服や兵器の話ではない。階層。歴史。権力がどうやって自分を正当化していたのか。そして、その説明が現実に耐えなくなった時、何が起きるのか。


ある晩、もう夕食も終わり、リラが灯のそばで籠の中の糸をほどき、アヤノが本を読み、カイラが五つの物を同時に保ちながらも、なおその一つひとつに腹を立てている最中に、ヴェイルがふいに訊いた。


「あなたの世界でも、男たちは、自分たちの例外性は自然のものだと信じていたんですか。構造ではなく」


彼は、すぐには答えなかった。


答えがないからではない。


あまりに正確な問いだったからだ。


「そうだ」


彼はやがて言った。


「ただ、形は違った。必ずしも魔法じゃない。必ずしも家じゃない。必ずしも、露骨な権力ですらないこともある。土地だったり、軍だったり、知識だったり、宗教だったり。あるいは単に、“自分たちの生き方だけが完全な大人の形だ”っていう習慣だったり」


ヴェイルは、それを聞いて小さく頷いた。ほとんど、そこへ辿り着くのを待っていたみたいに。


「そのあと、どうなるんです?」


カイラが鼻で笑った。目を閉じたまま、匙と刃物と林檎と布と小さな器を危なっかしく保ちながら。


「ほら来た。これから長い講義が始まるわよ。“男たちは神じゃなかった”って世界がどんなふうに知るかっていう」


ヴェイルはそちらを見もしなかった。


「少し黙っててもらえますか」とだけ言った。


「無理」とカイラが即答する。「でも、だいぶうちの空気には慣れてきたから、そこは褒めてあげる」


彼はそこでようやく答えた。


「形はいろいろだ。抵抗するものもある。いったん戻るものもある。何も変わっていないふりをして、気づいたら中身だけ全部ずれていることもある。たぶん一番面白いのは、権力が形式として倒れる時じゃない。倒れずに残ったまま、もう前の言葉では自分を支えられなくなる時だ」


ヴェイルは、かなり真剣にそれを聞いていた。


「つまり、歴史って“勝ったか負けたか”じゃないんですね」


彼は言った。


「一度しか在り得なかったはずの階層が、“別の形もあり得る”と示されたあと、どれだけ長く生き延びるかの問題だ」


「そうだ」


彼は答えた。


「気味悪く安心する」


ヴェイルは言った。


「それなら、いま自分たちがいるのは“終わりの始まり”じゃなくて、“壊れているのに永遠の顔をし続ける構造”の長い時間の入口だと分かる」


アヤノが本から顔を上げた。


「それがどうして安心になるの?」


「相手の材質が分かるからです」


ヴェイルは答えた。


「未知のものは嫌いだ。でも、“自分は永遠だと信じたまま腐っていく構造”なら、扱い方がある」


カイラはそこでようやく目を開けた。


五つの物はまだ落ちていない。


「すごい。今の、ものすごく最高に色気のない言い方だった」


リラが小さく笑う。


「でも、ちゃんと首席魔術師っぽい」


ヴェイルはその言葉に、ごくわずかに口元を動かした。


「それは、褒め言葉だと思っていいんでしょうか」


「かなり控えめにね」


とカイラ。


その時、窓辺で乾いた葉を選り分けていたサレット・イヴァルが、首を振りながら言った。


「あなたたち、本当にいつも、相手を傷つけたいみたいな口の利き方をしてるのに、実際にはとっくに同じ卓の人間になってるわね」


カイラは振り返った。


「今の、すごく“賢い年上の女”みたいだった」


「だって私は賢い年上の女よ」


サレットは落ち着いて答えた。


「そういうところが、時々腹立つ」


「知ってる」


サレットは、この数週間で、家の中で確実に別の位置へ移っていた。


最初は、ただ“役に立つが危ない知識”を運んでくる存在だった。次に、古い秩序の匂いをまとった年長の女。さらに、その古さの中に、時々ひどく正確な現実感覚が混じる人間。そうやって少しずつズレていって、気づけば、彼女はもうただの外部者ではなかった。リラの背にどう枕を入れればいいかを知っていて、無駄に騒がず座らせることができて、カイラを一言で止めることができる。世界の側から来たはずなのに、その世界の悪い法則をすり抜けて、家の中ではほとんど“祖母”のような役割に落ち着きつつあった。


本人も、そのことに気づいているのだろう。


だが、それを権威に変えようとはしなかった。


あくまで、“そこにいるのが自然になっていく”だけだった。


時には腹も立つ。


だが、たいていは助かる。


とくにリラには。


リラは日に日に、静かさの質を変えていた。声そのものは前と変わらない。だが、重さが変わった。動きが変わった。彼女が「今じゃない」と言うと、それはもう柔らかい願いではなく、穏やかな当然として聞こえるようになっていた。


そのことに気づいたのは、サレットも同じだった。


ある時、リラは卓について、杯に手を置いたまま、カイラとアヤノがまた“六つへ行くかどうか”で言い合うのを聞いていた。五つの制御は、もう三人とも安定している。だからカイラは当然、「次だ」と言う。アヤノは「まだ粗い」と返す。話は同じところをぐるぐる回っていた。


そこでリラが、声も上げずに言った。


「今日は六つはだめ」


沈黙が落ちた。


今度はサレットが、その変化を外からはっきり見た顔をした。


あとで、他の二人が夕食の支度に移った時、彼女は彼に言った。


「あの子、もう自分で円の中心へ立ってるわね。そこは、わざわざ習わなくていいみたい」


「それは悪いことか?」


彼が訊くと、サレットは少し考えてから言った。


「強いことよ。強いものは、だいたい“良いか悪いか”だけじゃ済まない」


その頃、エドランはついに決断した。


一言で、突然に、という形ではなかった。むしろ、あまりに長く同じ場所のまわりを歩き続けた人間が、いつの間にか“もうここからは渡るしかない”と知ってしまった、そういう決断だった。


呼び出されたのは夜ではなく昼だった。


それだけで、すでに意味があった。これは思いつきでも私的な告白でもなく、行政として動かす決定なのだと。


彼が入ると、卓の上にはもう人名の紙ではなく、制度の草案が広がっていた。


「やる」


エドランは前置きなく言った。


彼は座った。


「どこまで?」


「一枚の命令で元へ戻せない程度には深く」


それは、本当に大きかった。


エドランは卓の端へ手を置いた。


「女の子のための別機関を作る。神殿ではない。宮廷の付属でもない。国家の下に置く。名目は、能力の確認と、基礎教育、それから振り分けだ」


「年齢は」


「九歳。男の子と同じだ」


彼は頷いた。


当然だ。


そして、痛い。


エドランは続ける。


「年齢の確認は共通にする。ただし、女の子には別の線を増やす。魔法の適性があると判明した者は、もはや儀式か出産のためだけには回さない。学ばせる。もちろん、最初から全員を同じ深さでではない。慎重にはやる。だが、学ばせる」


彼は、しばらく黙っていた。


言葉がないからではない。これまで長く“論争”としてしか存在していなかったものが、“決定”になった瞬間、すぐには実感が追いつかないからだ。


「何を壊すか、分かってるか」


やっと彼はそう言った。


エドランは、楽しげではない笑いを浮かべた。


「ほとんど全部だな。女の子をどう扱うかについて“自然”だとされてきたものの、大半を」


「家が揺れる」


「そうだ」


「男の魔術師団も」


「そうだ」


「年長の女たちも。自分たちこそ女の成長の唯一の正しい形を知っていると信じてきた女たちも」


「とくにそこが荒れる」


エドランは窓辺へ歩いた。


「これは力を増やすだけじゃない。移行の混乱を生む。その代価を、お前があとで“分かっていなかった”とは言わせない」


「理屈としては、もう分かってるだろ」


「理屈としてはな」とエドランは答えた。「だが今は、それが本当に構造を叩くのだと、ようやく皮膚で感じている」


しばらくして、彼は付け加えた。


「それでも、もう延期は中立じゃない。延期自体が決断になる。しかも、古い秩序のためによく殺す側の男たちを利する決断に」


それはあまりに簡潔で、そこを疑う余地がなかった。


「いつ公にする?」


彼が訊く。


「いきなり布告ではやらない」


エドランは言った。


「まずは行政上の準備だ。調査役。選別の文言。もともと女の手でやらせてもよかった部分への配置換え。そうやって、機関そのものより先に、機能を置く。そのあとで制度化する。順序を逆にすれば、相手に“反対する時間”だけを与えることになる」


「いい」


「そうか」


エドランは彼を見た。


「“やっと臆病でなくなった”とか、言わないのか」


「言わない」


彼は答えた。


「それはお前に優しすぎる。お前は、ただ“ここから先は臆病でいるほうが高くつく”ところまで来ただけだ」


王はそこで、ようやく少し笑った。


「お前は、本当に、人の決意に砂をかけるのが上手い」


「職業だ」


その決定は、新しく来たホウセイからの使いと、妙に噛み合った。


今度の要請は、いかにも平和そうな顔をしていた。神殿の聖職者たちが、アヤノに“秋の誓約更新の儀”への列席を願ってきたのだ。若い巫女や下位の奉仕者たちが、上位の前で“平和と奉仕と聖なる秩序の継続”への誓いを新たにする儀式。表面だけ見れば、いかにも敬虔だ。


だが、中身は見えやすい。ホウセイはまた、自分たちの聖職者たちの前で、“いまや平和に反していない生きた聖女”を見せたいのだ。


彼はその書状を二度読んで、言った。


「ちょうどいい」


アヤノは彼を見た。


「言わせたいんだね」


問いではない。


理解だ。


「そうだ」


彼は答えた。


「脅しとしてじゃなく、取引としてでもなく、ただ彼らに“もう世界は動いている”と分からせたい。もしヴァルガルドが本当に踏み出すなら、神権国家にとって一番自尊心を守りやすい形は何か、って」


「見習い制度」


アヤノは言った。


「その通り」


彼女は一瞬だけ黙った。


そして頷く。


「たしかに、ホウセイのほうが自然ではある。最初から器がある。私たちよりずっと、“何もないところから作る”感じは少ない」


「平和は平和だが」


彼は言った。


「均衡は均衡だ」


それを台所から聞いていたカイラが、すぐに口を挟んだ。


「やっと誰かが、ちゃんとした国家の冷たさで話してくれた」


リラは笑った。


「それ、褒めてるつもり?」


「もちろん。今の私にできる最大限の」


今度のホウセイ行きは、驚くほど滞りなく進んだ。


彼らももう慣れている。顔の作り方も、緩めてはいけない場所も、白すぎる石と明るすぎる神殿にどうやって自分の神経を削られないようにするかも。アヤノはその中で、さらに静かになった。柔らかくではない。もっと平らに。今の彼女はもう、ホウセイへ入るたびに引き裂かれる“元の聖女”ではない。相手が何を見たがっていて、自分がどこまでを見せないつもりかを、最初から分かっている人間の静けさだ。


誓約更新の儀そのものは、笑いたくなるくらい豪奢だった。


長い白布の衣の若い巫女たち。金と白をまとった上位者たち。煙。小さな鈴。唱和。光。若い女の顔の列。その顔にはもう、敬虔さと、定められた役割への慣れが一緒に見える。


彼はそれを見ながら、この構造の中へ新しい考えが入り込む余地が、いかに大きいかをほとんど身体で感じていた。ホウセイのほうが、この点に限っては、ヴァルガルドより自然に飲み込めるだろう。神権国家だから優れているわけではない。ただ、器がすでにある。少女をまとめて別の形式に入れることに、この国はもともと慣れている。今までは、その器が別の目的に使われていただけだ。


主要な儀式が終わり、ようやくアヤノが上位の聖職者たちと話す場面になった時、彼女はほとんど理想的にそれをやった。


煽りでもなく。


告発でもなく。


露骨な提案でもなく。


すでに世界に存在し始めている流れを、ただ“見えている人間”として置くやり方で。


「もし各国で少女の扱いが変わっていくなら」


アヤノは平静に言った。


「神殿も、自分たちの形を考え直したほうがいいかもしれません。でなければ、世界のほうが先へ行きます」


年長の一人が、少しだけ目を細めた。


「秩序の競争を語るのですか、聖女」


アヤノは、そこでほんの少し間を取った。


「国家どうしの平和の話をしています」


彼女は言った。


「でも、平和は、力の不均衡をわざわざ受け入れる理由にはなりません」


それは、ひどく静かに言われた。


だから、一拍遅れて鋭く入った。


彼には見えるような気がした。考えが、じわりと相手の中へ入っていく様子が。年寄りではなく、むしろ、その周囲に立つ若い者たちへ。巫女たちへ。その日、誓いを新たにしたばかりの、まだ若い女たちへ。


帰り道で、彼はアヤノに言った。


「よかった」


彼女は笑わなかった。だが、うっすらと温度だけが残る、あのごく小さな表情を見せた。


「嘘は言ってない」


「だから良かったんだ」


家に戻ると、そこにはもう、ほとんど慣れつつある密度の生活が待っていた。


サレットはカイラと言い合っていた。上の棚の布をリラが自分で取ろうとしたことが発端らしい。カイラは、“高いところへ手を伸ばすな”という一点で譲らない。サレットは、“妊婦は壊れ物ではない”という一点で譲らない。


「聞いて」


カイラが言う。


「いま私、信じられないことに“過保護”の側なんだけど。それでもなお、あんたのほうが世界と一緒に頭おかしい感じがする」


「私は、妊娠を病気扱いしていないだけ」


サレットは答える。


「必要以上に無力化するのも、別の愚かしさよ」


「いや、私はあの上の棚を自分で取れるんだけど……」


リラが小さく言う。


「そこが問題じゃない」とカイラとサレットが同時に返した。


その瞬間、リラは本当に可笑しそうに笑っていた。議論の中身より、二人が同じ声の出し方をしたことが可笑しかったらしい。


アヤノは、そのそばで、もう六つの物を動かしていた。


完璧ではない。


だが、かなり近い。


カイラは例によって、まず頭で壁を壊すほうのやり方から入る。次に、“向こうにあるのは勝利じゃなくて、もっと細い調整だ”と知って毎回少しだけ嫌そうな顔をする。リラは、今はもう早すぎる喜びで動きを壊さなくなったぶん、静かで長く続く制御を見せるようになった。


ある晩、彼は三人がちょうど同時に台所でやっているところを見た。


カイラは匙、刃物、林檎、杯、布、小さな柄杓を持ち上げていた。顔からして、かなり本気で物たちを憎んでいる。アヤノの六つは、ほとんど幾何学に近かった。リラの五つは数としては少ないが、動きそのものがひどく滑らかで、まるで物が彼女のまわりに“居る”のを許されているみたいな制御だった。


サレットは、その時ちょうど入口に立って、それを見ていた。


長いあいだ生きてきた人間特有の、滅多なことでは驚きを表に出さない顔が、ほんの少しだけ崩れた。


「なるほどね」


やがて彼女は言った。


「あなたたちが、今まで何についてそんなに黙っていたのか、ようやく分かった」


カイラは目も開けずに答えた。


「いや、何個か別のことについても黙ってる。これは、その中で一番浮いてるやつ」


サレットはゆっくり近づいた。


カイラのところで震えている刃物を見る。


リラのところで、ほとんど静かに空中を流れていく布を見る。


アヤノが、水を張った柄杓の線を自分の呼吸のように保っているのを見る。


それから、ほとんど独り言みたいに言った。


「娘たち……」


そこには見下しも、哀れみもなかった。ただ、とても古く、とても女の側からの、遅すぎる認識の痛みだけがあった。世界は、もっと前にこうなっていてもよかったのだという、その痛み。


最初に物を下ろしたのはリラだった。


次にアヤノ。


カイラは最後で、しかも“終わり方すら派手にしたい”という顔をしていたが、それでも今日はきちんと丁寧に戻した。


サレットは彼を見た。


「やっと分かったわ」


彼女は言った。


「あなたが、この世界の造りにあんなに腹を立てる理由が」


彼は何も返さなかった。


返せなかった、というより、どんな言葉も少し違う感じがしたからだ。小さすぎるか、大きすぎるか、そのどちらかになる。


その少しあとで、ヴェイルが来た。


今度はほとんど前触れもなく。書類を持っているわけでもなく、ただ“今話したいことがある”という顔で。カイラは扉を開けるとすぐ言った。


「今度は何、首席魔術師。また国家をうちに持ち込んできたの?」


ヴェイルは、もうその言い方にも慣れていた。


「今回は、むしろ結果です」


「うわ。それ、国家そのものより面倒なやつじゃない」


彼は中へ通した。


ヴェイルは部屋に入り、まず三人を見て、卓を見て、食べかけの夕食を見て、そして、またしても本来あるべき場所にない包丁を見た。そのあとで言った。


「エドランはもう最初の静かな手順に入っています。九歳の女の子の検査のための外枠を、調査役たちが先に組み始めた。まだ“何を作るか”は誰も口にしていない。だが、人はそこまで鈍くない」


「で?」


彼が訊く。


「家はすでに怒っている」


ヴェイルは言った。


「とくに、女の系統を自分たちの交換資源みたいに見ていた家ほど。魔術師たちは、まだ何が起きているか完全には分かっていない者も多い。でも、侮辱だけは先に感じ取っている」


カイラは満足そうに頷いた。


「最高。つまり今のところ全部正解ってことね」


アヤノが杯を置いた。


「ホウセイのほうも気づいた」


ヴェイルは彼女を見る。


「どの程度?」


「少なくとも、若い巫女たちが、年長の巫女を見る時の目が少し変わる程度には」


アヤノは言った。


「いったん“別の入り方があるかもしれない”という形が見えると、そこから先の敬意は前と同じではいられない」


ヴェイルはゆっくり息を吐いた。


「それなら、もう本当に世界は動いてる」


その時、リラがただ黙って、彼の前にパンを寄せた。最近、彼女はそうすることが増えた。まず人を座らせ、食べさせ、それから秩序の崩壊や国家の変化について話させる。その順番を、いつの間にか彼女は当然のものとして身につけていた。


彼はほとんど反射でパンを取った。


その時になって、急に分かった。


この家の中で、いま起きていることの配置が。


ヴェイルは、国家の変化がどんな形で現実になっていくかを持ってくる。アヤノは、外の世界――ホウセイのような別の構造の中で、その変化がどう読まれ始めているかを持ってくる。カイラは、そのすべての核心にある“誰のどこが一番痛いのか”を一番乱暴に言い当てる。サレットは、この世界の女の側の古い記憶を持っている。ただし今や、その記憶は前ほど素直には旧い秩序に奉仕していない。そしてリラは、その全部を一つの卓の上へ戻してしまう。パンと、熱と、人の身体と一緒に。国家も、均衡も、神殿も、そこでいったん“家の中で噛み砕ける大きさ”へ戻される。


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