9 強敵との接敵
応接室を出たフォルティを追う。
良かった、本当に良かった。
窓から飛び降りたりしないで、部屋の扉から出てくれた。
「ラグくん、早く行くよ!」
「待って待って…!」
協会を出ようとしていたフォルティに追いつく。
(指名依頼とか言ってたわよね…Sランクの”紅蓮”と一緒に行くならアイツの強さの証明にはならないじゃない…!)
(絶対にアタシがアンタの正体を暴いてやるわ…!ラグール・リビビ!)
「あ。ラグくんにもかけてあげるよ、身体強化。自分で出来ると思うけど、ついでだからさ!」
うおぉぉぉぉ!
助かったぁ!何とか走って付いて行けるかもしれない!
え?自分では出来るわけないだろ。当たり前じゃん。
「王都周辺の道が分からないから先頭を頼むよ」
「あ、そっか。わかった、任せて!」
コレで場所の問題もクリア!
あとは何とか放されなければ…いける!
ドンッ!!という音と共に砂が舞い、フォルティが遠くに見える。
いやごめん放されないの無理かも…
真似して走ってみるが、砂は舞わなかった。
それでもすごいな身体強化!いつもの100倍くらいは速いぞ!!?
フォルティは…何とか視認できる距離にはいる…
(なに、こいつ…魔力の温存でもしてるわけ…?)
ヤバい、問題発生。
身体強化してもスタミナは変わっていない!
なんとか走りながらマジックポーチを漁る。
視線はフォルティを見ていないとはぐれてしまいそうな距離だ…
なんとかポーションを取り出して、すぐに飲む!
うおおぉ!まだいける!
買っててよかった!
空き瓶はしっかりポーチの中へ。
(…?なにをゴソゴソしてるのかしら?戦闘の準備?いいから速く走りなさいよ…!)
まだ着かないのか…!?
もうポーションは30本近く飲んでるぞ!?
おっ!?
フォルティの姿が大きくなってきた!
ようやく着いたか!?
「ラグくん…辺りを見てきたキミなら分かってると思うけど……来るよ…!!」
辺りを見て来たって…?
ちょっと、疲れた…休憩させてほし…
「ぐっ…!!」
右耳に空気が破裂したような音とフォルティの呻き声、そして体全体に風とは思えないほどの突風が襲う。
え!?
(え!?)
何が起きた?
フォルティは…?
彼女は後ろの方におり、剣で怪物の腕を止めていた。
足元は土を抉った跡が付いていることから、あそこまで飛ばされたのだと理解する。
無理無理無理無理!!
攻撃されたのか!?
何も見えなかったぞ…!?
激しい音ともにフォルティの足元の地面が抉れる。
「ぐぅっ…!重っ…!」
(ちょ、ちょっと!何よアレ!速すぎでしょ…!)
『クハハハハッ!我のこの一撃を止めるとは!大したヤツだ!』
腹に響く、重く低い声。
俺からは黒い塊の背中側しか見えない。
黒いマントでも羽織っているのか。
「…ぐっ!」
フォルティの足元がさらに抉れる。
彼女が受け止めている腕だと思っていた物は、視界に収まりきらないほど大きい剣だった。
「こんのぉ…!」
耳をつんざく金属音が響き、フォルティから巨大な剣が遠ざかる。
なんとフォルティは、あの大きさの剣を弾き返したのだ。
剣を受け止めて出来た地面の抉れから地面が裂ける。
「喰らえぇッ!!!」
そして弾き返した勢いのまま回転して胴体を斬りつける。
まるで硬い岩を斬りつけた時のような音が響き、衝突の衝撃で俺の肌がビリビリする。
「かったいぃ!?うおらぁぁっ!」
が、フォルティの剣は振り抜かれることはなく止まってしまう。
『クハハハハ!軽い!軽いぞっ!』
次の瞬間、フォルティが吹き飛んでいた。
(うっそ…!Sランクでしょ…!?)
「フォルティ!!」
フォルティでコレかよ…!
本気で死ぬぞ…?




