4 Sランク冒険者
冒険者協会の中で話しかけてきた美女…
ハーフアップにした金髪に目が留まりがちだが、純白の鎧の下に隠されている体型もきっと素晴らしい。
谷間はしっかりあるが、巨乳って程ではなさそうだ。
これだけの鎧を着込めているんだ。それなりに筋力もあるのだろう。
つまり、引き締まっている可能性が高い。
え?何で急に容姿のレビューをしているかって?
…現実逃避だよ。
「受付嬢に何か用事があったのかな?」
「え?あぁ、素材を受け取りに行こうと思っていて」
「……ほう?素材というと噂のフェンリルか、ヨルムンガンドのかな?」
この人結構知っているな…
というか噂はどこまでの話になっているのか。
噂というものは必ず尾ひれが付くものだ。
フェンリルとヨルムンガンドの同時討伐なんて既に尾ひれが付いていそうなものが今回の真実である。
…いや、断じて真実ではないんだけども!
ここに尾ひれが付くと考えるだけで恐ろしい…
だから伝説の復活とか言われているのか?
「そ、そうですね…よくご存じで…はは」
「なに、街中どころか王都でも噂になっていたからな!」
お、王都だと…!?
やはり王族の耳にも入っているというのは真実だったか…
「……王都?」
「ん?あぁ、すまない。自己紹介がまだだったね」
「ボクは”最強”、フォルティ・クリーガー。王都をメインで活動しているSランク冒険者だよ」
…王都のSランクぅ!?
最強の異名の冒険者と言えば、俺でも聞いたことがあるレベルの大物じゃないか。
ただ最強というのは自称で、この人の異名は確か…
「紅蓮の白騎士…?」
「おや?史上最速のSランク候補者にまでボクのことを知ってもらえているとは!光栄だなぁ!」
「だけど、その名はあまり好きじゃないんだよね」
俺だって史上最速だの伝説の復活だの好きじゃないわ!
いや待て!まだそれは異名じゃない!
そんな恥ずかしい呼び名で呼ばれたくはない!
なるほど…!
こういう感情か!理解したよ!紅蓮の白騎士さん!
「せっかく純白の鎧なのに、返り血で赤く染まっているから紅蓮なんて納得できないよね」
…思っていた理由では無かった。
ごめんなさい。やっぱり共感は出来ません。
「そ、そんなSランク冒険者がなぜこんなところに…?」
「それはもちろん、キミを見るために決まっているだろう!?」
「そしてあわよくば、スカウトしに来たのさ!」
嘘だろ…?
俺を見るためにわざわざ王都から…?
え?スカウト…?
「ボクと一緒に四大魔王を討伐しないかい!?」
「う、うおおぉぉぉぉ!!」
「あの孤高の戦士、紅蓮が仲間をスカウトしているぞ!」
「や、やっぱりアイツはそれほどなのか…!?」
「……は?」
周りの盛り上がりが凄すぎたのと、唐突すぎて理解できなかった…というよりは理解したくなかった誘い文句のせいで、すごく失礼な感じになってしまった。
怒りを買って決闘だとかならなければいいんだけど…
そうなったら普通に死ねる。
「ん?聞こえなかったかな?」
「あ、あぁ、いや、そうじゃなくて…どうして…?」
「どうしてって、フェンリルとヨルムンガンドの同時討伐をショートソードで成し遂げた偉人だよ?」
「仲間に欲しいのは当然じゃないかい?」
確かに。
それが真実であるならば、四大魔王討伐を志す者としては喉から手が出るほど欲しいだろう。
…真実であるならば。
だが、普通は実力を試そうとかしないか?
試されたら試されたで最速でピンチなんだけれども。
「なんだ、騒がしいな。ラグール!Aランク指名依頼だ。王都近辺に出たデーモンナイトキングの討伐だとよ…人数の制限はねぇ。好きに連れて行っても良いぞ」
奥から支部長が出てきて一方的に告げる。
で、なんて?
ナイトキングデーモン?ナイトデーモンキング?
ナニソレ…
聞いたこともないモンスターなんですけど?
でもこれだけは分かる。絶対に化け物だ。
だってさっきまで騒がしかった冒険者たちが、冷や汗をかいて静かになっているんだから。
連れて行かれたくないんだろう。
秘密が露見する危険がある以上、気軽に連れてはいけないから安心してくれていいんだけどね。
「え、いや~、その~、今から装備を整えようかと思ってまして…」
「Aランクの指名依頼だから拒否は出来んぞ?それにショートソードでフェンリルを倒せるやつが装備なんて必要なのか?」
いるだろ!!
流石に!装備は!!いるだろ!!
しかも拒否できないって言った?
なんで?指名依頼受けてもいいですなんて言ってないんだけど?
そういうものって?
ふざけんな!
俺の命のカウントダウンが始まった。
「いや~、流石に装備は欲しいなぁって…ははは」
「そうか?そういえばショートソードは刃こぼれをしていたな。待ってろ。代わりのショートソードを用意してやる」
どっちかというと防具が欲しいんだよ!!
攻撃なんてしても多分倒せねえよ!
それより、一撃でも食らったら死亡の方がマズいだろ!!
「ふふんっ」
紅蓮が何やらチラチラとこちらを見てきている。
「しょ、ショートソードじゃなくて別の武器にしようかなって…」
「なんだ、そうなのか?まあ武器くらい一旦鍛冶屋で購入して向かえばいいだろう」
「詳細は王都の協会で説明するそうだ、頼んだぞ。史上最速」
支部長さえそんな呼び方し始めたら定着するだろうが!やめろ!
あと紅蓮さんはずっとこっちをニコニコして見つめるのやめてもらえない?
「ボク、王都の協会は詳しいよ?」
秘密がバレる可能性が…
しかしソロで突っ込んでも死ぬのは明らかだ…
何とか隠し通せるか…?
どのみち依頼クリアしなければ死か…
「紅蓮さんはいいの?着いてすぐ王都に戻ることになるけど」
「キミと共に戦えるのなら問題ない!あとフォルティでいいよ」
…はぁ。
今までの人生の中で一番最悪な予感の的中かもしれない…
腹をくくるしかないか…
王都に着くまでに、どうやって隠し通すか計画を立てないと…
「……じゃあ、頼めるかな?フォルティ…」
「あぁ、もちろんだよ。ラグくん!」
「うおぉぉぉぉぉ!!」
「これは最強のパーティ結成の瞬間なんじゃねぇか!?」
「歴史が動くぞ…!」
あぁ、本当に胃が痛い…
誰か助けてくれ…




