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戦えない俺がなぜか最強扱いされてるんだが、バレたら死ぬらしい  作者: Vasy


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11 フィアスコ・ドゥビウス

『ふっ、いいだろう、付き合ってやる』


ナイトキングデーモンは腰を落とし、構えを取ったと思ったらフォルティ目掛けて剣を投げた。

剣全体をドス黒い靄が包んでいて、当たるとヤバそうなオーラを出している。


だが速度はそんなに早くなく、俺が目で追えているレベルなのでフォルティなら避けることは余裕だろう。


「…っ!」


金属が歪むような音が鳴る。

フォルティは避けずに剣で受け止めていた。

…なんでだ?


剣で受けたことにより、彼女の武器にまで黒い靄が侵食しようと広がっていっている。


炎撃(フレイムショット)!!」


赤髪ツインテがフォルティの武器に纏わりつく靄だけを撃ち抜いた。

すごいコントロールだ…


『さっきまでの速度はどうしたッ!!』


かなり遠く、左奥の岩が急に爆発した。

さっきまでフォルティが剣を受けていた場所に彼女の姿はなく、代わりに、片足を蹴り出した体勢で、空中から降ってくる巨大な剣を受け取るナイトキングデーモンの姿があった。


違う、あの岩は爆発したんじゃない…

フォルティが吹き飛んでいったんだ…!


「紅蓮!!?」


『お前も、やはり中々の練度だなッ』


「……くっ!」


ナイトキングデーモンが受け取った剣をそのまま薙ぎ払ったので赤髪ツインテは慌てて後報へ跳んでいた。


俺はポーションをマジックポーチから取り出し、いつでも飲めるように服のいたるばしょへ忍ばせている。

もちろん、いつでも走れるようにナイトキングデーモンから目を離してはいない。


「舐めないでよね…!」


赤髪ツインテが後方へ跳びながら両手を伸ばし叫ぶ。

刹那、ナイトキングデーモンの両足を氷が覆っていた。


『んぁ…?』


それだけではない。

赤髪ツインテの頭上に半円を描くように、巨大なつららが先端をナイトキングデーモンの方を向き生成されていく。


左のつららから順に、ナイトキングデーモンへと撃ち出されていったかと思うとナイトキングデーモンが爆散していった。


「紅蓮!!」


『フハハハハ!いいぞ!だが氷の質量が軽い!』


無数の氷が砕け散る音と共に、銀色の筋と青白く輝く欠片がナイトキングデーモンの周りを浮遊している。


さっき爆発した岩が再度爆発した。

赤い固まりが一気にナイトキングデーモンへと飛んでいく。


「うおらぁぁあぁああ!!」


真紅の鎧を身に纏ったフォルティが飛翔してきた勢いを、体を回転させることで振りぬいた剣に乗せる。


『ぐぉっ!!』


鎧が砕ける音と衝撃波が飛んでくる。

腰を落とし、衝撃に耐えていると、青白いくキラキラと輝いていた場所から黒くて巨大なものが俺を目掛けて跳んできた。

やっべ…!


急いで左へ走るが、俺のすぐ後ろに着弾する。

地面が爆ぜ、岩の飛礫が俺の足へ突き刺さる。


「…ぐぁっ!!」


そのまま地面を数回転がり止まる。

ナイトキングデーモンとの距離は出来た…


「ぐっ…!!」


俺はすぐに足に突き刺さった岩を引き抜いてポーションを飲み、さらに距離を取るため走る。

走り続けていないと何も対応ができない。


「キミは…赤髪のツインテール……そうか、”魔女”か。足止め助かったよ」


「その呼び方はヤメテ!おばあちゃんみたいで気に入らないのよ!」


「アタシはフィアスコ・ドゥビウス!フィアって呼んでいいわよ」


「それより、何でさっきの黒い靄、避けなかったのよ」


「……話は後みたいだよ、フィア」


ガラガラと岩が崩れる音と共にナイトキングデーモンが立ち上がる。


『今のは悪くなかったぞ…クククク…!』


深紅に染まった鎧を着たフォルティは驚くくらい喜色満面な笑みを浮かべており、どこから出したのか、杖を構えているフィアは険しい顔で脂汗を浮かべている。


「もう一回、足止めできるかい?」


「……やってみるけど多分数秒が限界よ?」


「充分だよ…!」


『さて、そろそろディナーは終わりにしようか…!』


消えた…!?

あの巨体を見失うなんてあり得ない。

俺はずっと目を逸らしてはいない。どこに…


『まずはお前からだッ!』


消えたと思ったナイトキングデーモンがフィアスコの目の前に出現し、巨大な腕で捕らえる。


「あ゛ぁぁっ!」


「フィア!!」


『もう少し大人しくしてから食ってやろう…!』


もう片方の腕も使い、フィアスコを握りつぶすように力を込めていく。

ゴキゴキと骨が砕ける音が響く。


「があぁあぁあぁぁ!!」


「くそッ!離せ!」


フォルティが腕を斬り付けるが、硬化させているのか全く刃が通らずに、甲高い音を奏でるだけだった。


マズいマズい…!

あの子が死んでしまう!


だが俺に何ができる!?

剣も捨てたし、持っていたところでフォルティで無理なら絶対に無理だ。

ポーションか!?今かけても苦痛が増えるだけじゃないか!?


「ラグくん…!すまない!ピンチだ、助力してくれないか!!」


『クハハ…!あの小僧に何かできるとは思えんがなぁ!』


そうだよ…!

俺だって助けたいけど、何も出来ねえ…!!


……!?

あれは…!?


角度的にフォルティからは見えていないのか…!

フィアスコが握りしめられている腕の中で、僅かに魔力を練っているのが見える。


フォルティとフィアスコの力に掛けるしかないけど…!

ここなら届くか…!?


ただ投げるだけだって言うのに体中の震えが止まらない…!

膝は笑っているし腕も思うように力が入らない。


それでも!女の子を目の前で死なせるわけには!いかない!!

急いでポーションを握りしめ、振りかぶる。

頼むとどいてくれ…!


ポーションをフィアスコ目掛けて投げた直後、俺の出せる限り最大の大声で叫ぶ。


「フォルティ!!指の隙間だァ!!」


直後、破裂音と共に跳躍するフォルティが見えた。

ポーションはぎりぎりでナイトキングデーモンの指先に届く。


『ぐっ…!?』


ナイトキングデーモンの指が僅かに開き、フィアスコにも少量の液体が届く。

彼女が練っていた魔力も呼応するかのように少し大きくなり、僅かに開いた指の隙間をほんの少し拡張する。


「斬れろおぉおおぉぉ!!」


フォルティが全力で振りぬいた剣が指の付け根を捉える。


「こんのおぉおぉぉッ!!」


さらにフォルティがその場で身をねじり、力をかけていく。

まるで何かを磨り潰した時のような音が響き、ナイトキングデーモンの指とフィアスコが空に投げ出される。


『この…ッ!小僧ォォォ!!』


指を切り飛ばした方ではない腕でフォルティが地面へ叩き落とされる。

凄まじい衝突音と瓦礫が飛ぶ。


「フォルティ!!」


目の前に体の芯が通っていないような体勢のフィアスコが落下してきた。


……!!

ありったけのポーションを取り出して半ば無理やり飲ませる。

そして体中にポーションを掛けていく。


「無事か…!?」


「……ガハッ、…ゲホッ…」


良かった、息はあるな…


『まさかそんな物を隠し持っていたとはなぁ…!小僧!』


マズい…!

フィアスコはまだ意識が朦朧としている。

華奢な女の子とはいえ、抱えて攻撃を避けられる自信はない…!


『その魔導士ごと屠ってやるわッ!』


ナイトキングデーモンの後ろで岩を弾き飛んだ。

鎧が黒味がかった赤色にまで変色したフォルティが、今までとは違う構えをしている。


「あの一瞬で……ラグくん、やっぱりキミは――」


フォルティの姿勢が徐々に低くなっていく。


「さっきの答えね…避けなかったんじゃない…避けられなかったんだ…」


『何を…』


フォルティのいた地面が抉れ、爆発音がしたときにはフォルティはナイトキングデーモンの懐にいた。

そのまま振りぬいた剣がナイトキングデーモンに接触した瞬間、赤い閃光が視界を覆う。


「ぶっ飛べッ!!深紅解放(パージ)ィッ!!!」


赤い光が収まった直後、ナイトキングデーモンは視界から消え、赤い筋が視界の外まで伸びている。

その先を目で追うと、体中のいたるところが爆発しながら吹き飛んでいる姿が見えた。


そして地面へ衝突した瞬間、一番大きな爆発が起きる。

フォルティの方を確認すると、鎧は純白に戻り、片膝をついている。


「ガハッ…さっきは、ポーション…ありがと…」


…!

フィアスコ…!


「立ち上がって大丈夫なのか!?」


「えぇ、アンタのポーションのおかげで何とか…」


ナイトキングデーモンは、体が半分ほど消し飛んでいた。

断裂した場所から紫色の血管の塊のようなものが膨らんでいる。


『クク…!ハハハハハ…!初めてだぞ…!ここまで負傷したのは!』


「んな…!まさか…!」


「…もうアタシ、ほとんど詠唱出来ないわよ…?」


「再生…しているのか…!」


奴の体は膨らんだ場所から徐々に、元の形へと戻っていっていた。

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