第130話『砂漠越えの商談』
香りの帝王に認められたレン。
次の目標は、大陸横断ピザ行商のための隊商参加。
だが砂漠を越えるには、莫大な資金と信頼が必要だった――。
アジャルカ市場の朝は喧騒と香りで始まる。
香辛料、干し肉、布地、宝石……。商人たちが声を張り上げ、駆け引きがあちこちで行われていた。
レンは香りの帝王の推薦状を携え、商人ギルドの大広間を訪れた。
そこには砂漠越えの隊商をまとめる有力商人たちが集まっていた。
中央の席に座るのは、白いターバンの男――ギルド長ハディール。
「帝王の紹介か。だが推薦状だけでは足りん」
低く響く声に、レンは少し身を固くする。
「砂漠を越える荷は、命より重い。お前が本当に価値ある商品を持っていると証明しろ」
その瞬間、レンは持参した小型の石窯を開き、試作品のピザを取り出した。
今回は砂漠用の保存食ピザ――オリーブオイルで生地をコーティングし、干し肉とドライトマト、香辛料で長期保存を可能にしたものだ。
焼きたての香りが広間に漂い、商人たちの鼻がぴくりと動く。
ハディールがひと口かじる。
硬めの食感の後、じわりと旨味が広がる。
「……水なしでも食える。しかも腹持ちがいい」
周囲から感嘆の声が漏れた。
しかし一人の若い商人が口を挟む。
「味は悪くないが、砂漠越えは盗賊や魔獣も出る。荷を守る手立てはあるのか?」
レンは微笑み、横のルッカを指差した。
「護衛はうちの自慢の看板娘……剣の腕も一流です」
ルッカは無言で剣を抜き、目にも止まらぬ速さで空を切る。
その風圧に、近くの商人のターバンが少しずれた。
笑いが広間に広がり、場の空気が和らぐ。
「よかろう」
ハディールが立ち上がる。
「レン・タカシ、お前を隊商に加える。ただし――売上の一割は護衛費として払ってもらう」
「もちろんです!」
こうしてレンは正式に砂漠越えの隊商に参加が決まり、次なる目的地――オアシス都市バルザックを目指すこととなった。
商人たちの信頼を得たレンだが、砂漠には隊商泣かせの“幻の渦”が待ち受けていた。
果たして無事にバルザックへ辿り着けるのか――。




