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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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124/270

第124話『黄金の果実祭』

魔導船での長い航海を経て、レンたちはようやく海の彼方の“ソレイユ諸島”へ到着する。

そこは太陽の恵みを受けた、果実と歌と踊りの島だった。

 港に降り立った瞬間、レンは甘く濃密な香りに包まれた。

 潮風に混ざるのは、熟れた果実が放つ芳香。

 波止場では花飾りをつけた島民たちが太鼓を打ち鳴らし、踊りながら船を迎えている。


「すげぇ……祭りが始まってるみたいだ」

 カイルが目を丸くする。

 船員が笑って答えた。

「いや、これが日常だ。祭りの日はもっとすごいぞ」


 レンたちの目的は「黄金の果実祭」。

 年に一度、島で最も甘い“サンレモパイン”の収穫を祝う祭典だ。

 招待状を持っていたレンは、港長から手厚く歓迎を受け、会場となる中央広場へ案内された。


 広場では、巨大な山車に果実が積み上げられている。

 丸ごと黄金色のパイン、星型に切られたマンゴー、赤く透き通るようなドラゴンフルーツ。

 露店からは果汁の滴る串焼き果物や、果実酒の香りが漂う。


 レンは思わずつぶやく。

「……ここ、甘党の天国だな」

「お前のためにある島だろ」

 カイルが笑う。


 祭りの主催者である長老“マフナ”がレンを呼び止めた。

「海の彼方から来たピザ職人よ。われらはお前の甘いピザを待ち望んでおった」

「期待に応えますよ」

 レンは即答するが、長老はひとつ条件を出した。

「ただし――島の黄金果実を使い、我らが“舌の試練”を通らねばならぬ」


 その試練とは、三種の果実を使い、審査員三名それぞれの好みに合わせて甘い料理を作ること。

 審査員は、蜂蜜を愛する村の女王、香辛料好きの青年漁師、そして――辛党の老婆。

「……最後の人、甘いピザなのに辛党?」

「だからこそ腕の見せ所だ」

 カイルが肩を叩く。


 レンは市場へ向かい、果実を吟味した。

 パインは焼くと香りが立ち、マンゴーはクリームとの相性抜群。

 だが問題は辛党向け。

 そこで見つけたのは「フレイムパパイヤ」――甘さの奥にピリッとした刺激を持つ珍果だった。


 試練当日、レンは三つの窯を同時に使い、異なるピザを焼き上げた。

 パインと蜂蜜の“太陽ピザ”、マンゴーとココナッツクリームの“月光ピザ”、

 そしてフレイムパパイヤと少量のチーズ、黒胡椒を合わせた“火のピザ”。


 審査員たちは一口ごとに表情を変える。

 女王は甘美に目を細め、青年は香り高い辛甘に笑い、老婆は鼻をすすりながらも完食した。


 結果――合格。

 レンは黄金果実祭の“名誉職人”に任命され、島民たちと共に夜通し踊り明かした。

 海辺の夜空に花火が咲き、甘い香りと波音が混ざり合う。

「……この味、また作りに来たいな」

「次は辛さ三倍で頼む」

 二人の笑い声が、南国の夜に溶けていった。

異国の果実と文化が、またレンのレシピ帳を豊かにした。

次なる舞台は、さらに西――“潮風の交易都市”。

そこではピザよりも硬い交渉が待ち受ける。

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