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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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121/263

第121話『瘴気酒と平和の杯』

カイルの手によって差し出された、魔王領の象徴“瘴気酒”。

それは戦の前に必ず飲まれる、不穏な祝杯だった。

 レンは机の上に置かれた赤黒い瓶を見つめた。

 液体の中で、まるで生き物のように泡がゆらめき、かすかに甘い香りと鉄の匂いが混じる。


「……これを料理に使ったら?」

 レンの口から出た言葉に、カイルと赤い瞳の男が同時に眉をひそめる。

「人間がこれを飲めば、命を落とすこともあるんだぞ」

「だから、加熱して、香りだけを生かすんだ」

 レンは真剣な目で答えた。


 彼の頭の中には、すでにレシピが組み上がっていた。

 ――瘴気酒を煮詰め、甘味を引き出し、黒燻香草と合わせたソース。

 それを肉厚の魔獣ステーキに絡め、ピザの具材として焼き上げる。

 味は濃厚、だが毒性は消す。

 戦の象徴を、平和の食卓に変えるのだ。


 赤い瞳の男はレンを試すように見ていたが、やがて薄く笑った。

「面白い……人間の料理人が、我らの血の酒を甘味に変えるか」

 その声には、わずかな興味と期待が混ざっていた。


 カイルは肩をすくめる。

「お前、昔からそうだったな……危ない橋を渡るほど、目が輝く」

「橋じゃないよ、これはピザ窯への道だ」

 レンは冗談めかしながらも、手はすでに瓶を持ち上げていた。


 取引は成立した。

 だが条件が一つ――このピザは、次の満月の夜、魔王領とセリュードの代表者たちの前で振る舞うこと。

 それは一歩間違えれば戦火を広げ、一歩成功すれば和平の扉を開く舞台だった。

“瘴気酒”を使ったピザ――それは戦と和平、どちらにも転ぶ危険な賭け。

レンは、料理人としての腕と覚悟を試されることになる。

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