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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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118/261

第118話『赤砂の峠を越えて』

アルカンシェルで“橋の守護者”となったレンたちは、大陸中央へ向けて出発。

だが次なる道は、昼は灼熱、夜は氷のように冷える危険な地――赤砂の峠だった。

 馬車の車輪が、赤茶けた砂と小石を巻き上げながら進む。

 頭上の太陽は容赦なく照りつけ、視界の彼方まで岩と砂が続く。

 リリアは額の汗をぬぐいながら、呟いた。

「これ……オーブンの前より暑いよ……」

「ピザ焼くより暑いのは反則だな」

 レンは笑いながらも、水袋を大事そうに揺らした。


 途中、峠の入り口で旅人たちが野営をしていた。

 理由を尋ねると、彼らは口を揃えて言った。

「この先には“砂鬼”が出る。荷を奪い、時に命も……」


 砂鬼――砂の中に潜み、獲物を待つ盗賊集団。

 夜になると足跡も風で消え、追跡は不可能とされる。


「つまり……次は人間相手のバトルってわけか」

 レンは目を細めた。


 日が傾き、峠道の岩陰で野営を始めたその時。

 砂のざわめきと共に、フードをかぶった数人の影が現れた。


「おやおや、美味そうな匂いだ。荷物と馬車、それにそのピザも置いていきな」

 先頭の男は、刃こぼれした曲刀を構える。


 レンは静かにピザ生地を広げた。

 驚く盗賊たちを前に、炉を起こし始める。

「お前ら、腹減ってるだろ。俺のピザ食ってからにしろ」

「……は?」

 戸惑う盗賊たちの鼻を、香ばしい匂いがくすぐる。


 生地に赤砂峠で採れる香草“火の葉”を混ぜ、乾燥肉と辛味油で仕上げる。

 一口食べれば、舌が燃えるように辛く、次の瞬間すっきりとした香りが抜けていく。


「……っ! これ、旨ぇ!」

「なんだこの辛さと爽やかさのバランス!」

 盗賊たちは夢中で食べ、やがて刀を置いた。


 頭領は、ぽつりと言った。

「俺たちも……昔は旅商人だった。けど、この峠で全部を失って……」

 レンは何も言わず、追加のピザを渡した。

「また商人に戻ればいい。腹が満たされりゃ、道も見えるさ」


 その夜、砂鬼たちは馬車を護衛して峠を越えることを申し出た。

こうしてレンたちは無事に赤砂の峠を越えた。

次の目的地は、大陸中央の交易都市――そこでは、とうとう“魔王領”の影が見え始める。

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