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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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117/260

第117話『大橋都市アルカンシェル』

港町グランデルで“潮のピザ”を完成させたレンたちは、さらに南東へ進む。

やがて彼らの前に現れたのは、海峡を跨ぐ巨大なアーチ橋――

そこに築かれた都市アルカンシェルは、海と陸、東と西の文化が交わる交易の要衝だった。

 遠くからでも見える虹色の帆布。

 橋の両側には市場や家屋がびっしりと並び、人と品物が絶え間なく行き交っている。

 橋脚の下は轟く潮流で、巨大な船ですら流されかねない。


「ここがアルカンシェル……まるで空に浮かぶ街みたいだ」

 リリアが感嘆の声を漏らす。


 街へ入ると、空気には海の香りと香辛料の匂いが混じっていた。

 東方の香辛料、西方のチーズ、南方の柑橘、北方の燻製肉――

 あらゆる食材が並び、値段をめぐる商人たちの駆け引きが響く。


「ここなら、東西融合のピザが作れるかもな」

 レンは市場の喧騒の中、真剣に素材を選び始めた。


 だが、橋の中央広場で開かれる**“味の競演祭”**の存在を知り、計画が急展開する。

 祭りでは、各地から来た料理人が一皿で都市の舌を唸らせ、勝者は“橋の守護者”の称号と永続的な営業権を得られるという。


「面白そうじゃない。挑戦しよう!」

 リリアが目を輝かせる。

「ただし、この街の王者は手強いぞ」

 市場の老人が教えてくれたのは、現王者“スパイス公”ガーヴァンの名だった。


 ガーヴァンは、香辛料を自在に操る中年料理人。

 彼の“七彩香ピザ”は、食べるごとに味が変化し、最後には甘美な香りが余韻を残すという。


 レンはあえて真っ向勝負を選んだ。

「香辛料対決だ。俺は“海と陸の融合ピザ”でいく」


 選んだ素材は、港町で得た蒼潮塩と雷貝、東方のシナモン、西方のゴルゴンチーズ、南方の柑橘“ルミナオレンジ”。

 さらに橋脚近くの漁師から手に入れた“流れ鮪”を薄く切り、香辛料と柑橘でマリネする。


 焼き上がったピザは、海の塩気と柑橘の爽やかさが香辛料の香りと重なり、ひと口ごとに表情を変えた。


 審査の瞬間。

 審査員たちは一口目で潮風を感じ、二口目で異国の市場を旅し、三口目で橋の上の賑わいを思い浮かべた。


 結果――レンのピザは僅差でガーヴァンを破り、“橋の守護者”の称号を獲得。

 ガーヴァンは悔しそうに笑いながら言った。

「お前、香辛料の化け物だな……また勝負しよう」

アルカンシェルでの勝利により、レンたちは橋上の一等地で営業できる権利を手にした。

次なる目的地は、大陸の中央へと続く内陸の街――

だが、その道中には、魔物と盗賊が跋扈する“赤砂の峠”が待っている。

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