ギルドとの交渉(前編)
昨日のダンジョン探索の報告と、ドロップカードの引き取りのため、再びディカーナの街の冒険者ギルドを訪れた。
「あら、ジンさん! お怪我は大丈夫ですか!? 四層で『王の巡幸』が発生したと先ほど連絡が入りまして、すごく心配していたんですよ!」
ギルド受付のフラウは、カウンターから身を乗り出し、心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「ご心配をおかけしました、フラウさん。ダンジョンボスと遭遇したのですが、なんとか脇腹を掠める程度で済んで、無事に逃げ帰れました」
「本当によかったです……! ああいう異常現象に遭遇したら、迷わず逃げるのが一番ですからね」
安堵の息をつくフラウに対し、俺は爽やかな笑みを浮かべながら、本題へと切り出すための「仕掛け」を口にした。
「それでですね、フラウさん。怪我の療養でしばらくダンジョンに入れないので、ちょっとした暇つぶしの『小さな商売』を始めようかと思いまして」
「商売? ジンさんがですか?」
フラウが不思議そうに小首をかしげる。
「ええ。この街の子供たち向けに、カードを集めて競い合う『カード収集遊び』を流行らせようかと考えているんです。ほら、貴族の子供と違って、平民の子供たちには安価なおもちゃが少ないでしょう? カードを集めて交換し合う遊びなら、手軽で喜ばれるかと思いまして」
「まあ! ジンさんって、意外と子供思いなんですね!」
フラウの表情がパッと華やぐ。
もし、ここで「強いカードを集めて儲けたい」などと本音を言えば、不審に思われる可能性がある。大量のカードを集めるためには、大義名分を提示するのが鉄則だ。
「そこでご相談なのですが、ギルドで保管している冒険者から回収した『処分待ちのドロップカード』を、まとめて買い取らせていただきたいんです。ギルドはカードの処分に費用がかかると聞いていたので、少しでもギルドの雑収入になればお互いに得かと思いまして」
「処分用のカードですか? うーん……確かに毎日のように集まってくるので、地下倉庫を圧迫しているんですよね…でも、本当にあんなカードにお金を払っていただけるんですか?」
「もちろんです。カード100枚毎に銅貨1枚の買い取りでいかがでしょう?」
フラウの目が丸くなった。
「少々お待ちください! ギルド長に確認してきますね!」
フラウはバタバタと奥の執務室へと走っていった。
ギルドにとって、ドロップカードの廃棄には、手間とお金がかかっている。
それを微々たる額とはいえ、定期的に買い取って現金化してくれるというのだから、願ったり叶ったりのはずだ。
数分後、戻ってきた彼女の顔には満面の笑みが浮かんでいた。
「ギルド長から許可が出ました!『処分手間と焼却費が浮くなら、好きなだけ持っていけ』とのことです!」
「ありがとうございます、フラウさん」
俺は胸の中で小さくガッツポーズをした。
こうして俺は、冒険者ギルドが抱える大量の「カード在庫」を独占的に買い取る権利を、破格のコストで手に入れたのだ。
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