冒険者登録
この世界に転生してから一ヶ月後、十五歳になった俺は、村から一番近いダンジョン――通称「灰色の巣穴」を探索するため、冒険者ギルドがある隣町「ディカーナ」へと向かった。
「ディカーナ」は、自分がいた村とは違い、中世のような石造りの街並みで、たくさんの人がいて活気があり、現実の世界では見たことがない野菜や果物を売っている。まさに異世界という雰囲気だった。
そんな街の中を歩いていると、冒険者ギルドと書かれた建物を見つけた。重厚な木製扉を押し開けると、建物の中は、酒と汗と鉄の匂いが混ざり合った独特の空気が漂っていた。
夕刻のギルド内には、ダンジョン攻略を終えた荒くれものの冒険者たちが集まり、酒杯を交わしながら今日の成果を誇らしげに語り合っている。
「おい見てくれよ! 今日はダンジョンの四層で『鋼鉄の短剣』が出たぜ! これを換金すれば大酒が飲めるぜ!」
「けっ、うらやましいねぇ。俺なんかカードしか出てこねぇ。ウサギにスライム、あと変な甲羅のカニだ。こんなゴミだと、酒の一杯にもなりやしねぇ!」
そう言って、一人の男が胸ポケットからカードを取り出し、酒場のテーブルの上に投げ捨てた。周囲の冒険者たちも「まったくだ」「外れドロップの呪いだな」と笑い合っている。
(おいおいカードを雑に扱うなよ……カードの状態が悪いと価値が下がるだろ!)
元カードショップの店長として文句を言いそうになったが、「冒険者登録の前に揉め事を起こすわけにはいかない。」と心を静め、ギルドのカウンターへと向かった。
「あら、冒険者ギルドは初めての方ですか?」
そう言って声をかけてくれたのは、くりっとした大きな目が特徴的な、栗色の髪をした女性――受付のフラウだった。
「冒険者登録をして、村の近くのダンジョンに行きたいんだけど、どうしたらいい?」
「冒険者は、十五歳以上なら誰でも登録できるわ。さっそく冒険者として登録するから、あなたのスキルを教えて。」
「スキル?」
「あなたのステータスにスキルが書いてない?いくつかスキルを持っている人もいるんだけど、その場合は自分の得意なスキルや伸ばしたいスキルを登録するわ。なぜか登録したスキルが成長するのよね。」
「ステータス?」
「本当に何も知らないのね…その状態でダンジョンに行こうとしてたのが不思議だわ…」
フラウは、頭を抱えながら、この世界で冒険者に生きていくために必要な知識を一通り教えてくれた。
ステータスは、心の中で「ステータス確認」とつぶやくと、目の前に画面のようなものが現れ、自分の能力を数値化して表示してくれる。
このステータスは、自分にしか見えないため、自分から内容を話さない限り、相手に知られることはない。
スキルは、この世界に生きる全ての生き物が持っている固有の能力のことで、それぞれ違う。
自分がどんなスキルを持っているかは、ステータスに表示されるので、それで確認ができる。
また、自身の生き方や冒険者としてのレベルが上がることで、スキルは増えたり、変化していくものらしい。
「スキルに『カードマスター』って書いてあるけど、どんなスキルか知ってる?」
「カードマスター?初めて聞いたわ。似た名前のスキルなら、アイテムマスターとか合成マイスターは聞いたことがあるけど…それじゃあ、『カードマスター』で登録しておくわ。」
「フラウも知らないスキルか。前世のトレーディングカードゲーム『ウィザーズ』をプレイしていた時に呼ばれていた通り名『カードマスター』に関係ありそうなスキル名だが、この世界でカードゲームに強くなるスキルだったら、今のところ役に立たないな…」
そんなことを考えていると、フラウが言い忘れていたことを思い出して話しかけてきた。
「そうそう、いきなりダンジョンに行くのは止めないけど、いきなり深い階層まで行かないこと! あと、怪我した時のために、回復用のポーションは持って行ってね。」
多くの冒険者を見てきたフラウのアドバイスだ。このアドバイスを守っておかないと、いきなり「異世界終了」ってことになるかもな……
「ありがとう、参考にするよ!」
そう言って、俺は冒険者ギルドを後にした。
「無事に冒険者として登録も終わったことだし、準備を整えて、さっそくダンジョンに向かいますか!」
ここから冒険者ジンの異世界攻略が始まるのであった。
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