サクリファイスバトル(中編)
カードの対戦部屋の窓が閉じられ、執事が中央の卓に立った。
俺とデュラムは互いのデッキを確認し、切り直す。同名のカードは2枚まで。20枚から5枚を引き、3枚をライフカードとして伏せた。
残る山札は12枚。長引けば、引けなくなることさえ敗因になる。
先攻はデュラムだった。
最初に出したのは『鉄の騎士』。攻撃0、防御2。
「急ぐ必要はない。守りがあれば、強い札は後から来る」
俺は1枚引き、アルジェンタを裏向きに置いた。
次のデュラムの番。騎士を条件に『重装歩兵ガンダー』が出る。攻撃3、防御2。レベル1の守りを残したまま、殴れる兵が立った。
俺は『赤ホーンラビット』を出した。攻撃2、防御0。
デュラムは次の1枚を引くと、ガンダーを指した。
「そのウサギを攻撃する」
「対象は、ラビットですね」
「ああ」
俺は伏せカードに手をかけた。
「なら、今です。レベル1がまだ場にいる。アルジェンタを表にして召喚」
銀色の幻影が卓に降りた。
ガンダーの攻撃は止まらない。ラビットが砕け、俺はそのカードを抜き取って相手側へ置いた。
最初の戦利品を得たのは、デュラムだった。
「助けないのかね」
「間に割って入れるわけではありませんから」
言いながら、俺は掌を閉じた。
ルールを知っていても、自分の札を渡す感覚には慣れていない。
次の番、アルジェンタでガンダーを倒した。攻撃3は防御2を越える。
執事がカードを俺へ渡す。デュラムは手札を見つめたあと、アクションでもう1枚引いた。
俺は、その一手を逃さず鉄の騎士も倒した。
相手の場にいる壁はなくなった。
デュラムは次の番、1枚を伏せた。
俺は銀狼を進める前に、その裏向きのカードを見た。正体は分からない。だが、向こうの場には下位モンスターがいない。上位札なら、今は表にできないはずだ。
「アルジェンタで、直接攻撃」
伏せ札は動かなかった。
ライフの1枚が彼の手札に加わり、残りのライフカードは2枚になった。
デュラムは山札を1枚引き、今度はモンスターを置いた。
レベル1、『旗持ちの従卒』。攻撃0、防御2。
騎士と同じ守備型。アルジェンタなら倒せるが、それだけで、もう一手使うことになる。
俺は自分の番に山札を1枚引いた。
『双極の戦装』。
発動した番はすべてを防御力に、次の自分の番はすべてを攻撃力に振り分ける魔法カード。魔法の効果が切れると、元に戻る。
今のアルジェンタに必要な札だった。防御5まで引き上げられれば、今より強い攻撃にも耐えられる。ただし、その次には、守りのない時間が来る。
俺はカードを裏向きに置いた。
「一枚伏せて、終了です」
デュラムの指が、すぐに伏せカードへ伸びた。
「では、そのアクションが終わったところで」
嫌な予感がした。
相手のライフは2。俺は3。
俺の場にはレベル2がいて、向こうには今出したばかりの従卒がいる。
デュラムは、従卒のカードを持ち上げた。
「この一体を、生贄にする」
裏向きの札が返される。
『暴君ヴォーロス』。
従卒の小さな旗が消え、その跡に、卓を覆うほどの黒い影が落ちた。




