↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
10/14

異世界カードバトル(後編)

【これまでのあらすじ】

 冒険者の訓練場にて、新人教育に頭を抱える教官に対し、カードゲームが『戦術トレーニング』になることを証明するため、カードバトルを提案したジン。


 教官は『オーク戦士』で攻め立てるが、ジンはカードを1枚伏せる『ブラフ(ブラフ)の伏せ召喚』を駆使。

 攻撃を誘い出し、防御特化の『ロックスライム』で返り討ちにする戦術を見せつける。


 しかし、教官もさるもの、ジンの伏せ戦略を応用し、レベル1『ゴブリン』を潜伏させ、レベル2のレアカード『サイクロプス』を召喚。

 固有スキルでゴブリンの威力を吸収し、攻撃力【4】という高火力のモンスターを完成させる。


 相手の切り札であるサイクロプスの圧倒的なパワーの前に、絶体絶命に見えるジン。

 だが、彼の場には、密かに伏せられた「1枚のカード」が残されていた――

――厳しい状況のようだが、俺の胸の奥で、元チャンピオンとしての冷徹な計算が、狂いなく弾き出されていた。


 (……かかったな。相手が『伏せカードのレベル1』を表にしてレベル2を重ねてくるのは、折り込み済みだ)


 俺が前の番、無防備な相手に攻撃しなかったのは、相手が置いていた伏せカードを警戒したからではない。


 (相手に「強いカードを出せる!」と思わせておいて、俺の場に出ている「伏せカード」への警戒をなくすための言わば【撒き餌】だ)


 「……教官。カードゲームにおいて、圧倒的な強力なカードが出現した時、どう対処するか分かりますか?」


 「あぁ!? 負け惜しみを言っていられるのも今のうちだぞ!」


 「いいえ、負け惜しみではありません。――力には『仕掛け』で返すんです。伏せていたカードを表にします、魔法カード『強者の傲慢』発動!」


 俺が伏せカードを開くと、サイクロプスの足元に魔法陣が現れ、サイクロプスは光に包まれた。


「な、なにぃ!?」


 「『強者の傲慢』は、攻撃力3以上のモンスターが場にいる時、そのモンスターの防御力を1ターンの間『ゼロ』にする効果があります」


 「防御力が……ゼロだと!? 馬鹿な、ゴブリンを吸収して攻撃力4になったところだぞ!?」


 「それを待っていたんです!ゴブリンの攻撃力を吸収しなければ、サイクロプスの攻撃力は2、魔法カードは使えなかった」


 「しかし、『双月の銀狼・アルジェンタ』の防御力は3だから、必ず攻撃力4のカードを用意してくるはず。そう考えて、先に魔法カードを伏せていたんです」


 「…さて、教官の切り札、サイクロプスの防御力は0(ゼロ)、俺の場には攻撃力2の『双月の銀狼・アルジェンタ』がいる」


 俺はアルジェンタのカードを静かに指で叩いた。


 「俺のターン、ドロー。――アルジェンタで防御力0になったサイクロプスへ攻撃」


 『グルオオオンッ!!』


 銀狼が鋭い牙で跳びかかり、弱体化したサイクロプスの首筋を噛み千切った。


 一ツ目の巨人は断末魔の叫びを上げ、ガラスのように脆く砕け散った。


 「ば……馬鹿な……!? 俺のサイクロプスが……一発で消えた……!?」


 教官の男はその場に崩れ落ちた。


 静まり返っていたギャラリーから、耳を塞ぎたくなるほどの歓声が沸き起こった!


 「おいおいおい見たかよ!? 攻撃力4のサイクロプスに罠を仕掛けて、一撃で粉砕しやがった!!」


 「このゲーム、攻撃力(パワー)て押し切ろうとしても勝てねぇ……!」


 「――これが『カードバトル』です」


 俺はカードを指で挟み、呆然とする教官を見下ろした。


 「どんなに強いモンスターでも、魔法の組み合わせ、そして出すタイミング次第で容易に倒される。……場の状況を見ながら、相手の行動を読み合う訓練をすれば、実戦でも冷静な戦術判断ができるようになります」


 教官の男は力なく笑うと、深々と溜息をついた。


 「……参った。サイクロプス以上のカードはない…俺の負けだ」


 男はポケットから銀貨1枚を取り出すと、俺の手のひらに力強く握らせた。


 「約束の銀貨1枚だ。……ジンと言ったな。そのカードセットを俺に売ってくれ。新人の教育用に、あと何セットか欲しい。店はどこだ?」


 「毎度あり。路地裏の『トレカ・スタジオ』でお待ちしています。戦術指導もしますよ」


 この日を境に、冒険者たちの間で「教官の厳しい訓練を受けるより、カードゲームをした方が役立つ」という噂が広がり始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。