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【完結】死にたかった最強魔女は、300年後の世界で愛され魔女となっています  作者: かんあずき


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83 私が好きなのはあなた

「しばらく、絶対安静!いいね」


ギルド長指定のものを回収したら、もう離さないとばかりにレグから抱き上げられ、シャルバンポール城のからギルド長の家まで、再び空飛ぶ絨毯に乗ることになり……



「いやああああああああ」



私はお約束のレグスタインにかじりつく状態の抱っこで運ばれて、半ば気を失いながら、絨毯の上で暴れる。


「何?この子魔女なんでしょ?なんでこんなに乗り物に弱いの?」


ユリアがドン引きして、キリフに聞いている。



「まあまあ、デボラが通常運転で安心したよ。ところで、ユリアの杖は、なんか進化してないか?」


そんな声に合わせて、ギルド長の愛の深さと杖の改造について声高らかに語るユリアの声が遠くに聞こえる。




うー、気分悪い。


そういえば、私魔女バレしたんだから今度こそ箒で飛べばいいじゃん!


「思い出したの!私はもう魔女でいいのよ。だってみんなにも知れ渡ったじゃない!箒で飛ばせて!」


私は、抱きしめてくれるレグとこの気持ち悪さのどちらを取るか天秤にかけ、箒にするわと空間バッグから箒を抜き取る。


だが……かつての相棒は、魔女狩りの追っ手から逃げるのに使っていたため、箒の一部が焦げていたり、箒部分の葦が折れている。



これじゃ飛べないわ



私はがっかりして肩を落とした。



むしろこれで良く飛んでいたなというほどボロボロだもの


こんなに長く相棒だったのに気づかなかったわ。



状態保存もされる空間バッグだからこそ、300年前にもうこの箒の限界は突破していたことを痛感させられた。


その箒には、300年前の私の戦いの跡があった。




「もう少し、みんなの反応をみて大丈夫そうなら、箒も直して乗ろう」



レグスタインにもわかったのだろう。

勢いよく箒を出したのに、私の勢いが小さくなったのだから。



「私……箒で飛ぶのが上手いのよ。これ、綺麗に直してあげないとね。この時代にあった箒にするわ。絨毯みたいに、早く飛べる仕様にしてもいいわよね……一から、この時代の素材を研究しなきゃね」


私は、空間バッグにそっと戻す。


「俺たちにも教えてくれよ。俺も魔法使いっぽく箒で飛んでみたい!」


グレンが、私に笑いかける。


「じゃあ、いい箒ができたら誰が一番早く飛べるか競走しようぜ」


アレンが絶対負けないと鼻息荒くする。

私は、それをみて微笑んだ。


そして、気づく。



箒が使えないと知ってから、不思議と空飛ぶ絨毯の揺れが気にならなくなったことを……



気分も悪くなくなっていく。



これは、300年前から変わってしまったものを受け入れたくなかった私の抵抗だったのね。


300年前の人が誰も生きていないように、物だって壊れて使えなくなる。

復活させることはできても、全く同じものに再現はできない。



私はこの時代に生きていく。


その変化を受け入れることが、生きていくことなんだわ。


でも、もう少しだけ甘えてもいいよね。




私は、もう一回、レグスタインにしがみつき、大好きな人の香りを思いっきり吸った。





「じゃあ、キリフ、俺は、もう一回シャルバンポールに戻って、ギルド長と話し合うから」



私を部屋に下ろして、レグスタインは再び部屋から出て行こうとする。



「はっ?いや、俺はアレンとユリアの面倒を見ないといけないからデボラ一人になるぞ。後始末はジークに任せておけばいい。デボラのことも悪いようにはされないさ」


「いや、一人で任せるわけにはいかないだろう?とりあえず、大怪我を負った3人を連れて帰っただけなんだから」


そうレグスタインは抵抗するが、キリフは首を横に振る。



「ジークは一人でもなんとかなるが、デボラだぞ。一人にしたら何するかわからないぞぉ」



キリフは、そういって意味ありげに微笑み、サッと部屋から出ていってしまう。



「お、おい!」



レグスタインが慌てる。そして、ちらっと私を見る。



「と、とりあえず、風呂を入れてくる。その格好は流石によくないからね」



部屋のベッドに、血まみれぼろぼろの服でポツンと座る私を見て、そのままではいけないと思ったらしい。


自分の荷物を再び置いて、風呂の準備を始めた。


浴室から、水が流れる音がして、レグは、私の綿の夜着を準備している。



キリフのあの含み笑いは……そういうことよね……



きっとユリアさんから聞いたんだわ。


レグに告白できるお膳立てよね?



そう考えると、告白とはどんなふうに行い、どんなふうに話をして、その後どう過ごすのか……



ああああああっ!



せっかく生還したのに、そんな大切な、聞くべきことをユリアさんに聞いてなかった。


私は、両手をこめかみに当てて


「神よーーーーっ!」


と叫びたくなる。





「頑張って60は数えてお湯に浸かろうか」


私が一人で百面相をしているのを困ったように見て、お風呂嫌いの私に、わざと挑発するようにレグスタインが揶揄う。



違うわよ。


今こんなに動揺しているのは、風呂に浸かることじゃないの。



私は、このドンカン男め!とレグスタインを睨む。



待てよ?



こんなに鼻血も出る勢いで興奮しているのに、風呂に使ったら、私、真っ裸でぶっ倒れちゃう!



「今日は疲れたから、魔法で体を綺麗にして湯船には入らないか、水という選択はないかしら?」



私は、熱いお湯がダメだってレグだって知ってるでしょ?


魔法や万能薬で治したけど、毒も浴びたし、斬られたし、普通の人なら死んでるのよ?


絶対安静って言ったじゃない?きっと長風呂は厳禁よ!


やるなら水風呂!


冷たい水で精神を整えたいわ!



私は、レグスタインに風呂に入らない理由を延々と並び立てるが、上から下まで、私の破れかぶれの血まみれ服を見て、再びにっこり笑う。



「風呂にちゃんと入ってるか、60、数えようか?」


「レグの変態!一人で数えるわ。ちょっと、飛ばすかもしれないけど、ちゃんと数ぐらい数えられます」



今日は、ユリアとアレンにソフィアさんもついていってしまった。


カレンも酷い目にあって、強制停止をかけられているという。


私は、再び恨めしいまでレグスタインを見上げた。




わかってるでしょ!二人っきりなのよ!




キリフは今日はこの部屋にはいないし、カレンもソフィアもいない。


それなのに、お風呂に入ったか、数を数えようかなんて破廉恥な提案をわざとしてくるんだもの。



私は、こんなに告白のタイミングを伺っているのに、人の気持ちも知らないで!



あっ!そうだ!




私は閃いた。




告白にいいタイミングがあるじゃないの!







「ちゃんとお風呂に浸かるんだよ」


「60だよね。数えますとも!」


私は、素直にうんうんと頷く。




突然風呂嫌いの私が、風呂に入るわと宣言したから、妙に疑われる。


「誰も見てないからって、入らないとか、水を浴びて終わらせれば分かるんだからね」


レグスタインは困った人を見るように、眉を下げて私に注意する。




「入るわ!誰がなんで言おうと長風呂するわ!」


私は、湯船にお湯が貯まるのを待つ。


ベッドの上で、なぜか正座をして……



精神集中!



呼吸を整え、体から湧き出る震えを抑える。



「デボラ……からかいすぎた?なんか、顔から表情が消えているし、怖いよ」



「精神を統一しているの。話しかけないで」



ふーっ



私は、もうなにがなんだかわからない神に手を組み合わせて、祈りを捧げる。




「どうか、無事に終わりますように」




その私の様子を見て、レグスタインは唖然とした声を上げる。


「デボラ……いくらなんでも風呂入るだけで大袈裟だよ」




私は、その声を合図にカッと目を開く。


そして、その笑わない真面目な顔でベッドから立ち上がり、私を見てオロオロしているレグスタインの耳元に口を寄せた。



「戻ってきたので、返事を返します。私が、心から好きなのは、レグです。師匠とあの世に逝かずに、レグと一緒に生きるので失恋させないでくださいね。

返事は、風呂から出て聞きますから!」



私はそういうが早いが、ダッシュして浴室に駆け込む。




しばらく、呆然としたレグスタインがそれから浴室のドアを叩くのはすぐ……


「お、おい!デボラ!待って!」




そのノックが続くドアを背に……


ふふっ!


大成功だわ。

告白の仕方なんてわからないから、あの日のレグを真似てみたの。



「デボラ!ねえ、デボラ開けて」


レグは真面目だから、お風呂場に勝手に入るなんて紳士じゃないことしないものね。



よし、これで時間稼ぎはできた。


この後は……



私は、浴槽から湯気が立ち上がるお湯を見て、あら?っと首を傾げる。



「60数えたらお風呂から出るわよね。えっ?60秒で、レグともう顔を合わせるの?」



ちらっと、ドアを見つめて私は、困ったと止まる。



「きれいにはするわ。でも、次にレグに会う時にはふんわりいい香りの私でいたいわよね。」



カレンもソフィアもココアも、ふわふわな素敵な香りの女の子に変身させてくれたのに……



ふんわり綺麗は、魔法では無理だ。


清浄魔法は、汚くならないというだけだ。





いや、抱きしめるがなければ、匂いなんてどうでもいいかも。


でも、私がこの風呂を出たら私たちは両思い。



抱きしめられる??無いかな?


抱きしめたいはあるよね?



それ以上………はない……はず……




キスは?



歯磨きしなきゃ!


ど、どうしたらいいの?


シャンプー、トリートメント、ボディーオイルに……


いろんな瓶が並んでいるわ。



カレンが教えてくれた時と、置いてある物が違うわ。


ココアさんが教えてくれたものとも違う。


歯ブラシは!!


落ち着いて!


ソフィアさんがやってくれる時のことを思い出すの。


やり方はわかってるはず……




洗い方は……どれから使うんだっけ?


ああ、頭が真っ白よ。


60秒で全部これを一人でするのは無理!




風呂に60数えて浸かった後、私、どうしたら!!



外から聞こえるレグが私を呼ぶ声にすがるに縋れない現状に、私はパニックになるのだった。



















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