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【完結】死にたかった最強魔女は、300年後の世界で愛され魔女となっています  作者: かんあずき


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81 ポンセの恐怖

アレンは、せっかく魔力の高い子供として産まれたのに……


「惜しいことをしたものだ。だが、魔力がなくなるなんて、他の宗派の人間から見たら、ドマイン教の魔力は不安定と見られるに等しいからな」


アレンの父、ポンセは、ぷかぁーと葉巻を燻らせる。

その煙は、まるで渦を巻くように空気に溶け込んでいく。


「誰を次の看板にするかな……」



葉巻を灰皿に置き、ポンセは顎に手を当てた。



アレンは、ドマイン教、いや他の宗派と比べても抜きに出た才能があったから、鼻も高かったが。


後継は、あいつの兄か弟か……


うーん、どいつもなぁ

少し劣るからな……


仕方ないか。

代行で私が総長にしばらく立つか?



「まあ、アレンは死んだ。あれが生きていたら、アレンと比べるものもいただろうが、神の怒りを受けて魔力を失った上に、亡くなったのだから比べるものもいないだろう」


仮に、私が総長になっても、アレンの方が……と言われることもないだろう。




全く、何が魔力が復活したから家に戻れるか?だ。


アレンの手紙を見た時にまだ死んでなかったのかと驚いた。

まさかギルドに保護されているとは──


しかも、ピンと弾いただけでアレンの魔力を無くした女の庇護下にあるだと?


まさに一族の恥!


そんなことで俺が喜んで息子を迎え入れるとでも思ったか?

女にあっさりやられて、その女に保護されたら魔力が復活したと喜ぶ親がどこにいる?



女が神なら価値もあるが、アレンより魔力を持つ女が現れたからって邪魔にしかならんよ。



「ただ、相当な力を持っていることは確かなようだ」


ボンセ自身も、魔力はそれなりにあるからわかる。



あの女が、蒼酸の毒を浴びた女を浄化魔法で助けようとしていたことを。

そして、確実に仕留めたアレンを回復させようとしたことを。



だが、急いであの女を連れ去ったから、あの二人はもう助かってはいまい。


やれやれ、ギルドの女に手を出したら、ギルドも黙ってないからな。

今のところ、殺された二人が残ったことと、女が消えた事実しかない。




あの魔女に罪をなすりつけておけばいい。

調べたら貧しい娘だという。


強盗目的にしておくか?

プラチナカードというが、魔女という以外になんの取り柄も見つからない女だったな。



魔法を使えなくする方法が思い当たらず、かつての魔女狩りの拷問部屋に入れておいたが、始祖の作った手枷も足枷も、今だに十分機能するし、あのまま弱らせるのもあり。


かつての皇帝ように弄んで、子だけ産ませるのもありか?


少し、やせぎすだが、魔力の高い子供が産まれそうだ。

私も、まだまだ健在だからな。



若く、美しいあの魔女を好き勝手できると思うと、勝手にオスの本能が昂り始めた。




だが──



「ポンセ様、申し訳ありません!先ほどの女が牢から逃げました」


私兵の連絡と共に、ポンセは「はあっ?」と叫んだ。

あの牢は長く使われていない。


そんなところに私兵がウロウロしているのを他の宗派に見られたら、何事かと怪しまれるので、女を牢に閉じ込めて防音だけ効かせておいたのだ。


これで女が何を叫ぼうと誰にもわからない。



そのはずだったのに……


それに、女は毒で弱っていて動けなかったはずだ。

解毒剤も、死なない程度の量しか入れていない。


弱らせながら懐柔させるのも悪くないと思っていたのに……



どうやって逃げた?



急いで、最上階の牢へ足を運ぶと、牢の床に、何かが焼け落ちたような大きな穴が空いている。


「こ、これは……」


これはやばい!

あいつ、爆弾でも隠し持っていたのか?


しかも、穴が空いたら、防音なんて意味がない!

みんながやってきてしまったじゃないか!



「おお、ポンセ殿!何があったのでしょう?ここは長く誰も足を運んでいないところなのに」


別の宗派の総長が、魔力を感じるのですが?といいながら牢を調べようとする。



や、やばい!

誰をここに入れたという話になる!



「総長!なにか御身にあっては危険ですからお下がりください。私の息子の例もありますので」


そういうと、恐るようにみんな足が止まる。

誰もがアレンになりたくないのだ。



しかし、これだけの損害を与えられたら、あの女を悪者にするしかないか。



「実は、先ほどアレンを誘拐した女が、更に身代金を要求してきたのです。なんとか捕まえて、牢に入れたのですが、アレンが誘拐されたまままで……」


「なんと!それはあのギルドのプラチナカードの女のことですか?」


「アレン殿の魔力を奪うだけでは飽き足らず……総長を、自ら降りられたアレン殿になんてことを……」



みんな顔を見合わせて、とんでもない悪女だと言い始めた。


そうだ!


それでいい。



しかし……ちっ!


利用価値は、アレン殺害と、ギルド長の妻の犯人になることぐらいしかないか。


まあいい。

捕まえて尋問すると言って、その後、うちで囲い込めばいい。


死んだら死んだでかまわん。




「お前たち、女を追え!爆弾を持っているかもしれない。抵抗するようなら、殺してかまわん」


ポンセは大きな声で叫ぶ。


「皆さんは危険なので部屋に戻りましょう。出てはなりませんぞ」


そう促せば、みんな我が身可愛さに、それぞれの宗派のものに自分の身を固めさせる。



何が総長だ。


何が神だ。



自分が、神に近い立場になり、神なんて幻に過ぎないことを実感する。



さて、城は広いといえども、あの体だ。

そんなに遠くまでは逃げ出せまい。



だが──



ポンセは、牢の中を見回し、なんだ!!と驚く。


入るのも嫌だった、薄汚れて、じめじめとして、臭い臭いを放ちあの牢が、どういうことか光り輝き、全く汚れがない。


あの砂の渦を巻いて舞い上がっているのはなんだ?


とんでもないデカい魔石みたいな物が天井と床についてるんだが……



魔石?

いや、あの大きさだととんでもないデカさの魔物になるからそれはないか?


しかも二個……


ポンセは、怪訝な顔をしたまま、素手でその魔石に触れようとする。

その瞬間、激しい稲妻が体に落ちて吹っ飛ばされる。



「ポンセ様!!」


しまった。


感電……なんだ?雷が落ちた?


体が吹っ飛ばされたまま動けない。



その床の目線の先には、見たこともない煌びやかなオーロラの毛皮の絨毯に、転落緩衝のマットレスかというぐらいの、ふかふかの厚みのある布団が敷かれている。


そこに穴から入る光が反射して、部屋がキラキラとしている。



「これは……なんだ?」


ポンセは、感電で思うように動かない体に愕然としながら、自分の目は幻を見ているのだろうかと思った。


まさか、アレンの言う通り、始祖のようなとんでもない魔法が使える女なのか?



神からの天罰──いや、始祖からの天罰か?


ゾッとして、みんなに早く女を追えと叫ぶ。



そこに追い打ちをかける羽音が聞こえる。



あれは、アレンの連絡鳥!

そんなまさか?あれだけの出血量で、間違いなく奥深くまで刺した記憶がある。


回復魔法も、途中であの女を攫った段階であれ以上かけられなかったはず……



連絡鳥は俺が受け取った瞬間消える。

残されたのは、ギルドからの報復宣言……



まさか……


アレンが生きているなら、生き証人が出来てしまう。


いや、ギルド長の妻も殺害未遂?


未遂?死んでないのか!




ポンセは、ギルド長からの通告の文章に目を見開く。




逃げなければならない。


ギルドの報復行動なんて、惨殺では済まない。



ギルドは世界に広がる独立組織だ。


その独立性が失われ、不可侵協定が破られたとなれば面子のためにもギルドは許さない。




感電で痺れた体を、動かして残った私兵にどなった。


「何がなんでも女を探せ!」


アレンの話だと、ギルドでも、仲間内でも女はかなり人気が高く、重宝がられる魔女だと言う。



女を盾にして逃げるか?


解毒剤が欲しければ言うことを聞けといえば、従うだろう。


女だって死にたくはないはずだ。




だが……本当に解毒剤が必要な状況なのか?


ポンセは変わり果てた牢をみて、動揺を隠せなかった。







「とにかく、私を部屋までは運べ!」


くそっ!


感電した瞬間、防御ネックレスが吹き飛んだじゃないか。



床に砕けたネックレスの破片が飛び散っている。

それは粉々で、ネックレスだったといわなければわからない状態だ。



あれは、アレンが総長になった時に私に作ってくれたものだったか?



ふん、皮肉なもんだ。


私を守るふりをして、ギルド長と攻撃をしてくるとはな。


あれ?



ギルド長のやつ、私の子供アレンの殺害未遂と書いてなかったか?


あいつ、もしかして寝返っていたのか?



殺さなかったら、自分が殺されていたのかもしれない。





さーっと体の奥底が冷えて、血が沸々と逆流していくような気持ち悪さが、段々と怒りに変換されていく。



「早く部屋まで私を運び、入り口を固めろ!絶対誰も入れるな」


ポンセは、怒りを私兵に撒き散らしながら、ギルド長の書面を握りつぶした。




ギルド長がなにをやろうと、鉄壁の守りを固めたらいい。



アレンがその気なら、私も戦うのみだ。



ふと気づく。


古代の魔法を使うか?



始祖の部屋は、我々にとっては神の部屋と同じ。


手をつけていないものが多く残されている。



300年前と侮ってはいけない。


始祖の作るもの以上の品質や特性のあるものを作れたものなど、この世には存在しないのだから。


誰もが、神になったように強くなれる代物だ。


それ故に、表に出されたことはなかった。




たしか、壁に武器が飾られていたな。


ポンセは、これなら勝てるとニンマリ笑った。



「おい、部屋に戻る前に始祖の部屋を見るぞ」























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