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【完結】死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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73 俺の好きな人は私

カレンから緊急信号が送られる前のこと──


私は翌朝、アレンに今後のことを相談するために、部屋をノックした。




「デボラ、朝から熱心だね。今日は何作るの?」


「俺は、そろそろハイポーションに取り掛かりたいんだけどな」


グレンとアレンは今日作るものについて聞いてくる。




熱心なのは二人だわ。


今日はアレンと話をしようと思ったけど、先に調合練習をしてからにしようかしら?




「じゃあ……本当は溶解剤作りに取り掛かろうと思っていたけど、ハイポーションにしましょうか?」


ハイポーションは溶解剤を使うので、きっとその重要性に気づいてもらえるはずだわ。




溶解剤を作ると、使っているものに不足した属性や魔力の出力調整に使えるので、品質が上がる。


でも、今の時代はレシピで即、欲しいものを作るか作れないかと考えるようで、溶解剤のような補助的なものの作成は主流ではないのだ。


私は、空間バッグからハイポーションに使う素材を選び始めた。



「新鮮な風属性植物が必要なの。そして、すべてただ品質がいいものを突っ込むんじゃなくて、その中でも生命力に優れているという特性を持つものが必要で……」



私は、カゼキリソウの茎の色を見せて使えるものと使えないものをグレンとアレンに分けさせようとする。


「カゼキリソウ?初めて見たな」


グレンが、その茎や花をじっと見る。


「えっ?そうなの?300年経っているものね。もしかしたら、他の品種が混じって、原種はもう残っていないのかしら?」




祠でも、雪の結晶と呼ばれる真っ白な花が、ピンクになっていた。同じ効能かわからないから、ちゃんと試さないといけないわね……


「そうね。材料は、いずれ今の時代にあったレシピに作り変えるわ。同じように見える花でも、効能が全く違ったり分量が変わることがあるから……でも、せっかくだから、バッグの中にある300年前の材料も使い切ってからにしましょう」



私はそう言ってバッグの中身を出そうとする。






その時──


「みんな、集合してくれ!」


レグの声が響き、私たち3人は顔を見合わせる。

いつもより緊迫した雰囲気に、少し怖い感覚すらある。



「なんだろう?レグの声がいつもよりピリついてる」


グレンが部屋のドアを開けて廊下を見ると、キリフやヘンケル、バインも一斉にドアを開けた。



「カレンから緊急信号連絡がソフィアに入った。すぐに、俺たちの拠点に向かう。デボラ、君はアレンとここに残れ」




カレンさんが!

もしかして、私が関係している?


心当たりはあるわ。


ヘンケルやバインの家の人が接触を試みようとしている話は聞いていたし、キリフのお兄さんが枢機院に入る話もあるわよね。



タイミング的に、誰かがやってきてカレンさんに危害を加えようとしたんじゃないかしら?



「レグ!私も行く」


私は、慌てて、レグスタインの元に駆けつけた。

だが、レグスタインからは首を横に振られる。



このギルドは守りがしっかりしているから、私が狙いの場合は、逆にここに私が残っている方が、安全が確保されて動きが取りやすいらしい。


そうレグスタインに断られると、私は絶対についていくとは言えなくなる。



足手纏いになりたくないもの……




ユリアもやってきて、あなたは、ここにいるべきだと諭され、私は頷いた。


だが、同時に、過去の記憶が頭の中で甦り、不安感が増してきた。



かつて、魔女狩りで逃げ回った時、一人、また一人と捕らえられ、その後出会うことはなかったのだから……


みんなの足手纏いになるから付いて行ってはいけない。


でも、不安なの。




これで会えなくならない?


ちゃんと帰ってきてくれる?




「レグ、絶対無事に戻ってきてね。ちゃんと待ってるから」




私は、震える声で、そう言うしかなかった。


それなのに、体の震えが止まらない。





それに気づいたのだろう。


レグスタインは、そっと私に近寄ってきた。


「デボラ、何があっても離さないから安心して待っていて」


私は、うん、うんと何度も頷く。




震えたらみんなを不安にさせてしまうだけなのに……




ここは何もないふりをする。それが正解なのに……



私が、レグがもし戻って来なかったらと再び不安になったことを、レグはわかっているのね。



レグは、少し私の顔を見て微笑んだ。


私も頑張って微笑み返そうとするが、こわばってしまう。



そして、私とレグの目が合った瞬間にっこり笑い、私の耳元にそっと口を近づけ、言葉を残した。



「俺の好きな人はデボラだよ。だから、失恋させないでほしい」



えっ?



しばらく時が止まったような気がする。



聞き間違いかしら?



今なんて言った?



俺の好きな人は……私?



失恋させないでって……




レグは、これから好きな人に告白するって……


振られたら、私と一緒に……


えっ?





「返事は帰って聞くから。では行ってくるよ」



レグスタインが、ちょっと顔を赤くしながら、私からスッと体を離す。


先ほどまで私の耳元にあった温かい吐息が去っていく。




あっ……待って……




そう私が思う間もなく、みんな立ち去ってしまった。




しばらく、ぼーっとしてしまう。



あ……好きな人って……私?



本当に、勘違いじゃないのよね?




私もなの。


レグが好きなのってすぐ言えばよかった。



帰ってきたら一番にそう言っていいんだよね?


好きなのは私だって……そう言ってくれたわよね。




ボボボボボボッ!!


一気に私の顔が赤くなり、全身が熱くなる。




「あらあら、ここであの男、その気になったんだ。へぇ、デボラもあの男が好きだったの?良かったじゃないの」


ユリアが、ふふっと微笑んだ。




「キリフはああ言ったけどさ、結果的に、この間の仕掛けは、最高の結果じゃない?どうする?帰ってきたら、最高の夜着でお出迎えする?一晩ぐらいなら、キリフは私たちの部屋で面倒見るわよ。」



そう言われ、この間の夜着事件を思い出し、ブンブンと頭を振る。



キリフが居なかったら、私たち二人きりになるのよ。


最高の夜着!


無理無理無理!




ダメだわ!


キリフはユリアさんにはきちんと注意したって言ったけど、全然ユリアさんには伝わってないわ。


片思いでも、あんなふうに空回りしたのに、両思いであの夜着なんて着せられたら……





無理無理無理!




私は、思わずあらぬ世界を想像して、首をブンブン振りまくる。


煩悩恐るべし!



「なんだか分からないけど、本当にウブなのねえ。300年前だって似たようなものはあったんでしょうに」


ユリアは、珍獣を見つめるように、私の反応を笑いながら楽しんでいる。




「あの、300年前には男性と話すらしたことないんです。そうですね、初めて手に触れられたのは、兵から縄をかけられた時ですよ」


私はあわあわとして、それを伝えると、ユリアは目を丸くする。


「えーっ!じゃあ、300年前に、片思いの恋すらないってこと?あんた、18歳でしょ?」


私は、鼻息荒く、魔女狩りから逃げていたんだから当然ですと頷く。



私の男性遍歴をなめたら困るわ。



だが、その隣で私の話を聞いていたアレンの顔は呆然としつつも、何かに緊張しているような顔つきになっていた。



「デボラ……レグスタインのことが好きなの?レグスタインも、デボラのことを?次に会えた時に、想いを伝えるの?」



なんだか目も泳ぎ、いつものアレンらしくないわ?


やっぱりレグの言う通り、自分の居場所が変化するんじゃないかと思うのは不安よね。

まだ10歳だもの。



アレンの気持ちが痛いほど理解できた。


「ま、まだはっきりと言われたわけじゃないの。ただ、私はレグのことが好きで……でも、身分の問題もあるから、添い遂げられるわけじゃないと思う……んだけど……」



この間は、貴族から籍を抜くと言っていたし、アレンも養子にと言っていたけど、まだ本当に私とそのつもりでいてくれるのかわからないし、今はまだ、言わない方が良いわよね。



「まあ、立ち話もなんだし、私の部屋に行きましょう。私の部屋は、ジークが過保護にしていて、ジークの魔力で外から開けるか、内側からしか開かない仕様にしているの。みんなが帰ってくるまでは部屋に籠城していたらいいわ」


ユリアは、杖でかなりの距離を歩けるようになってはいるけど、長い時間維持できるほど筋力は戻っていない。

それでも、短距離なら杖なしで歩けるようになっている。



すごいバイタリティだわ



その努力を努力と見せない姿に私は素直に感動する。

ユリアは、結局休むことなく部屋まで戻り、部屋に手招きをする。



アレンとは、シャルバンポール城に行くことも話さないといけないし、今の間に気持ちを聞いた方が良いわね。


先ほどの反応を見ても、私とレグが両思いかもしれないと言う話だけですごく動揺していたもの。

どんな選択を取っても、あなたの気持ちに寄り添うと伝えないといけないわ。



私は、そう思い、ユリアにも聞いてもらいながら話をしようと室内に入った。



だが、この時どうしてアレンの動揺を一度受け止めてから部屋に入らなかったのだろう?

どうして、アレンの明らかにおかしい「変化」に気づかなかったのだろう?



好きな人から、告白されて私は舞い上がっていたのかもしれない。


私は、この後、とてつもない後悔をすることになる。



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