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【完結】死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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65/86

65 もしかして初恋?

「ソフィアさん、お身体は大丈夫ですか?」


「ふふっ、それは私のセリフです。デボラ様は怪我はなかったですか?私は、メンテナンスでついでに部品洗浄までして頂きましたからね。すこぶる調子がいいです。ほら、肌がぷりんぷりんになってるでしょう。魔石消耗も省エネされたんです」


そういって、ソフィアは私の手を取った。


「ね?」


私に肌を触らせて、爆発の原因となった、握手をするところも再現させて顔を見て笑う。


「本当だわ。今の技術ってすごいのね。魔法では、こんなふうに人の肌のように作り上げられないもの」


私の魔力を測定しようとして、火を噴いて故障したソフィアさんは、見た目はもちろんのことだが、触れたら人と変わらないぐらいの肌に変わっているし、前のようなことは起こらないのだと安心させてくれた。


だから、わざと私に触れさせたのかもしれない。


自動人形で、心はないと言うけど、人を傷つけないことを誇りにしたビルダーさんがカレンさんやソフィアさんを作ってるんだわ。



私は、嬉し涙で景色が歪む。

だが、感動はそこまで──


やはりソフィアはカレンの兄弟人形。

私の血濡れた姿を上から下まで見て、人形なのに露骨に嫌そうに眉をさげて、鼻をくんくんとさせて腕をまくり始める。


「早速お風呂を準備しております。デボラ様を磨き上げろとユリア様から指示されておりますが、これは磨き甲斐がある。いえ、磨く前に流さないと……髪は……揃えましょうか?」


「あ……そうね。どうしよう……見た目を男性に見せたかったの。でも、普段からそう言う練習をしてないから、すぐバレちゃった。髪を戻そうかな……」


私は困ったようにレグスタインとキリフに、どんな容姿だと目立たないか相談しようするが、レグスタインの顔色がサッと変わり、私の元にやってくる。


「戻せるのか?」


レグスタインは、そのまま驚いたような目で私の髪を見つめ、震える指でゆっくり私の髪に触れた。


「本当に……もし戻るなら、戻して欲しい。あんなに可愛くて似合っていた髪を俺のせいで切らせてしまった」


そう言いながら、まるで、自分がレグスタインの好きな人にでもなったのではないかと錯覚するような優しい目と手つきで何度も髪に触れる。


私はと言うと──



な、なんてことをさらっとレグは言うの!


みんなの前!

キリフの前!

人形って言ったって、ソフィアさんだって誤解するわ!


今までの髪がかわいいって!

似合ってたって!


私の髪にするっと触れられる指に意識がいって、ドキドキして真っ赤になる。


なんでレグの指の形とか長さとか、手の大きさとか意識しちゃうんだか!


私は恥ずかしさのあまり、そっと触れられている指から半歩下がる。


「そ、そんなこと言うのは、好きな人の前だけにしてください!」


私は照れ隠しに思わず反射的に怒るが、レグスタインはそのまま「えっ!」と困ったように固まり、髪に触れていた指はそのまま抜かれる。


ハッ!言いすぎた?


私はさらに真っ白になる。

そこに、自動人形ソフィアの感情のこもらない追い討ちがやってくる。


「あら?デボラさんは、レグスタイン様のことがお好きなんですね?分かりました。レグスタイン様のお好みの女に仕立て上げさせていただきます。レグスタイン様?どのような女性がお好みですか?」


ソフィアは、にっこり私とレグスタインに笑いかける。


「す!す!すすす!違います。いえ、大好きな仲間で、仲間が好む髪にしたいと思っただけで……」


ソフィアさんは自動人形で心がないから、レグや私の言葉をストレートにとってしまっただけ……よね?


今の会話がまるで、私が好きなように聞こえるから……


ただ、それだけ。


ん?私が……レグを好きなように聞こえるですって!



「ですから、お好きなのですよね。まとめあげる、ふわふわ、サラサラにおろすのも素敵ですよね」



まるで私の心の中を読んでいるかのようにソフィアが追撃してくる。


私は、頭が真っ白なままぶんぶん頭を振る。

レグの反応は……私は、顔をちらっと見る。


あーっ!レグまで、なんで一緒に赤くなるのよ!

だから誤解されるのよ。



「あ……いつもみたいに……おろした髪が好きかも……」


小さい声で、さりげなくソフィアに好きな髪を話してるし……


そんなこと言われたらその髪型を意識するわ。

だって、レグはその髪型が好きなのよね?


でも、好きな子に誤解されたらどうするのよ。




困るかしら?



私の中に黒いドロっとした心が生まれてくるのがわかる。


困るのは、好きな人に誤解されるレグで、私は……



ダメダメダメ!

誤解されたら、レグはその人と想いが、すれ違ってしまうわ。



「か、髪つけますね。」


私は……元通りになれば、レグが喜んでくれるから、困らなくて……


おろした髪に戻したら可愛いっていってくれるかもしれないなら、これは、レグの好きな人よりも可愛いと思ってもらえるチャンスじゃないの?



チャンス??私は何を!!



私は、本当におかしいわ。

しっかりしろ!私!


なんでレグの好きな人と張り合おうとしているのか自分でもわからず、あわてて空間バッグを開ける。


「え、ええと、ちゃんと髪を保管してあるんです」



言い訳をするように話すのに、早くレグの好きな姿になりたいという訳のわからない気持ちが、なぜか私に追い打ちをかける。


私の髪を入れた瓶の蓋を開け、瓶の上にまず私の魔力をのせる。


「私の魔力の一部よ。私の魔力に再度繋がり、私の髪に戻れ」


そう言うと、瓶の中の髪がくるくると私の元に戻るように導かれるように空中に舞い、切れていた髪の先の魔力と結合されていく。


それはほんの1分ほどの作業で、大したことではない。


それなのに……レグが好きな、似合っていると言ってくれた髪に戻る……私はただそれが嬉しい。



そう、嬉しいのだ。

どうしてかわからないけど、その感情は明確にわかる。



「なんだ!それなら早く戻してくれよ。普通は髪は切ったら戻らないんだぞ」


今度はキリフが、私の髪の接合部に触れて、そんな簡単に戻るのかよと、驚いたように見つめている。


「髪に魔力が残っているので、素材に使えると思って取っておいたんですけど、アレンの時と一緒で、切れた魔力は自分のものなら普通に繋がるので、髪も戻すことは可能なんです」


「なるほどな。」


キリフは興味深そうに私の髪をじっとみたり、繋がった先に触れたりする。




あれ?




レグに触れられる時は、恥ずかしかったり触れられたその指を意識したのに、キリフにどれだけ触られても気にならない?



レグとキリフの違いってなに?



私は、思わずレグスタインとキリフを見比べる。


レグにだけ、ドキドキしてるわよね?

レグが望む私の姿でいたいのよね……


レグからの視線や触れる部分に意識してしまう……


キリフには悪いけど、キリフに、俺の好きなのはショートカットと言われても、ああそうって流すわ。




でも、俺はショートカットが好きってレグに言われたら?




間違いなく、バッサリ切るわ


その気持ちの違いに私は目を丸くして、呆然とした。



私!もしかしてレグを意識している。



いえ、意識なんてもんじゃないわ!



突然、胸がバクバクしてきた。

どうしよう。

今までにない感情が私の中に吹き荒れている。


思わず目に入る髪を見つめて、レグが好きな髪型……そう認識して、ぼぼっと顔が赤くなる。


私、確定でレグに恋してる! 



えっ?でもレグには好きな人がいるのを知っているのよ。

すでに失恋を折り込んでるのに?



それなのに── 恋!!



「おいどうした?なんか、様子がおかしいけど?」


レグが、自分でもわかるぐらい挙動不審になっている私の顔を覗き込む。


そんな近距離で、レグが視界に入ったら。


レグの柔らかい金髪の髪や、長いまつ毛や、薄い唇や!



薄い唇……



どうしてそんなところに目が行くの!



「だ、大丈夫!お風呂、お風呂行きます!」



私は、レグのパーツの全てが気になり始めた。

そして、触れられるその感触が私の中では再現され始める。



わああああああああっ!



心配そうなレグの視線を振り切ってソフィアを掴み、お風呂に直行する。



今まで、どんな階層ボスと戦ってもこんなに心臓がバクバクいったことはなかったのに……



なんで今まで気づかなかったんだろうと言うぐらいおかしい。



レグを頭の中に思い出すだけで心臓がバクバクと音を立て、その体温や声を思い出すだけで私は悶絶するのだった。





「さあ、綺麗になりましたよ。きっとレグスタイン様の好きな感じって以前のこう言う雰囲気ですかね?でも、少し雰囲気が以前より色気を感じるような……18歳は、大人の階段を駆け上がる時期ですもんね」


嬉しそうに、ソフィアが櫛を髪に滑らせながらニコニコと伝えてくる。


「あ、あの……本当にレグの好きな雰囲気になっているかしら?」


ちらっと床に落ちたヒュドラの冒険者の服を見つめる。

しっかり血抜きをして、風魔法で乾かせばすぐ着られるけど、前に街で女の子たちから馬鹿にされた服だったわ。


レグの好きな女の子はどんな服を着るのかしら?


ああ、どうしてレグが買ってくれた服を家に残してきたんだろう?

あれなら、レグが私に似合うと思ってくれた服だから、安心して着られるのに……


恋を意識すると、自分の全てが恥ずかしくなる。


格好も、顔も、行動も……


「夜着はユリア様が準備しておられます。こちらです」


さっと出された服は……


「あの?生地が少なすぎません?それに透けた部分も多いような……」


ソフィアはもちろんと頷いた。


「見えそうで見えなくて、でも、ちょっと見えた時に最大のインパクトを残す。ユリア様より伝言です。貧乳なのだから、隠すより、ギリギリを攻めろ!とのことです」


ソフィアさんは、自動人形で感情がないから抵抗ないでしょうけど……



私が攻める相手はレグなのよ。

しかも、この先の扉の向こうにいるのに……


待っているレグを思い浮かべて、ブルっと震える。


無理!絶対無理!


私は、スケスケの夜着にナイトガウンというスタイルに、どこをどう攻めればいいのか先に教えて欲しいわと顔を覆った。





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