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死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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60/74

60 300年後から会いにきました

すっかり、寝入ったアレンの様子を見て、わたしは握っていたアレンの手を布団に入れた。


「この布団、俺も一回寝てみたいな。アレン、俺、添い寝してやるよ」


そう言って、そわそわと入ろうとするグレンを


「アレンが起きたらどうするのよ!」


と、慌てて止める。


相変わらず、研究心旺盛なんだから。


わたしはクスッと笑う。

そして、真面目な顔になって、みんなに頭を下げた。


「改めてみんな、本当にごめんなさい。

やっぱり不安なの。みんなの未来の邪魔や、意図せず危険な目に遭わせてしまうんじゃないかって。考えて行動しても、いつも悪い結果ばかり生み出してしまうんだもの」


300年前に、私は迂闊どころか慎重だったはずなのに……

この時代に慣れるのにどのくらいかかるんだろう。


不安で押しつぶされそうになる。


「デボラ、お前はパーティーに入るのは初めてだったな。」


キリフが私のそばに寄ってきたので、わたしは頷く。


「魔女は仲間ではあるけど、パーティーのように一緒に何かを成し遂げる関係ではないの」


それが出来れば、ダンジョンでの生存率はもっと高かったかもしれない。


「パーティーはお互いが命を預けてもいいという信頼のもとに成り立っている。デボラが俺たちをダンジョンで助けてくれた時、今度はみんな、命をかけてデボラを守る番だと思ったんだよ。俺たちはお互いに命をかけあえるメンバーなんだ」


だから、気にしなくていいとキリフは私の頭を撫でる。


「それに、デボラのやりたいことを叶えることが、今は俺たち共通の目的になった。デボラと俺たちはもう同じ夢を叶える仲間なんだ」


バインも、私の手を握りしめる。


グレンも、眠っているアレンから離れて、私のもう片方の手を握ってきた。


「アレンの件は、俺は今でも、権力を前にみんながアレンにへりくだってしまったことで、誰かが止めなければ、これからアレンはもっと強い魔法使いになった時に手がつけられなくなるところだったと思っている。俺があの場でもっと言えばよかった。ここまでデボラを悩ませてすまない」


そう言い、グレンは私に頭を下げる。


「ち、ちがうわ。グレンが注意してくれたのに、私が余計な追い討ちをかけてしまったのよ。あの……私、みんなのそばにやっぱりいたいの。少し離れただけで不安で心細くなってしまったの」


私は、リーダーのレグスタインに頭を下げた。


「レグ、ごめんなさい。レグは私のことをすごく心配してくれたのに、嫌な思いをさせてしまったわ。私、ちゃんと自立できるように頑張るから、もう少しみんなと一緒に過ごしてもいいかしら?」


レグスタインは、何を今更とため息をついた。


「……当たり前だよ。デボラはもう仲間なんだから、自立とか、もう少しとかじゃなくて、みんなと一緒にいる。でいいんだ。これからアレンの面倒も見るなら、デボラはお姉さんだろ。迂闊なことをする前に、周りに相談すること。いいね?」


そう優しく言われて涙腺がゆるむ。


「うん、約束する」


私は頷くと、レグスタインは、さて……と空気を変えるように呟いた。


「アレンが回復するまではこの祠で野営をする。この後は、ギルド長の家で方針を決める。キリフ、ギルド長とユリア殿を側で見るのが辛ければ、この街で情報を集める役でもいいがどうする?」


レグスタインは、キリフに挑戦的に微笑む。


「レグ、俺の恋心より自分の恋心を心配したらどうだ?俺は、今更だ。お前はこれからだもんな」


ニヤニヤしながら、キリフはレグスタインを肘でこづく。


「えっ?レグの恋心って?レグ誰か好きな人が出来たの?」


私はなぜかドキッとして、レグが離れてしまうような焦りを感じる。


そんな話、今まで出たこともなかったのに……


でも、みんな一斉に目が泳ぎ出し、何かを私に隠している様子だわ。


ますます心がざわついてくる。


「デボラは気にしなくてもいい。みんなも、俺の件はこれからのパーティーに不要なことだ。変に気を遣わないでほしいし、忘れてくれ」


レグスタインは、少し顔を赤くするが、真面目な顔をして、みんなにそう声をかける。


「ど、どうして?気にするわ。私のことでみんなに動いてもらうのに、レグが想っている人とうまくいかないのは困るわ」


頭の中で、突然のレグスタインの恋愛話に混乱する。


そう言いながら、他の人にこの優しさが注がれるのは、嫌だという気持ちがある。


一方で、これだけ良くしてくれるレグの幸せを祈れないなんておかしいわと自分が自分を責め立てる。


どうしよう?


私、どんなふうにレグに伝えるべきなの?


「デ、デボラ、あのさ、レグはその時にいいタイミングでちゃんと自分の気持ちに向かい合うから、今はそっとしてあげて」


ヘンケルが、笑いを堪えるように私が話すのを止める。


でも……


「お相手は?その……相手は知ってる人かしら?その……もうすでに……お付き合いとか……」


止められるのに、なんだろう?これは?


勝手に私の心が動揺して、口が勝手にレグを問い詰めようとしてしまう。


「だから、そこまで」


グレンが、レグを見る私の目を塞ぐ。

そして、くすくすと笑う。


そうよね。

これ以上は、立ち入っちゃいけないわよね。


私はしゅんとする。


「だから……みんな変な気遣いはなしだ。今まで通りで!いいね」


レグスタインが少しプイッと私から視線を逸らしたので、ますます不安になる。


でも、これ以上は、ただの仲間の私が立ち入っていい話ではないわね。


私もレグスタインからそっと視線をずらして、別の話題にすることにした。


「あの……アレンが眠っている間に、少しだけこの辺りを見たいんだけどいいかしら?だれかの故郷なのよね。私の知らない人かもしれないけど……」


わたしは、空間バッグに何かないか調べて、昔子供の頃に摘んだ普通の草花を取り出す。


「立派な花じゃないけど、お花か遺品を届けたいと思っていたから……」


だれの故郷かはわからないが、同じ魔女狩りにあった仲間たちの故郷に花を手向けたいと思った。


「あ、それなら俺がついていくよ」


グレンがそう声をかける。


「そう?じゃあ、お願いしようかな」


そう言って立ちあがろうとすると「いててててて!」とグレンの叫び声がする。


ヘンケルがなぜかグレンの耳を引っ張っている。


「ど、どうしたの?ヘンケル!」


私が叫ぶと、ヘンケルはニコニコして私の顔を見て笑った。


「うん、グレンは、空気が読めなくて、突然耳が痛くなったみたいだ。レグ、デボラに付いて行ってもらえるかな?俺たちは、グレンとアレンの面倒を見ないといけないからさ」


「へ?」


ヘンケルがグレンの耳を引っ張ったから痛いんじゃないの?


そう思い怪訝な顔をしたが、グレンまで突然手を叩いて、


「俺!耳が痛いって気づいた!うん!レグ一緒に行ってあげて!」


と、突然騒ぎ出す。


「だから……そういう気遣いは……」


レグスタインがそう声をかけたが、「いいから!」と、なぜか私とレグスタインの二人はみんなから祠の外に追いやられる。


「みんな突然どうしちゃったの?」


私は唖然として、レグスタインの顔を見るが、レグスタインにはみんなのその理由がわかっているようだった。



外は、柔らかい風が吹いていた。


私はぐるっと祠の周囲を見回した。

馬車が通る道はあるが、建物らしいものもない野原が続いている。


「この辺りは、あまり発展してないのね」


草の上を、少し歩いて回る。

知っている野花はあるが、すでに品種も混ざって亜種になっているものが多い。


私は、その中の一つの花に目がいき、しゃがみ込んだ。


「これは、よく魔女の薬に使っていた雪の結晶という花に似ているけど、私の時代は真っ白だったの。でも、これは少しピンクになっているから、効能は変わるかもしれないわね」


「そうなのか。少し持って帰る?掘るものを持ってきたら良かったね」


レグスタインも横に座り、その花に触れる。


「ううん、花を手向けにきたのに、花を摘んで帰るわけにはいかないわよ」


私は、そっと300年前の草花をそこに置き、手を合わせる。


「どうか安らかに。300年後も大変ですが、見守っていてくださいね」



目の前に揺れる花たちを、かつての魔女たちも摘んでいたのだろうか?


「ここに魔女が良く使う花に似たものが咲いているなら、かつてはこの辺りで魔女たちが活動していたのかもしれないな」


私の考えていることがわかっているかのように、レグスタインがぽつりと話す。


私も頷いて、しばらく、ずっと黙ってその野原を見て歩く。



あちこちに揺れる花が、まるでかつての魔女たちの集まりのように見えた。



「足は大丈夫?靴擦れを起こしていたんだろう?」


「えっ!そんなところまでわかるの!恥ずかしいわ。大丈夫!靴にドラゴンの脂をつけておいたの」


私は、その場で靴を脱いで、自慢げにレグスタインにその加工した靴の踵を見せる。


だが、レグスタインの顔は曇った。


「靴に血がたくさんついているじゃないか。そこに座って!踵を見せて!」


「大丈夫よ!ヒールで直したし!」


「ダメ!2回も足をやったのをこっちは知っている。踵!ちゃんと見せて」


レグスタインは私を岩の上に座らせて、両足の踵を調べている。


「まだ赤いよ。靴が合わない時にはちゃんと言って。今の時代は、自分の足に合った靴がちゃんとあるんだから」


「そうなの?靴は防寒以外基本的に履かなかったから……」


小さい頃は、師匠が時々靴を持ってきてくれたが、すぐ足が大きくなるのでサイズアウトしてしまう。


更には、魔女のみんなは履いていないので、私も寒い夜以外は履かなくなっていた。


師匠はそれを嫌がったけど……


レグスタインは、私の足に持っているハンカチを破り、巻いていく。


「デボラ、背負うからのって!歩くと多分また傷になるから」


「ええっ!恥ずかしいわよ」


「ダメ!言うことを聞く!」


レグって優しいけど、優しすぎじゃないかしら?


こんなに私に優しくしたら、好きな人に誤解されるんじゃないかしら?


私は不安になりつつも、その背中におぶさる。


背中からレグの体温と香りがして、私はつい体に捕まるふりをして背中に体を密着させる。


なんだか、甘えたくなったのだ。


レグは瞬間、固くなった気がしたけど、このぐらいの甘えは許してくれるかしら?


その暖かさが、クセになりそうで、ずっとレグの好きな人ってどんな人だろうと考えてしまう。


本当はここにいた魔女のことを考えなければならないのに……


「当たり前だけど、魔女たちが住んでいた形跡とか残ってないわね」


「家があれば土台が残る可能性もあったんだろうけどね」


そう言うと、私が下ろしている前側の手に、そっとレグスタインが手を添えてくる。


私が、ここに何も残ってないことで落ち込んでいると思って心を慮ってくれるレグなのに、私はあなたの好きな人ってどんな人だろうとばかり考えてしまうの。


いけないことだわ。応援しないといけないのに。


それなのに、その優しく触れてくれるレグの手に、私は縋りたくなるのだった。











明日も2回更新予定です

明日は昼頃と21時10分予定です

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