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死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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59 魔女がいた場所

そんな衝撃を受けている私に、アレンは苛々としたようにため息をついた。


「あのさ、勝手に人の会話の中で落ち込んだりするのはやめてほしいわけ。俺の質問に何も答えてないじゃん。《D》シリーズの道具をなんで持っているのか?その師匠は誰なのか?俺聞いてもいいと思うんだ。だって始祖の血族なんだから」


アレンは、ブスッとした表情で私を睨んだ。


「だって、俺以外はみんな何か知ってる顔だろ?お前が俺を信用しないなら、俺だってお前を信用できないよ」


そう言われて、それもそうかと私は悩み、レグスタインを見る。


「レグ、やっぱり出来るだけ隠さずに生きていきたいの。私を利用するものも現れるだろうけど、この時代で生きるって決めたんだもの。この後アレンと敵対したとしても、知ってもらった方がいいわ」


私は、レグスタインにそう伝えた。


「何があっても、デボラを守れるように動くよ。だから、君のやりたいようにしたらいい」


レグスタインはそう言って、私の手を握る。

その手は少し震えていた。


私はレグに大切にしてもらっているのだわ。


仲間を失うたびに震えていた自分のことを思い出す。



◆◆



「デボラ、左右に分かれて逃げましょう!」


「師匠がいないの!どうしよう!」


「誰かが、ラファも捕まったって!あんたも捕まるわけにいかないでしょ!逃げ切るの」


そう言って、ミレイと箒で左右に分かれる。


魔法使い部隊が、迫ってくる。


容赦なく、背中に攻撃を感じ、防御がそれを弾くたびに稲妻が光る。


私は、角度を変えて、スピードを上げて木々を箒で駆け抜ける。



「師匠が捕まったって本当なの?」


「どこに?どこにいるの?」


「助けにいくから!」



身体中の震えが止まらない。


うわあああぁぁ!


引っかかって、落下する。


だが、そのおかげで追撃の手から自身を隠すことはできた。


それなのに、震えが止まらない……





「デボラ?」


レグスタインが心配そうに顔を覗き込む。


ハッと現実に引き戻される。


あの時の師匠を心配する私と同じぐらい、私のことを心配してくれる人がいるんだわ。


それも、こんな時を超えて……


私は散々レグを困らせたのに……


それなのに、こころが満たされるような安心感が私を包む。


「レグやみんなが私のことを心配してくれるのが嬉しいの。変よね。心配かけちゃダメだって反省しているのに、心配してくれてうれしいなんて……」


私は、震えているレグの手の上に手をのせた。


「心配するに決まってる。デボラがどんなに俺たちをこまらせても、大切な……」



レグは私に優しく語りかける。


その瞬間──


「だ、か、ら、俺のこと無視するな!いちゃいちゃするんじゃねえよ」


そうアレンが再びキレる。


私は、真っ赤になってパッとレグスタインの手を離した。


「違うのよ!自分の昔を思い出して、今はレグやみんなが私を心配してくれることが嬉しかったの。実は私ね、その始祖たちの時代に生きていた魔女なの」


私は、これまでの経緯を全てアレンに伝えた。


アレンは、へっ?という顔をして、俺、騙されてる?と周囲を見るが、周囲の反応から本当だと気づいたらしい。


「え……それ、黒竜の魔法?300年時を止めるってどんな力だよ?すげえな。黒竜……」


「その黒竜に勝ってるデボラはもっと凄いってことだ」


グレンが、アレンの肩を叩いた。


「ええーっ!始祖か、始祖に近い人の弟子かよ。それは、俺、叶うわけないじゃん。というか、デボラが俺の後、総長になったらいいじゃん」


「利用されるのは嫌なの。魔力があることで、私の仲間はみんな命を落としたの。それなのに、今度は手のひらを返したように、魔力があるから素晴らしいと思われるのは嫌なのよ」


私は、アレンを見つめた。


「私は、最後に生き残ったわ。だから、生きたくても、戻りたくてもそれが無理だった人の代わりに、戻りたかった場所に預かった遺品を届けたいだけなの。でも、300年経つと何もかも変わっていて、私がいた集落すらわからないの」


「デボラがいた……集落……」


アレンは少し考えるそぶりをした。


「それ、わかるかもしれないぞ」


「本当!!」


5人も一斉に声を上げる。



「でもさ、ただじゃ教えられないな」


アレンは、指をチッチッと振った。


「えーー!何が欲しいの?そのお布団でよければあげるわ。実はそれ、グリフォンなの。グリフォンは、地上ではあまり出ないでしょう?でも、寝心地には自信があるわ。ね?それと引き換えにどう?」


そう言った瞬間、アレンとグレンの顔が無表情になり、そーっとアレンは布団から出ようとする。


「だ、だめよ。寝てないと、アレンは怪我人なんだから!」


「あ、いや、さすがに総長でもそんな国宝級に寝るのは……いや、布団というかこういう魔物の生態とか、始祖が使ったと思われる失われた魔法を教えてくれ!」


「失われた……魔法?」


うーん、私にとっては誰も失われてない魔法なんだけど、今の時代に伝わってないものはあるのかもしれないわね?


「デボラの話を聞くと300年前の始祖の時代の魔法をたくさん使えるってことだろ?」


「そうね、というより、300年前の魔法しか使えないの。今の時代の生物や魔物はもう一回研究し直さないといけないから」


そういうと、アレンはニンマリ笑い、グレンと手を叩き合う。


なぜ?グレンも一緒??


私は二人の様子を見て、訳がわからなくなる。


だが、アレンには大満足な回答だったらしい。


「交渉成立だ。魔女のいた場所はね、ここ」


けろっとした顔でアレンは指で下を指しながら答える。


「ここ?」


私は聞き返す。


ここって……あっ、もしかして……


「祠?」


「そう、始祖はあちこちに祠を作ったって言ったでしょ。その時に、作った場所は、かつて魔女狩りで捕えられた魔女がいた場所なんだ。魔力のある血筋が残っていた時、その周辺で困ることがあるかもしれないと思ったみたいだね」



ここが……誰かの故郷……


私は、ふらっと立ち上がり、祠の中から外を見た。


道路脇にあるので、馬車が音を立てて通っているのが見える。


ここに魔女たちがいた……


私の知ってる魔女たちもいたのかしら?


「あの……ここにいて処刑された人たちの名前とかわからないかな?」


「だれがどこにいたのか……は、分かるとしたら魔女狩りの時の処刑帳を見れば出身があるからわかるだろうけど……それこそシャルバンポールに隠匿されているよ」


アレンは、困ったように私の顔を見た。


「隠匿?どうして?もう300年も経っているのよ?」


それが見ることができたら、知っている名前と場所を一致させることができるかもしれない。


「始祖は、魔女狩りに反対をして皇帝に反旗を翻したけど、同時に途中までは、魔女狩りを皇帝と共に推進していたからだよ。枢機院を作り上げた人物が、魔力の高い女を積極的に排除していたなんて世間体が悪いだろ」


「……そう……よね。確かに、魔女を追ってきていたのは、皇帝の息のかかった魔法使いだったわ。

始祖って人も、最初は魔女狩りに賛同していたのよね。じゃあ、師匠は?師匠は女よ。私よりも雲泥で強い、魔法使い部隊に紛れ込んでいた……魔女……」


「それは……もう、デボラの中で答えは出てるよな。始祖はとてつもなく強かった。その師匠さんが、始祖を騙してずっと魔法使い部隊に居続けるなんて可能なのか?」


私はしぶしぶ認めたくない気持ちを切り離そうとした。


「師匠は、私に、認識阻害をかけていた。私は女だと思っていたし、みんなにもそう見えた。魔女の仲間だと思っていた。でも……師匠は、始祖で、男で、敵だった……」


私は、それを言葉に紡ぐたびに絶望的な気持ちになっていく。


だが、レグスタインがその気持ちを遮断するようにキッパリと私に伝えてきた。


「……かもしれない、だ。デボラが師匠から愛情を注がれていたことは言うまでもないだろう。

だから、今回、デボラが行方不明になった時に、かつて、デボラの師匠が、デボラが捕まったと知って、どんな気持ちだったか考えたんだ。」


「師匠が……私のいなくなった後……」


私は、早いうちにダンジョンに師匠がいないことは気づいていた。

だから、生きて、脱出することに精一杯で、その時の師匠がどう思っていたかなんて考える余裕もない。



「俺たちは、デボラがいなくなった時、血の気が引く思いだった。夜になると、不安だった。今、デボラに触れることが出来て安堵しているよ。

でも、師匠は、生涯、それからずっと会えない日を過ごしていたんだろう?」


そう言われて、初めて師匠の気持ちに立ってみる。


そうだ。


師匠は、私の強さを信じてくれていた。


だとすれば、私がダンジョンを踏破するか、ダンジョンが消失して今回みたいにここに戻ってくるのを信じて待っていたんじゃないかしら?


「私は黒竜に終わらせてくれとお願いするんじゃなくて、師匠のいるところに帰りたいとお願いしないといけなかった。もし、師匠が始祖だったら、生きていたんだもの……」


師匠も捕まったと思い込んで、戻っても誰もいないし、居場所もないと思っていた。


どんなに待っても、皇帝を排除しても戻らない。

二度と会えない


もしかしたら、ダンジョンの中を調べようとしたかもしれない。


でも、師匠が始祖だったら流石に300階の深さのダンジョンだもの。

止められたわね。


師匠が私たちを欺いていたとしても、私を育て、慈しんでくれたのもまた師匠だ。


「ただ、やっぱり始祖の情報をこれ以上手に入れたかったら、シャルバンポールに行くしかないよね。どうやって中に入るかは悩ましいけど……」


アレンは、ぜんまいの糸がぷつっと切れたように目をこすり始める、


「あ、ごめん。少し眠った方がいいわね。みんな、アレンは酷い目にあってしまったのよ」


私は、アレンが貧民街で暴力を受けた話をみんなにする。


その間に、アレンはうとうとし始めたし、みんなはなぜか私がどんな経路で、どんな体験をしてここに辿り着いたのか知っているようだった。


「なんで、みんなそんなに私の行動を把握してるの?」


私がアレンの手を握りながら、そばで介抱していると、5人はみんなで顔を見合わせてくすくすと笑った。


「それは、デボラが迂闊だからだよね」


満場一致で答えられ、何よ!それ!と私は頬を膨らませるのだった。









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