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死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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58/64

58 全てバレました

「デボラ、この辺にいるのはわかってる。君の魔力を感じ取っているから、いるのはわかってる。俺が言いすぎた。ちゃんと話をしよう。お願いだから、出て来て!」


レグの声だわ!


私、本人すらどこにいるのかわかってないのに、どうやってここまで来たのかしら?

すごすぎるわ


私は目を丸くしつつも、ここまで自分を探しにきてくれたことに胸がいっぱいになる。


ただ……チラッと後ろを見る。

アレンの視線が痛い。


「アレン、ごめんね。そうなの。私はデボラよ」


アレンは、私を睨みつけて黙り込む。


私は、認識阻害を取った。

アレンは驚いた顔をする。


「お前、顔と頭が変わりすぎてない?顔は化粧だとして……頭はどうしたんだよ」


「男の人に見えるかなって……数日、あなたの魔力を切るだけでこんなことになるって思わなかったの。

あなたは、偉い人だから誰もあなたを咎めない。でも、それは良くないことだと私が突っ走ってしまったの」


外で響くレグの悲鳴のような声を聞くと、胸が苦しくなり、ますます、ぎゅっと締め付けられたような気持ちになる。


すぐに飛び出て行きたい。


でも──


私は、深呼吸してアレンを見つめた。


先に、ちゃんとアレンと話をしないといけないわ。


「なんで騙したの?俺を。笑えばよかったじゃん。言わんこっちゃないって」


「笑うなんてとんでもないわ。おかしいのはあなたの周りの大人よ。

あなたを騙したのは、魔法を使うしかなかったから。女の人で魔法が使える人はいないんだよね?私、強いの。だから隠さないといけなかった」


アレンは、ぐっと言いたいことを堪えているように見えた。


自分の弱いところを、一番見られたくない人に見られたのよね。


「アレンが私を拒否しても、私はあなたのそばにいるよ。教えてあげたいことが沢山あるし、すごい魔力量だと思うし」


「レグスタインたちが呼んでるじゃん。仲間のところへ戻ればいいじゃん」


レグたちだけじゃない。5人はずっと叫んでいる。


ごめんね。


でも、私の認識阻害の力の方が大きい。


だから、魔力を感じて探してくれているけど見えないのだ。


「5人にもアレンにしたことで迷惑かけたの。私、あんまり常識をしらなくて」


私は困ったようにアレンに笑いかけた。

アレンも、信じられないような目で私を見る。


「本当だよ。お金も持ってないし、空間バッグなんて迂闊に持ち歩いててさ。おかしいよ。しかも、それだけすごいのに、もうなんの力もない俺のところにいるとか訳わからないし……」


そういいながら、アレンは指先を上に上げる。

恐る恐るその先を見ると──


「へっ?か、鏡じゃないの!」


私はあわあわとどうしようと混乱する。


「やだっ!見るなって言ったのに見たわね!」


「あのさ、見るな、見るなって言われたら、見たくなるのは当たり前でしょ?なんでそんなに大人なのに迂闊なの?」


じろっと軽蔑したような目でアレンは私を睨む。


「すごいんだってのはわかるさ。俺の魔力をデコピンで弾くんだから。でも、こんなのに負けたってのは、悔しすぎる」


そういうと、アレンはポロリと涙をこぼした。


「な、泣かないでよ!」


私は慌てて、アレンの涙を拭おうと、手を当てる。


すると


「グレン!いるのか!!ここにいる迂闊なバカ女をなんとかしてくれ!!」


アレンは大声で叫ぶ。


ギョッとする。


「音は遮断してなかったわ!」


私は慌てて後ろを振り向くと、私を認識できないのに祠を開けるみんながいる。


「ここにいるのか!どこだ!」


グレンの声が、アレンの声に反応する。


「ここです」


私は、おそるおそる私とアレンの認識阻害を解除した。


「デボラ!やっばりアレンと一緒だったのか!」


最初に見えた仲間はレグスタイン。


あれ?こんなにボロボロに……髭まで……目も赤く腫れてる。


「レグ……ごめんなさい。これ以上、みんなに迷惑をかけるわけにいかないと思って家を出たんだけど……そのもっと厄介になってて……」


私は、申し訳なさと、心配してくれた様子が伝わってきて、ボロボロ涙が出てくる。


その様子を見てレグスタインは首を横に張って、私を抱きしめた。


「無事で……デボラが無事でよかった、心配したよ」


いつものレグの匂いとは違う。

汗と汚れの香りがする。


たくさん、私を探してくれたんだわ。


「デボラぁ!このお馬鹿!」


ヘンケルとバインも飛びついて来た。

みんなもだ。


いつもみんな清潔感にあふれているのに、汚れてボロボロの姿で私を探してくれたんだ。


「ごめん、みんな。心配かけるとは思ったんだけど、迷惑かけたくなくて、でももっと迷惑かける事態に陥ってて……」


私が泣きながらそう言うと、アレンのそばに寄ったグレンが、アレンの様子と、布団を見てため息をついた。


「うん、間違いなく悪化してるよね。だから、デボラは俺たちのそばから離れない方がいいと思うよ」


その言葉に、みんなの視線が一斉にアレンの布団に注ぎ込まれる。


「あ、その毛皮……なに?」


「なんか、厚みがおかしいよな?その掛け布団?」


みんなの動揺が伝わって来て、私はしょんぼりする。


「多分、その女の空間バッグから取り出したんじゃない?」


アレンがツンとした顔で、みんなに空間バッグのことを暴露すると、5人の顔が一斉に驚愕の顔に変わる。


「デボラーーーっ!」


はい、布団だけじゃないんです。

魔女ってこともバレて、空間バッグも見られてたんです。


私は頭を抱えた。





「デボラ……これ以上言いたくないけどね、どうしてちょっと考えないの?」


お互いの膝をつけあい正座しあう中で、レグのお説教が始まった。


背中から、いつもの5倍ぐらいの冷気を頑張って押さえ込んでいるのがわかり、ますます落ち込む。


そのくせ、表情は安堵の顔で優しく微笑むから、私もますます申し訳なさが募るのだ。


「考えていて、いつもその時の最善を目指すのだけど、結果がいつも最悪になるの」


私も頭を下げたまま、しゅんして沈黙が走る。


「そういわれちゃうと……それがデボラだもんね」


レグは、少し沈黙して、笑いをこらえている。

納得しているけど、それはそれで釈然としない。


「デボラのプラチナになった理由はわかったよ。あのさ、俺からも色々に聞きたいことがあるんだけどいい?」


アレンは、まだ休まないといけないのに、私たちの話に参加している。


当然だわ。


この中で眠るなんて、図太い私にも無理だわ。


レグスタインからの刺さる冷気に、私はノックアウト寸前だ。


それに、アレンも、布団の中にはいるが、研究魂に火がついたみたい。


グレンとこれはなんの素材かを話し合う方が必死で、全く眠る気配がない。



「まず、俺に飲み物を出してくれた《D》のビーカーと網なんだけど、あれはどこで手に入れたの?」


「うぐっ!際どいところを聞くのね。それは、私の師匠からもらったものなの」



シャルバンポール城の《D》の魔法使い部隊の物をたくさん知っているんだもの。

気づくわよね……


当初の予定通り、私は出所は知らないふりをする。


「デボラ、それは無理なんだ。これは、間違いなく300年前の《D》シリーズで、これを持っていたのは、始祖だけなんだ」


「始祖……だけ?そんなはずないわ。師匠も同じ道具を使っていたもの」


私は、慌てて言い返した。


だが、アレンは首を横に振った。


「《D》シリーズは、現在、始祖のものしか確認されていないし、城から門外不出だ。ただ、始祖はもう一つ《D》の道具はあると言っている。実際、すり鉢だけは始祖の部屋とは別に、過去の皇帝の寝室からも見つかっている」


「それは知ってるわ。博物館で見たもの」


(そして、私のものなのよ!)


「始祖のものではないという判断で、博物館に寄贈したんだ。

もちろん、すり鉢以外の道具はないか多くの人が300年探したよ。でも、どこからも発掘されてない」


アレンは、だからそれをどこで手に入れたのか知りたいと話した。


そんなこと言ったって、300年私が持っていたんだもの……


それに、始祖と師匠と私の3セットないとおかしくなるわ。


見つかってないだけで、まだまだあるんじゃないかしら?



「あの……その、すり鉢も私のものなのよ」


私は、しゅんとして呟く。


ちらっとレグスタインを見ると、迂闊なことを言うと怒られるかと思ったのに、優しく頷いて私の頭を撫でてくれた。


嘘じゃないもの……


私がうつむくと、アレンはうーんと首を傾げた。


「そのすり鉢は、300年前からずっと城で保管されていて、博物館にいったのは、数年前だから、デボラのじゃないよ」


そう言われてしまうと、私のものだと言う過去の話をしなくてはいけなくなる。


これ以上は、私のものとは言えないわ……


その様子を見ていたレグスタインは、さりげなくアレンに質問してくれた。


「確か、すり鉢は皇帝の寝室にあったんだろ?なんで、そんなところにひとつだけあったんだ?話を聞く限り、始祖はかなり信頼した人にもう一つの道具を渡していたと思うんだけどな」


アレンが、うんうんと頷き始める。

どうやら始祖にたいしての誇りだけではなく、グレンと同類で研究肌のようだ。


過去を語り始めると、目がキラキラし始めた。


「表向きにはあまり言えないけど、始祖が、愛した人を殺されたことによる復讐をしたからと言われてるんだ」


「愛する……人?復讐?」


「うん、皇帝は、自分の子に魔力のある男児を欲しがって、多くの女に子供を産ませては、処刑していたんだ。その中で魔力の高い娘を処刑するように見せかけて隠れて育てていたけど、最後にはその娘は見つかり、皇帝に殺されてしまった。その復讐だよ」


その話を聞き、あまりにも自分に似通った状況がありどきっとする。


だが、レグスタインはそんな表情は全く出さない。


「へえ、それで復讐か。毒でも飲ましていたのかな?」


そんな風に淡々と質問する。


すごいわ、レグ!私なんてずっと百面相なのに!


レグスタインはそんな私の顔を見て、ふっと再び笑いをこらえるように肩を震わす。


「それがさ、皇帝を魔法で動けない体にして、精力剤を与え続けて苦しめたと言う逸話が残っているんだ」


アレンは面白そうに笑って話す。


「精力剤……」


10歳の子供が嬉しそうに語る薬じゃないわよ!まったく!


でも、それはまさに私がすり鉢に使っていたものと同じだわ。


みんなも、その話に目が泳ぎ始める。


「元々、皇帝は、魔力のある女を虐げる傾向がある上に、魔力のある子供に固執していたから、精力剤を飲み続けていたらしい。皮肉なもんだよね。本人が望んだ魔法と薬で、最後は興奮状態なのに動けず眠ることもできず廃人同様にしたそうだよ」


その怒りと悲しみの深さがわかるよね。


そう語るアレンに、自分が戦えばよかった、私は強かったのに……そう魔女狩りの時に思った後悔を、その始祖もしたように感じた。


ううん


話を聞けば聞くほど、その娘は私で、始祖が師匠に思えてくる。


「あの……その始祖は女の人だったと言うことはない?認識阻害で、男に見せていたとか……」


ドキドキしながら私はアレンに聞くが、首を横に振られてしまう。


「それはないよ。皇帝と始祖は一卵性の双子で、その証拠に同じ顔である肖像画が残されているんだもの。一卵性なら性別も同じだろう。それに、始祖が女性なら、皇帝が魔女を魔法使い部隊の部隊長にしないよ」

 

「そうね。やっぱり始祖は男性なのね」


始祖と師匠が同一人物だったとしたら、師匠は男性で、私たちの魔女狩りを扇動していた人物ということ?


私はガツンと頭を殴られるような気持ちになった。





明日は2回更新予定です。

朝と21時10分予定です

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