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死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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49/64

49 300年前の魔女からのしつけ

「アレン様、姿が突然消えたと思ったら、こちらで声がするので慌てました。何が不備がございましたでしょうか?」


慌てて、アレンの付き人たちが追いかけてくる。

まだ子供だものね。


気まぐれにいなくなるのはいつもなのだろう。

事前にどこに行くか行って欲しいと付き人たちが伝えている。


「だって、親しい魔法使いの声がしたからさぁ」


アレンが答えている。


「誰が親しいだ。お前たち、子守りするためについてるんだろう?しっかり見張れよ。俺たちのデートの邪魔をしないでくれ」


ふんっと鼻息荒く、グレンが答える。


どうやら、私は1対3の集団デートするモテモテの女の子という設定で行くみたいね。


グレンったら、無理筋じゃない?ソレは……


私はアレンを観察する。


転移して移動したから気配がなかったわけね。

でも、魔力の残滓を残さずに転移するなんて凄いわ。


へぇ、他にはどんな魔法を使うのかしら?


(この時代で、久しぶりに300年前と同じぐらい魔法を当たり前に使える人に出会ったわ)


私はじっとアレンの魔法のスキルに少し関心が出てきた。


展示されたローブは、アレンの先祖のものって言っていたわね?

師匠の子孫の可能性もあるのかしら?


それとも、師匠のローブを誰かが受け継いだのかしら?



そう思って見ると、師匠と似たところは……


目が二つ


同じ金髪



以上──



あれ?それだけ?

300年だし、まだ子供だから、大人の師匠と似ているかどうかと言われても……


「ところで、このローブお前の先祖のものなのか?なんでこんなところに飾ってるんだよ?」


グレンがさりげなくアレンに質問する。


「なに?グレンって服にはそんなに興味ないと思っていたんだけど。これはかなり凝った作りになっていて、いろんな魔法が施されていた跡が残っているんだけど全部解呪されちゃって何もわからないんだよね。ただ、我が家の保管庫から見つかったから先祖のものなんだろうけど……」


「なんだ、先祖って誰のものかわからないのかよ」


肩を落として、グレンがバカにしたようにアレンを挑発する。

すると、真っ赤な顔をしてアレンも反論を始める。


「あのね!このローブは解呪されているけど、高度な魔法が使われていたことは分かっているんだ。そんなのうちの一族以外できるわけないだろ。ただ、ボロボロなんだよ。だから展示するために寄付してやったんだよ」


そういって、アレンはズカズカ展示ラインを超えてローブを剥がす。


その瞬間


ブーブーブー


天井から激しい警報音がして、更に職員が走ってくる音が聞こえる。


「アレン様!何を!」


グレードが悲鳴をあげて叫んでいる。


彼は、展示物に誇りを持っているもの。

先祖のものだとしても、こんな乱暴なことしたらいけないわ


私は、どうしたものかとグレンを見つめる。


「おい、これはアレンの先祖のものだったとしても、寄付した以上お前のものではないだろう?」


「このローブの魔法がどれだけ緻密かをお前たちに見せてやろうと思ったんだろ。こんなの俺の一族以外にできるわけがない」


アレンは、ぐいっと引っ張り、裏側を私たちの方に見せる。


その瞬間、ビリッ──


嫌な音を立てる。


「ほら、グレン見てみろよ。この裏に、魔法陣が描かれてるんだ。これはわざと読めないように壊されているが、中に空間バッグを取り付けたんじゃないかと言われている。ローブにそんな解読不可能なものを組み込む段階で、相当力がある魔法使いが使っていたはずだ。」


ローブを床に引きずり、破れても気にしない。


そばで、グレードが泣き出しそうな顔をしている。


私は、冷静になりため息をついた。


アレンの読みに間違いはない。


ローブの中はいつもふんわり柔らかくて、師匠は空間ポケットをつけていた。

そこにはいろんな隠し道具を入れていた。

そして、時々甘いおやつを入れて出してくれるのだ。


目の前のアレンは、グレンに自慢げに語っている。


「これを応用できれば、暗器を忍ばせることもできるし、格段に戦闘能力が上がると思って、研究させたんだけどさ。結局分からないしこんなボロボロでは、うちの家には似つかわしくないんだよね」


アレンは、師匠のローブを床に投げたまま立ち上がった。


「あーあ、プラチナちゃんが、魔力があって魔法に関心が高いならこのローブをあげちゃうのにな。でも、プラチナちゃんは魔力は弱いって、マージェスター通りでもう噂になってるよ」


アレンは、投げた師匠のローブに目もくれない。

そのため、その上を踏んで歩いているのに、気にもせずに、私の方に向かってくる。


「魔力がないのは残念ですか?」


私は、怒りをこらえて、平静を装い、アレンに聞く。

すると、アレンは大きな声で手を広げた。


「当たり前だよ!魔力を多く持ち、優れた魔法を使えるものは、神から力を与えられ、認められた使者だ

だから、僕はこんな子供だけど、みんなが僕を敬い、僕に跪く。そして、僕はこの力を持って、この国を良くする」


そう叫ぶ声は揺るぎない様子だ。


私は、ぐるっと周囲を見回す。

彼の周りの大人たちは、縮こまり、頭を下げたまま動かない。


グレードは、肩を震わせて涙を流しながらも、ギュッと拳を握りうつむいていた。


「アレン、いい加減にしろ。」


グレンは、アレンの肩をぐいっと持った。


「神とか国とかどうでもいいがな、魔法使いはみんなこんなふうに礼儀知らずで傍若無人と思われたら迷惑なんだよ。このローブは、お前のものではない。ここのものだ。

大切に扱ってくれる人たちに敬意を示せよ!」


いつも純粋にキラキラとした目で魔法を語るグレンが本気で怒っている。


さて、どうしようかしら?


バインとヘンケルの様子を見る。


バインは私を守ろうと前にたち、ヘンケルは、少し私に視線を向けた後、そっと師匠のローブを拾い上げた。


先ほどまではなかった新たな破れがローブに見られ、師匠が傷つけられたような気持ちになり、私も顔が曇る。


「グレードさん、これは、どうやってお直しをするの?」


私も、バインに大丈夫と伝えて、ヘンケルのそばに行き、ローブに触れる。


その柔らかい繊細な生地が懐かしい。

アレンに踏みつけられた足跡を見ても、そのローブに頬ずりしたくなる。


「そうですね……生地が特殊なので……」


グレードは、ポツリとつぶやくように見た。


私は、何の生地だろうと目を閉じる。

かなり軽くて、魔法陣が仕込めるとなると魔力を通過する生地でなければならないはず……


「ペガサスの羽……だけじゃないわね?裏地はそれで紡いだ布だけど、表は違うわ。どちらかというと、かなり頑丈……ワイバーン?でもそのものではないわ。どうやって加工しているのかしら?」


私が唸るようにその生地から使われているものを想像する。

グレンが目を見開き「デボラ……その辺で」と慌てて声をかける。


あっ!


枢機院のアレンの目の前でなんてことを……


だが、アレンは楽しそうに笑いながら声をかける。


「へぇ、プラチナちゃんの特技はその中身を当てることができる知識なんだってね。貧民なのに、どこでそんな高級な素材を知る機会があるの?」


挑戦的な目で、この嘘つきが!と蔑む目で見る。

ペガサス……は確かにかなりレア素材だったわ。


300年前も希少性があり、なおかつ空を飛ぶ気性の荒い馬で、魔女狩りに怯える私たちは手にしたことはない。

師匠が昔、勉強のためにその羽を触らせてくれたぐらいだ。


今の時代から、更にそう言われても仕方ないか?


私は、悔しさからグッと耐える。


「マージェスター通りでも染料の偽物を当てて、活躍したって耳に入ってるから知ってるけど、ここではそんな当てずっぽは通用しない。

たしかにギルドが喜びそうなスキルだけど、ただ知ってるだけならそこで震えてる学芸員と変わらないんじゃない?」


ケラケラ笑いながら、私を指差す。


耐えることは可能だけど……師匠の子孫かもしれないのよね?


ちょっとお仕置きがいるわよね?


こんな子だったら師匠は許さないわよね?


私は、スタスタとアレンに向かって歩く。

大切な師匠のローブになんてことをしてくれるんだか……


「魔力がある人がすごいんですよね?」


「当たり前だろう。何度も言っている。ない奴なんて、その辺で転がっている貧民と同じだ」


私が貧民街出身という設定を間に受けて、知識があってプラチナであっても、魔力がないなら貧民だと、わざと煽っているらしい。


なるほど……


私は、目の前まで詰め寄る。


「デボラ!!だめだっ!」


グレンの叫び声が聞こえるが、ふーっと息を吐く。


「グレン、私はすごく落ち着いているわ」


そう言った瞬間、アレンの額をパシンと指で弾く。


「あなたの良さが魔力だけなら、しばらく魔力のない日々を過ごすのね。今、あなたの魔力を止めたから。

そうそう、私や仲間に何かしようものなら二度とあなたは魔法を使えないわよ」


「な!なんだと!!」


アレンは真っ赤になって、私を攻撃する呪文を唱える。

だが、発現するわけがない。


流れる魔力がないのだから。


デコピンした時に、瞬時に私のアレンを上回る魔力でアレンの中を流れる魔力の通路をデコピンで切ったのだ。


多分、瞬時だから私が魔力を流したことは感じてないはず。

アレンがやったことと同じように、魔力残滓も瞬時に消し去った。



これで、アレンの魔力の流れが自己修復されるのに、しばらくはかかるだろう。


魔力が強いものが弱いものにできる術で、かつて、私もよく悪いことをしたら師匠にやられたものだ。


「プラチナは魔法が使えるのか?」


アレンが叫ぶ。


あら?さすがトップクラス魔法使いね。

もしかして、魔力を感じ取ったかしら?


でも、私は微量の魔力持ちという設定だったわよね。


「魔法なんて使えなくても、魔法を使えなくする手段なんて腐るほどあるって覚えておくことね。だから、私はプラチナカードを手にしてるのよ!」


せっかくだから、ギルド長のカードの力も借りてしまおう。


「はっきり伝えたわよ。魔法がなくても、魔力がなくても、あなたの力を使えなくすることぐらい可能よ。そして、それが許せなくて私や私の周辺に手出ししたら、生涯魔法を使えなくしてやるわ。しばらく自分の魔力の価値について考え直すことね!」


私がそう叫ぶ。


魔力だ!


魔法だ!


それが何よ!


そのせいで私と師匠は離れ離れになったわ。


師匠とも仲間とももう会えない。



「嘘だろ!嘘だ!」


わなわな震えて何度も魔法を使おうとするアレンが、使えないことを悟り、床に崩れ落ちる。


そして、そのアレンを見て、私を捕縛しようとする付き人たちに


「私や仲間に手を出したら、お前たちの主人は二度と魔法を使えなくなるわよ」


そう、睨みつけると付き人たちも動けなくなる。



「ちゃんと反省するのね。反省しないとずっと魔力は復活させないわよ」


そう念押ししておく。


自己修復まで、どのくらいか?

私はすぐ回復したけど、この子の力なら3日ほどかしら?

いいお灸になるわ。


私はグレードの方向を見て、師匠のローブを抱きしめた。


「グレードさん、このローブが修復可能か調べたいのだけど、お金をお支払いしたら預かることは可能かしら?」


グレンが持っている財布がいよいよ陽の目を見る時がきたようだった。














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