表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/67

48 師匠の遺品がそこにある

師匠を疑わなくて済んで良かった。


グレンのおかげね。

杖がただの棒だったと知っても、とても嬉しくなる。


「そう言われてみたら、師匠から杖なしでも魔法を使える練習をしましょうといわれてから、だんだん杖をバッグに入れっぱなしの時間が長くなったのよね。そのうち必要なくなっていた。師匠が私のことを考えてくれた杖だと思ったら、違った愛着が湧くわね」



だとしたら………


「自分の力を信じて──」


「逃げて──」


あの師匠が言っていたことは、私に起こることを予見していたんじゃないかしら?


毒耐性をつけさせたのも、私がそれで、死ぬことがないようにと守ってくれていたのよね。


師匠は、私が捕まったことをいつ知ったのかしら?


慌てた?


助けなきゃと思ってくれた?


それとも、私が捕まった時には、もう師匠も捕えられていたのかしら?


考えたくないけど、師匠が黒幕で、私を売ったのかしら?



「師匠が捕まった」


それを私は誰から聞いたんだろう?


私は、顎に手を当てて目をつむり、記憶を必死に呼び起こす。


だけど、あの魔女狩りで集落が襲われた時に、逃げ回る光景しか頭の中には浮かばなかった。





「今日は、なんだか騒がしいわね?」



歴史博物館は昨日と様子が違う。


昨日は静まり返っていた博物館の奥で人の声して、昨日はいなかった職員も数人出てきて対応している。


私は、レグたちが用意してくれた可愛らしい慣れない革靴で、音を立てないように歩こうとする。


だが、意識すればするほど、博物館の床に響き渡る自身の足音に困っていた。


「デボラ、帰るか?枢機院の奴らかもしれない」


バインがピタッと止まり、声も緊張をはらんで、棘を持つ。

そういえば時々、枢機院の人が出入りすると言っていたわね。


接点は持ちたくないわ。


みんな同じ考えのようで、顔を見合わせてそっと頷き、踵を返そうとする……が……


「最悪。入り口と出口が違うんだった」


ヘンケルが嫌な顔をして、入り口のゲートを見た。

入って、一通りの展示物を回って、違う出口に出る形だ。


「じゃあ、相手が去るまではここで過ごすしかないわね」


私は、できるだけ人の目に触れないようにバインの体の後ろに隠れた。


「大丈夫、普通にしていたら可愛い女の子だ。せっかくだから、このフロアで先ほどの師匠さんの香りを探してみるよ」


ヘンケルが、鼻をスンとすする。


「あるな。こっちだ」


「えっ?もうわかったの?」


すごいわ。

犬並みの嗅覚じゃないの!

しかも、師匠のものが他にも見つかるなんて!


犬のように鼻をあっちの方向にクンクン

こっちの方向にクンクン


なんだったら地面を這い回る勢いで匂いを嗅いでいく。


「昨日はじっくり見なかった方向ね。このコーナーは何?」



壁にずらっと、人型の模型があり、そこにいろんな服が並んでいる。


「歴代の衣服や文化って書いてあるな。人形に当時の服を着せて展示してあるのか?」


バインがへぇーっと言いながら、人形を見ていく。


「正直、このコーナーだけでいいよ。長い説明とか、有名な武将が持った剣とか俺、わからないんだよね」


グレンは、苦笑いをしながら人形展示を見て歩く。


「グレンは、魔法でいっぱいだものね。」


目的がなければ、わたしもグレンと同じだ。


「歴史でいうと戦争か権力闘争が活発になると、魔法が表に出てくるだろ?あれが嫌なんだよ」


グレンが、剣や盾を構えた人形を見てため息をつく。


グレンは魔法が大好きだから、戦いに使いたくないのよね。

私も同じ考えだわ。

だって、魔法は、人を笑顔にするために使うものだもの。


私も無言で、戦場で飛び回る魔法使いの人形を見つめる。


その後は、貴族のドレスや勲章がたくさんついた軍服などあったが、私も3人も全く興味を示さなかった。



その時、ヘンケルが更に鼻をくんっと上げ、私たちに囁く。


「おい、この中に強く匂うものがある。ああ、これだ!」


ヘンケルは、一気に匂いを突き止め、迷わずまっすぐ歩く。


目の前にあるのは、魔法使いのローブだ。


思わず目を見張る


「これは……確かに師匠がいつも着ていた服よ」


私は、驚きで思わず口を両手で押さえた。、


久しぶりに見る師匠の服に胸がいっぱいになる。



「これ、男物だよな?」


魔法使いの正装は、過去とあまり変わらないのでグレンも馴染みがあるらしい。



「触れてはダメなのよね……」


これに身を纏っていた師匠はいない。

師匠とは似ても似つかない人形にそのローブは着せられていた。


それでも思い出の片鱗に出会えて、ヨロヨロとおぼつかない足取りで近づいていく。


どうして、師匠はもういないの?

私はここにいるのに……


これを着て出てきてよ。

すべては夢だったと笑ってよ。


そう服に呼びかけそうになる。


300年前に師匠の身を包んでいた魔法使いのローブ。


残酷にも、私にとってはついこの間まで、このローブを見ていたのに、色は褪せて、生地に傷みが目立っていた。


そのローブに、もう主人はいない。



「これ、男ものだとは知らなかったわ。魔女だとバレると危険だから、男物の服を着て魔法使いのフリをしていたのかしら?背が高い人だったから……でも、女性よ。師匠は胸もあったし、所作が綺麗だったもの」



小さい時には、このローブの中に包んでもらってお昼寝をしたわ。


化粧を落とした師匠の顔は知らないけど、胸をなくせば、男性のフリも出来る人だと思う。

認識阻害の魔法もうまかったし、魅了魔法も使えたはず。


「デボラに魅了はまだ教えないわ。魅了した後の男性の扱いがわからないでしょ。ふふっ、お子様だから、いつか教えてあげる」


そういって、わざとらしく私に投げキッスをしてたわね。

結局、魅了魔法の解除の仕方しか教えてもらってないわ。


師匠、いつかって、必ずあるとは限らないのよ。


会話はいつも未来を見ていたのに、未来に存在するのは私だけ……



「ねえ、デボラ、思い出はつらくない?」


横で、私をじっと見ていたらしく、グレンがぽつりと語る。

そして、心配そうに、眉をへにゃりと下げて、顔を覗き込んだ。


どう声をかけようかという顔だ。

心配させてしまったわ。

私は、大丈夫であることを告げる。


「この服を着ていた師匠を思い出していたの。でも、ここに展示されているってことは……」


やっぱり、師匠は敵方にいたのかしら?

私は、説明文を読んでほしいとグレンに頼む。


「この服は出所については書いてない。300年前の魔法使いの正装と書かれているだけだな」


「そうなの……グレードさんに聞いたら出所がわかるかしら?」


「どうかな?君の師匠が、男物を着て普段から過ごしていたんだとすると、男装してシャルバンポール城の魔法使い部隊に潜入捜査をしていた可能性が高くなる。シャルバンポールのものは、歴史的価値があるから、単純に誰かの所蔵品を買い取った可能性もあるよね」


ヘンケルが、これ以上のヒントはこの服にはなさそうだなとため息をついた。


「師匠はすごく危険な橋を渡っていたのかしら?どうして自分の置かれた状況を相談してくれなかったんだろう?私より雲泥で師匠の方が強いのよ。魔法使いが束になっても勝てたはずなのに……」



私は小さい時に、師匠から杖をもらっている。

その段階で、すでに《D》のマークの入っているのだから、10年以上潜入していることになる。


「《D》のマークから師匠さんのヒントがないか探してみるしかないな。あとは、他の魔女仲間のもので何か故郷のヒントになりそうなものはないか?」


ヘンケルが、わざとらしく鼻をフンフンと音を鳴らす。

その様子が本当に犬みたいで、思わず笑みがこぼれる。


「それが、レグにも相談したんだけど、空間バッグがパンパンで、一度みんなのものを出してみないとヒントすら見つからないって話をしていたの」


「うわぁ、その中身俺見たいかも。」


バインが興味ありげに笑顔になる。


中身を片付ける時に調合もするから、バインの斧の素材になるものも見てみようかしら?


前に付与の話を止められて、ボロボロの斧のままだもんね。


私は、出来ればみんなの装具を直してあげたいと思いながら、歩いていると呼び止める声があった。


「グレン!久しぶりじゃないか!こっちに帰ったなら声をかけろよ」


ドキッ──



先ほどまでの騒がしい足跡が、その声の後ろから追いかけてくる。


私たちはゆっくり振り向く。



「アレン……」



目の前の人物は、魔法使いのローブを被り、私たちのそばに歩いてきた。


「この国の魔法使いの筆頭研究者のアレン、枢機院メンバーだ」


ヘンケルが、こそっと私に耳打ちする。


ええっ!どう見ても、まだ10歳ぐらいの子供じゃないの!


筆頭?


枢機院?


どういうこと!


顔を見られないようにしたいのに、思わず私の方から見入ってしまう。


だけど……この子、いつからいた?

近づくまで気配がしなかったわ


私は、ぞっと背筋に冷たいものが走る。


「グレンがいるんなら、プラチナもいるって思ったんだあ。

へえ、この女の子がプラチナなの?紹介してよ。」


「久しぶりだな。アレン。彼女と俺たちは、大人のデート中だ。お前はお呼びじゃないよ」


グレンが、冷たい目でアレンを見下ろす


あっちいけ!


そんな感じで手で追い払う仕草をグレンがすると、子供らしく頬を膨らませたアレンが、ふんっと怒り出す。


「よく言うよ。俺でもこんな色気のないところをデート場にしないよ。大体、グレンがいくら魔法オタクだからって、僕の先祖のローブで何話すのさ?会話は盛り上がる?無理でしょ?」


アレンは、ローブを指さして、何が面白いんだとぶつぶつ言いながら、目の前の私に笑いかけた。


僕の先祖のローブ………


今なんて言った?

私も、3人も一気に顔が凍りついた。



















明日は2回更新予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ