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死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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22 【レグ視点】5人の後悔

「5、4、3、2、1......行くぞ!」


扉の中から聞こえる苦しそうな人の声が、俺たちは全員気になっていた。


デボラは10分部屋のドアを開けるなと、勝ち筋は見えていると言ったんだ。

それまでは、開けない。


俺は、グッと拳を握り、たた、唇をかみしめていた。


デボラの方が圧倒的に強い。

俺たちが行くことは不要と言ったんだ。

足手纏いになりたくない。


でも、俺たちは、デボラを共に命を賭けるパーティーメンバーにすると決めたんだ。


本当に、強いからって一人で行かせて良かったのか?


俺は、リーダーとして、本当に正しい判断をしたのか?



その迷いを振り切るように、時間が来ると俺は、同時に部屋に飛び込んだ。

彼女から託された薬を握りしめて......


だが──



「なんだ!この部屋は!」


困惑したのは、透明の羽を持った大量の蝶の死骸。

幻惑蝶に似ているが、色が違う。


なんだ?これは!


そして、次に目に入ったのは、その大量な透明な羽の蝶の死骸の中で、血まみれになり、床に倒れているデボラだった。


「デボラ!!」


俺たちは、一斉に叫んで飛び込もうとする。


だが──


俺は、息を吐きだし指示をした。


「グレン、目の前に大量の蝶が死んでる。念の為、みんなが蝶にやられないように防御をかけてくれ!」


「了解」


俺はすぐにそばに行きたい気持ちを一旦抑え、グレンに叫ぶ。


グレンは迷わず杖を取り出した。


「ガルディアシールド」


淡い光が、みんなを包み込む。


冷静になれ!

今度は息を吸いドアの前にいるキリフに叫ぶ。


「キリフ!デボラが危ない!部屋に入れ!」


ユリアとはもう会わないからと、室外で待機していたキリフも、様子がおかしいと、俺が叫ぶと同時に部屋に飛び込んでくる。


「キリフ!回復を展開させろ!」


「で、デボラ!どうして!ああ、わかった」


キリフも、胸に掛かった聖印を持ち、回復魔法陣を展開させ、詠唱準備に入った。


「グレン、この後、お前はデボラから頼まれたことが優先だ」


グレンは頷き、ベッドで横たわるユリアの元に駆けて行く。


「ユリア!ユリア大丈夫か!何が?おい!どうなってるんだ」


ギルド長も困惑した顔で、グレンと共にユリアに駆け寄った。



「デボラ!約束の10分だ。来たぞ!こんなところで、全てを捨てて死ぬ子じゃないだろう?

デボラにはやり残したことがあるんだよな!」


俺は自分に言い聞かせるように、声を上げた。

デボラを抱き上げると、体温の温かさはまだ残っている。


しかし、明らかに瞳孔が開き、手足はだらんとしており、生きていないことがわかるデボラがいた。


「し、死んでる!デボラが死んだ!」


バインが、思わず叫ぶ。


「おい、デボラ!嘘だろ!勝ち筋は分かってんだろ?やらなきゃいけないことがあるんだろ!おい!」


ヘンケルも手が震えている。


「落ち着け!とにかくデボラが言う通り薬を飲ませるぞ」


どう見ても死んでいると思ったが、わずかに目が動き始めた気もした。

俺は、落ち着いたふりをしつつも、薬を持つ手が震えていた。


だが、ふと思い出す。


(そういえば、以前1分ほどなら死ねると言ってなかったか?)


「もしかして、わざと心臓と呼吸を止めた?」


俺は、強く噛み締めた口に指を突っ込み、無理やり空間を開けようとしながら、過去のデボラの話を思い出した。


「あいつ、少しなら死ねるらしいんだ。訳わかんないだろ?でもそう言った。だから、俺はあいつが言う薬をとにかく流し込む。一番に、とにかく薬を入れてくれと頼まれた。こいつが戻るまでに流さないと」


だが、デボラは決して口を開くもんかというように、深く唇を噛み締めている。


「デボラ!開けろ!なんで、そんなに噛み締める?口を開けろ」


口の中に、無理やり指を突っ込み、そのわずかな隙間から薬を流し入れる。

少し入っているのか?

だが、唇から横に流れているだけに見える。


「息しろ!」


俺は、自分の口に薬を少し含み、完全にデボラの口を覆う形で、薬剤を漏らさないようにデボラに送り込む。


飲みこまなくてもいい。とにかく入れ。


少し入れては、デボラの口を俺の口で完全に塞ぎ、自分の口の中の薬液が残らなくなるまで流す。


ンガッ...


「あっ!目が!動いた!」


ヘンケルが叫ぶ


「で、デボラ!残りだ!」


俺は口を離し、残りの薬液を口元に注ぎ込んだ。


その瞬間、



くほっ!くほっ!くほっ!



激しく咳き込む。

蝋人形のようだった肌が、人に戻る。


ぐほっ!!


大きく咳をして、デボラはゆっくり目を開ける。


「くはっ、し、死ぬかと思った!」


肩で息をしながら、酸素を吸い込み


ぐほっ!


床に、最後に吐き出したのは、蝶の亡骸だった。 


それは、床で死んでいる透明の羽の蝶とは違い、少し色がつきつつある。


「幻惑蝶??」


「へへっ、ミッションコンプリートです、これが親玉。ふう、毒も解毒されつつあるし......助かったあ」


へへっ


デボラは、そう俺たちに話しているのに、目の焦点があっていない。

どうやら、周りがはっきり見えていないような感じだ。

空虚に笑いながら、ぼんやり独り言のように会話して、天井を眺めている。


「デボラ!見えるか?俺たちは一緒だ。ここにいる」


「見えてますよ」


そういうが、視線は空を彷徨って、行動と目の動きが一致せず、ワンテンポ遅れた動きを取ろうとする。


「大丈夫、ほらね?」


俺は、デボラが助かった脱力と同時に、必死で体が弱っていることを隠して心配かけまいとするデボラの姿に後悔した。


彼女はまだ、死ねないと言っていた。

でも、死ねないだけで、死にたくないと思っていたのか?


死ななかったから良かった。


でも、ギルド長とキリフの.......いや、俺たちみんなの願いを叶えるためなら、死んでもいいと思ってるからこんな行動に出たのだ。


最初の自問自答──


俺はパーティーのリーダーとして間違えていた。

彼女は強いから、俺たちは足手纏いにならないようにする


なんでそんなことを思った?


彼女一人で戦わなければならない場面なら、身を挺してでもとめるべきだったんだ。


俺たちは、黒竜から助けてもらって、頼まれたからと仲間にしてしまった。

でも彼女は、仲間の願いだから、命をかけたんだ。


「デボラ、ごめん。本当にごめん。」


俺は自分の馬鹿さ加減に呆れて、そして悔しくて目から涙が溢れた。

あの時掴んだ腕を俺は手放した。

その手から離れた感覚が蘇ってくる。


「なんで泣いてるんですか?あれ?レグスタインさん、口に血がついてます」


デボラは、天井からゆっくり俺の方に視線を向けて、緩慢に手を上げて俺の顔に触れようとする。

それを言われ、先ほどの口うつしを思い出して動揺する。


「血?デ、デボラが口を開けないからだ!仕方ない!人命救助だ」


俺はごしごし袖で血を拭き取る。


「あああ!抜けがけだよ!デボラにチューしたんだ!!ひどい!リーダーが抜けがけするなんて!」


バインが、冷静に思い出したように真っ赤になり、俺を指差して「ひどい!」と連呼し始める。


「ちがう!みんなだって見てただろう?指入れて空間作っても開かないし、薬流れるし仕方なかった!断じて不埒な気持ちとか......」


それを聞き、デボラの目の焦点が急にはっきりし始める。


「もしかして、私に口移しで薬を?ダメです!あれは解毒剤です。マイクロカブトという猛毒が私の口にはついていたはずです。

解毒剤を口に含んだとしても、いくらか毒が体に入ったかも!

すぐ追加の解毒剤を......」


そう言って、先ほどまで死んでいたくせに動き出そうとする。


「待て待て!なんだ!その猛毒ってのは!デボラ、本当にあとで叱るからな。とりあえず別室で治療をするぞ」


「だ、だめ!早くレグスタインさんも解毒剤を飲みましょう」


デボラは慌てて、弱々しく空間を──


「だから、別室だ!みんな、デボラを連れ出せ」


ギルド長やユリア殿がいるこの部屋で空間バッグをあけようとするな!


「俺が連れて行こう。」


キリフがデボラを抱き上げる。

そして、ギルド長とユリアの方向を見た。


そのお互いの視線が交わるほんの一瞬だけ、懐かしさと苦しさが織り交ぜになったように、キリフの目が細くなる。


「あ......キ、キリフ」


ユリアが、信じられないような顔でキリフを見る。

そばにいるギルド長は、苦しそうな複雑な表情をしている。


「ユリア、無事に戻ったようで良かった。会って早々だが、仲間の治療が必要なんだ。ジーク、部屋を至急用意してくれ」


キリフは無表情で、告げる。

俺も、ここにずっとキリフとユリアの二人がいない方がいいと感じていた。

二人はもうそれぞれの道をすすんでいる。


だが、キリフに抱き上げられたデボラの意識は、更にはっきりし始め、色々な問題に気づき始めたようだ。


「キリフさん。その床の蝶は全て死んでますけど、それ、寄生蝶なんで......私の治療は後にして確実に焼き殺したいんです。ええと、この部屋、焼いたらダメですよね」


「そ、そうだな.....焼かないでくれるとありがたい」


ギルド長は目を白黒させる。

デボラは、どうしようと思案している。


そして、パッと閃いたように表情が明るくなった。


「とりあえず、吸引瓶にいれて全部保管してしまいましょう!」


そういうと、体を起こして自力で立ちあがろうとした瞬間、ぐらりと体が傾く。


やばい!

デボラは、意識が飛んだことで、今置かれている状況をすっかり忘れている。


そして、また空間バッグを開けようとしているだろう!



再び手が空間を開けようとした瞬間、俺はその手を両手で握りしめた。

もはや、半泣きの懇願だ。


「デボラ......頼むから、俺のいうことを聞いてくれ」












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