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死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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21/64

21 私は強い

部屋に入り、瞬時に自身に分厚い防御魔法を施す。


そーっと、目を細めると、目の前に眠るユリアが見える。

そして、独特の甘い香りが鼻腔をくすぐる。


「幻惑蝶の香りを嗅いで懐かしく感じるなんて馬鹿みたいね。嗅がなくていいなら、嗅ぎたい香りではないのに」


急いで空間バッグを開ける。

そして、みんなの前では出さなかった真っ黒の液体と、ナイフを取り出した。


ユリアは、すでに昏睡状態で、栄養が取れないためにひどく痩せていた。

もう、大きく心臓が鼓動できないのだろう。

酸素の行き渡らない体は、青白く、紫にみえるほどだ。


「かなり、呼吸が苦しいはずなのに胸が動かない。ユニコーンを探して間に合うレベルじゃないわ。」


どうみてもここ数日が山場だ。

やっぱり幻惑蝶の特性を使う方法しかないわね


空間バッグから取り出したナイフで、自分自身を傷つけていく。


1箇所では足りない。

あとで回復魔法で治してもいいし、ポーションで傷ぐらいは治る。


手、顔、足にナイフを滑らせ、ついた傷はどんどん赤い筋になっていき、滴る血液だらけになる。


「幻惑蝶は強い魔力を探し求め寄生先を変える習性がある。それなら、私は強い!ユリアさんより、寄生しがいのある宿主よ!」


ユリアの唇を開かせる。

その唇の先に、私の切った腕から流れ出る血液を落としていく。


ユリアの真っ白な肌、血の気のない唇に、私の落下した真っ赤な血がボトボト落ち始めた。


そして、床に、ユリアから私までたどり着くように血をたくさん垂らしていく。



これは、間違いなくレグスタインさんに叱られちゃうわ



なかなかホラーな部屋になりつつあり、私は苦笑いした。


でも、私を心配してくれる人たちがいる。

その人たちのために、出来ることをしたい。


私の魔法は、初めて自分を守るためから、人を守るための魔法に変わるのだ。


そう思うだけでドキドキする。

やがて、ユリアの口元から──


ハラリ


ハラリ


透明な羽の蝶が舞いはじめた


幻惑蝶は万華鏡のような色なので、まだ魔物になり切る前の成熟していない蝶!寄生蝶だ!


来た!

私は、読み通りの動きにホッとする。

寄生蝶は、寄生させないと死んでくれない。


ハラリ


まだ、色もつかない、完全に魔物になりきれてない寄生蝶が次から次に、次の寄生先にしようと私の魔力に吸い寄せられていく。



この強い魔力が欲しい!


こいつに寄生してやる!



その本能の通り、次から次に.......

寄生主の魔力を養分に、自身の分身を増やしていく働きをしようとする。



ぐぼっ!!



ユリアが苦しみ始める。

どんどん幻惑蝶になりきれない寄生蝶が口の中から出てきて、息が吸えないのだ。


急げ!


早く来いと願う。


ユリアの体に、最初に寄生した女王蝶となる蝶がいる。

そいつを呼び出さないと。


私は一気に、黒い液体「猛毒マイクロカブト」を煮出したものを飲み込む。


そして、先ほどまで自分にかけていた防御魔法を解除した。


ぐほっ!!



今度は私の口から血が流れ、その血の匂い、魔力の匂いに、一斉にユリアの体から私の体へ幻惑蝶の寄生先が変わった。


多くの寄生蝶がスピードが増して私に襲いかかる


幻惑蝶は寄生する宿主の魔力を吸って増殖を繰り返す。

それなら、その魔力となる養分が猛毒であれば!!


もう、防御もない。

私と蝶の間に遮るものはない。


来い!


来い!


私は心の中で叫ぶ。

もう、私も話せる状況ではない。


色のない寄生蝶は、ユリアの体のどこに隠れていたのだという勢いで大きな列をなし、私の傷口から、口元から入り込もうとするが.........


ボトッ


ボトッ



私の体にマイクロカブトの毒が回り始め、私の意識が朦朧とするのと同時に、その毒を含む魔力の血を吸い上げよう、新たに寄生しようとする蝶たちは、吸い上げた瞬間毒にやられ絶命していく。


私の体は、血まみれになっていく。


寄生蝶が全身にまとわりつくが先が、私が絶命して落ちるが先か?

という状況になっていた。



普通なら、その毒は心臓を巡り死んでいる。

助かっているのはかつての師匠から受けた毒耐性の訓練だ。


300年前、魔女は毒殺されることもあった。

だから、師匠は私に小さな時から毒の耐性をつけさせた。


毒を盛られても死んだふりができるように──


だが、今回は魔物である幻惑蝶に寄生させることで殺すのだ。

だから、普通の毒ではなく猛毒を準備した。


私が、耐えられる時間は.......不明


ユリアを幻惑蝶の寄生から切り離し、完全にそれを撲滅できるのには......10分

レグスタインに渡したのは、解毒剤だ。


彼らがこの部屋に入ってくるまでに、終わらせる


私は、朦朧とする目でユリアを見る。


まだ、女王蝶が......出ない!


寄生蝶が思った以上に多く、床にはその屍が落ち続けている。


女王は........まだか?





その時──


ユリアの口から、やや万華鏡の色がつきはじめたようなひとまわり大きな蝶が見えた。



グボオオオッ



激しい水音と同時に一気に私の吐血した口に向かって飛びついてくる。


出てきた!!


それが私の口に吸い込まれるように寄生した瞬間、胸に体に猛烈な痛みを感じ始める。


女王蝶が体の中で毒に暴れている!


逃すものか!!


私は口の中に入っていった女王蝶を体に閉じ込め、唇を固く噛み締めることで出口を塞ぐ。


そして、そのまま震える指で、魔法陣を展開させる。


今、9分



ラスト1分......


女王蝶と寄生蝶を一気に片付ける!



私は光る魔法陣を発動させる。

私が止まれば、寄生したもの全てが止まる。


止まった先は「死」だ!


発動した魔法陣は光り、私に吸収される。


そして──


私の心臓は止まり、呼吸は止まり、私は死んだ。


ストックがあるので、明日は9時10分と21時10分の2回更新します。

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