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死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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20/64

20 10分後に待っている

「デボラ、頼む。キリフがお前に助けを請うぐらい、お前の能力は信頼できるんだろう。ユリアを助けてくれ。」


ギルド長も、キリフの横に並んで私に跪いた。


「い、いやですよ!頭を上げてください」


私は慌てて手を振って、普通にして欲しいと伝えた、

だって、成功するかどうかはわからない。 

期待させて、ダメな可能性もあるし、ステータスを測らなくていいカードがもらえる利点がこっちにもあるんだし......


だが、レグスタインは口を開けて、何かを言っている。


「あ、と、で、は、な、し、が、あ、る」



どっひゃあああああ


あの渋い顔は間違いなく怒っている。

これは、間違いなく叱られる。

よく考えたら、パーティーリーダーの許可をとっていない。


そりゃそうよね。

あんなに私は、レグスタインさんに守ってもらったんだもの。


レグスタインさん、ごめんなさい。

決してあなたを蔑ろにしたわけじゃないの!!


私は、必死に拝むポーズを取る。

それをみて、バインとヘンケル、グレンはくすっと笑っている。


その笑顔に少しだけ救われるわ。


「じゃあ、行きましょうか?」


私は、レグスタインからお小言をもらう前に行動した方が良さそうだと悟った。


多分治療方法を伝えたら、即中止といわれてしまうからだ。

そのぐらいのことをする自覚がある。


「へっ?今から?あの治療薬とか準備とかは?」


「必要ですけど、まあ、ありますから」


(空間バッグの中に...)


キリフとギルド長は、すぐに私が動くとは思わず目を白黒させている。

だが、ユリアの状況は、話を聞く限りいつ最後の時を迎えてもおかしくない気がした。


急ごう


急いで、グレンたちに買ってきてもらった普段着に着替える。


「普段着?あれ?あの外に出る時用の冒険服は?」


グレンは、自分たちの買ってきた普段用の服をわざわざ着ることに驚いている。

レグスタインとキリフがちゃんと冒険者用の服を買ってきてくれているのに、魔法を使う仕事をする上で、わざわざ街の普段着を着るのは違和感があるのだろう。


「アレだと、丈夫すぎて幻惑蝶が私に攻撃できないですからね」


「えっ?攻撃できない方がいいよね」


グレンは、私が何を考えているのかわからなくて困惑している。でも、今日に限っては、攻撃されないといけないのだ。


「幻惑蝶の特性を利用したいんです。」


私はふふっと笑うと、グレンは困惑したような顔をする。





ギルド長は、早速、自分の空飛ぶ絨毯を持ってきて、家まで案内しようとした。


「いえ、あの絨毯は貧乏人には相性が悪くて......馬車か徒歩でいきます」


「徒歩!いやいや、それはダメだ。すぐ、馬の手配をするから」


これから、治療に入るのに、嘔吐したり倒れたら全てが台無しだ。

あの絨毯は、できれば死ぬまで乗りたくない。


「すいません。わがままですが、あれだけは無理」


そんなわけで、ギルド長専用馬車という見るからに、豪華な装飾と彫金で彩られた金色の馬車が家の前に用意される。


「あの......目立ちたくないんですけど」


絨毯も豪華絢爛だったが、どうしてみんな豪華なの?

チカチカして目の毒すぎるわ!


その馬車は、間違いなく金持ちが通るので見てくださいと言わんばかりの豪華馬車だ。


でも......従者はいない。

馬は自動人形らしい。


へぇ、300年経つとすごい進化だわ。

幌馬車は、本物の馬で、ぎゅうぎゅうであんなに揺れるボロボロ馬車なのに、お金持ちは、空飛ぶ絨毯に自動馬車......


どうやら、貧富の差がひどいのは本当みたい


私は、キョロキョロしながら、馬車に乗り込んだ。

中は赤いビロードでふかふかのクッションで、乗るだけでふかっと沈み込む。



「お尻を浮かせて乗らなくてもいいのね」


そう思わず呟いた言葉に


「はは、ケツを上げながら馬車に乗ったのか?それは大変だな」


とギルド長は反応する。


(本当にお尻を5ミリ浮かせて乗ったんだよ!)


そうみんなが心で反応することなんて知らずに......


快適な馬車で揺られること1時間──


やがて、ギルド長の豪華なお屋敷に入っていった。

案内された部屋にはユリアさんが眠っている。

そのドアの前で、みんなが立ち止まる。


「すまない、俺は外で待っている。もう会わないと彼女と約束したから」


ドアの入り口で、キリフはソワソワとし始めて、やがて足が止まった。


「そう......ですね。いや、キリフさんだけではなくて、皆さん入らないでもらっていいですか?幻惑蝶の特性上、治療が完了するまでは入ってほしくないんです。ギルド長さんだって、本当はユリアさんと接するのは危険ですから」


私はキッパリ言った。


「俺も?」


ギルド長は、えっ?という顔をする。


「そうです。少しの傷でもあれば、魔力のあるギルド長さんにも幻惑蝶が攻撃してくる可能性があります。」


「デボラは?大丈夫なのか?」


キリフは動揺を隠せないように聞く。


「私は......仮に攻撃してきても、強いので大丈夫です。あと、レグスタインさん、全てが終わったらこの薬を私に飲ませてください。そうですね,.これから10分後に.....飲まなくても、無理やり全部飲ませてください。それまで絶対部屋を開けないで。幻惑蝶が一匹でも部屋から出たら、私はもう助けられませんから」


「幻惑蝶が出る?ユリア殿の体に幻惑蝶がいるのか?それに、君に、10分後に飲まなくても飲ませろとはどういうことだ?」


レグスタインは、私から、紫色の小瓶を受け取りながら、しげしげとその小瓶を眺め、眉をひそめ、私の腕を掴み、行かせまいとさせる。


その小瓶の液体の色は、自分で言うのもなんだが毒々しい。

だから、余計に嫌な予感がするのかもしれない。



「心臓が魔石化するということは、幻惑蝶に侵食されているということです。体の中で成虫になってはいませんが、孵化が始まっています。

もちろん、防御します。ただ、幻惑蝶が出てきた後、退治できないと困ります。その薬は退治した後に私に必要な薬なんです」


「幻惑蝶が出てくるなら、俺たちも行く!」


レグスタインは、再び私を掴む手に力を入れる。


「ダメです。人が多くなり、蝶が分散すると、短時間で絶滅できません。レグスタインさん、私、やりたいことを残してます。それをするためにプラチナカードをもらうんです。だから、死ぬ気はありません」


私は、自分の行動を止めてくれる腕をそっと外した。

自分が危険な目に遭うからと、かつて止めてくれた人は仲間ですらいない。

死ぬのは自己責任だった。


危険なことはするなと止めてくれる人がいる


それだけで、心がポカポカする。


「デボラ、部屋の外から援護することはないか?」


グレンが、心配そうに声をかける。

同じ魔法使いで、手伝えることを考えてくれるらしい。


「10分は、何があっても、声が聞こえても入らないでください。そして、全てが終わった時、レグスタインさんには私に薬を投与してもらわなければいけません。

だから、グレンさんは、ユリアさんに念の為に薬を飲ませてもらっていいですか?」


私は、そう言ってグレンにひとつの小瓶を渡す。

これは、昔、師匠からもらった万能薬だ。


「幻惑蝶の寄生を止められたら、命は助かります。でも、心臓が魔石のままだったら、その後生きていくのは苦しいですからね。幻惑蝶の治療薬としては使えませんけど、機能の回復薬としては使えますので......ふふっ」


私は、グレンの耳元でそっと薬の名前を囁く。


「え......ってことは、もしかして、万能...やく」


グレンは、真っ青な顔になり、間違っても落とさないようにと両手で大切に抱き抱える。


「それ、一瓶しかない貴重な薬なんで頼みますね」


そう笑って告げると、それをそばで聞いていたヘンケルも真っ青になり、万能薬を持つグレンを更に支えはじめた。


二人して、まじまじと小瓶を見つめている。


「じゃあ、10分後です。きっちり測ってくださいね。」


私は、そう言ってユリアが眠る部屋の扉を開けた。





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