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死にたかった最強魔女は、300年後の世界で仲間の遺品を届けにいく  作者: かんあずき


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11/64

11 300年後の住民になりました

数日後──


レグスタインとキリフが、大きな袋を抱えて帰ってきた。


「ただいま、ああ、デボラ、目覚めたようでよかった。街で、少し甘いお菓子も買ってきたよ。もう食べられるだろうか?」


「やれやれ、女性ものを買うだけで視線が痛いよ」


数日前に着ていた二人の服装と違うわ


私は思わず二人を見て固まった。



レグスタインは、黒い軍服のような服に身を包み、深く帽子を被っている。


キリフは白い神官服に身を包み、足首まであるような丈が長い服に、足元はコツコツと音が鳴るような革靴を履いていた。



知らない人みたい──



清廉な印象だが、ここにいる人たちは富裕層と呼ばれる人たちなのだと、身なりや生活水準から実感せずにはいられない。


こんな裕福な人たちと私は行動を共にしていいのかしら?



不安に押しつぶされそうになる。

おそらく5人は、本来私とは縁がない世界の人たちなんだわ。


私は自分の服の裾をぎゅっと握った。


「すまない、中央に行く時はこの格好が規則なんだ。怖がらせてしまったかな?」


レグスタインが、少し寂しそうに微笑む。


私は、首を、ぶんぶんと横に振るのが精一杯で、思わずグレンのそばに寄ってしまった。


レグスタインは苦笑しつつ、女性用の戦闘服や防具、剣や弓などを壁に立てかけていく。


「新しいパーティーメンバーは女だと言うだけで、周囲がざわついていたよ。レグスタインのファンだろうね」


「新しいパーティーメンバー?」


キリフの声に、私はそう言われて首を傾げた。


「君のことしかいないだろう、デボラ」


キリフは小さな銀色のネームタグをデボラの前に差し出した。


「これは?なんですか?」


私はその小さなネームタグを受け取る。

キラキラ銀色に光るチェーンに取り付けられた銀色の板には、


「デボラ=マッケンジー」


と名前が刻まれていた。


「あまり褒められることではないが、この国は貧富の差が激しい。家も身寄りもなく、どんな顔をしていたのか記憶にないような状態で亡くなる者は多いんだ。300年も経って、変わっていないなんて情けない話だけどね」


カレンもそんなことを話していたが、キリフも貧富の差を憂いている。


魔力があろうとなかろうと、誰もが幸せになると言うのは難しいのかもしれない。


キリフの話に私が頷くと、キリフは話を続ける。


「そのタグに亡くなった者の個別ナンバーがあるだろう。教会の名簿の番号についていた名前を君の名前をこっそり書き換えておいた。これで、君はこの国の国民だったと言う形は作ることができたよ」


「わたしのために!」


私は、思わずぎゅっとネームタグを握りしめた。

冷たく硬い金属の感覚が伝わってくる。


本来の持ち主に申し訳ないと思いつつ、生きていくための居場所ができた安堵が混じり合う。


「これがあれば、ギルド登録も出来るし、ダンジョンで発見したものであれば売買もできるからね」


ドラグラディアスドラゴンの騒動を知らないレグスタインがそう話す言葉に、ヘンケルとバインとグレンは、思わずぶっと噴き出す。


「えっ?何かおかしいことを言った?」


レグスタインは、キョトンとしている。

その3人の反応が私も可笑しくて、思わず笑みが溢れる。


その私の表情を見て、驚いたようにレグスタインはホッとしたように微笑んだ。


「まあいいか。デボラ殿も元気が出たみたいでよかった」







「じゃあ、やっぱりデボラ殿は魔女だったのか。ドラグラディアスドラゴンの肉なんて、貴重なものいただいていいのかな?」


「すごい、口の中でとろけるな。ドラグラディアス、こんなに脂がのってるなんて、ダンジョンでいいもの食べてたんだなあ」


レグスタインとキリフは、魔女だと言うことを聞いてもあまり反応しない。



むしろ──


「ドラグラディアスドラゴンの肉が今日の夕飯です」


とカレンに言われた時の方が盛大に驚き、一口目は肉を「むぐっ」と喉につまらせそうになっていた。


「まだ、大量にありますので毎日でも食べてください」


二人が魔女だと聞いても、強い嫌悪感を示さなかったことにホッとして、私も穀物粥を食べる。


重湯から始まり、粒を増やして、やっと普通のお粥が食べられるようになってきた。

二人のお土産の甘いお菓子は腐らないものだったので、数日後には食べられるようになりそうだ。



「俺たちは、枢機院という各宗派の教祖たちで作る会議に出席していたんだ。ダンジョンの詳細と、消失。そして、黒竜を発見したが、ダンジョン消失の中で消えたと伝えておいた。魔女の話は出ていないから安心したらいい」


キリフからそう言われて私はホッとする。


「みんなお前たちを見てどんな反応だったんだよ?」


ヘンケルが興味津々に聞いている。


「まず、奴らの最初の言葉が「生きていたのか」だった」


それを聞いて、みんな一斉に思わず噴き出す。


「あとは、根掘り葉掘りどんなものを発見したのか聞かれたかな?魔物の素材を出したら、勝手に魔物ボスのものだと思って納得してくれたし、ダンジョンが消失したから黒竜も俺たちが退治したようなものだということになった」


そのレグスタインの言葉に、グレンは嫌な顔をする。


「それは、黒竜に申し訳ないな。俺たち、黒竜に叫ばれただけで気を失ったのに」


「だが、ダンジョンから黒竜由来のものが色々発見されたものもあるのでグレンが解析中だと答えておいた。何か見慣れないものをデボラ殿が出しても、黒竜由来のものだと言っておけば、みんな納得してくれるだろう」


私は、思わずそれを聞いて涙目になる。

私がこの世界でやっていけるように、二人はいろんな嘘を周囲についてくれたのだ。


彼らのような真面目で立場ある人たちが、国の中心にいる人たちに嘘をつく。

それは、どれだけ難しいことなのか容易に想像がついた。


「皆さん、ありがとうございます。あの、これからは私の名前はデボラと呼び捨てにしてください。弓は使ったことがありませんが、色々魔法を付与して、最高の弓にして御恩をお返しします、」


私は、早くみんなのためにパーティーの一員になれる活躍が出来るようにと手を握りしめて、力強く宣言する。


だが──


「ちょっと待った!!まさか!まさかだけど、デボラって付与術まで出来るのか!」


ヘンケルがごくっと息を呑んで聞く。


「えっ?出来ますよね?だって、物理攻撃しか効かない敵をかわそうとするには、使う道具に力を注ぐか物理攻撃が得意な人に注ぐかしかないから......」


「人!!もしかして、人にも付与できるのか?」


「魔女狩りにあった人は、魔女とは限りませんから、人にも魔法を付与して、攻撃力を上げたり防御力を上げたりしますよ.....ね?」



みんなの顔が凍りついているのを見て、思わず私はびくっとしてしまう。


私はまた、言ってはいけないことを伝えてしまったのではないのだろうか?


部屋に少し静寂が走り、重苦しい空気になる。


「デボラ......言いにくいんだが......その...付与術ができる人間は、とても貴重でそれのみを商売にできる能力だ。

そうだな、付与術師が付与した道具は、家が建つぐらいの価値がある」


そう呟くように話すレグスタインの声に、私は再び気を失いそうになった。





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