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ほのぼのしたい異世界生活のススメ  作者: 伊佐若 早葉
目指せ、ギルドでそれなりのランクでそれなりの生活
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折角だから俺はこの銅色の宿を選ぶぜ!

コンバットなにがし。

 とりあえず情報を聞いた結果。


 宿にはランクが5つある。下から銅・銀・金・プラチナ・ダイヤとなっていて、実はコレ、ギルドカードの色とも同じになっている。

 とは言え、別に同じ色の宿しか使えないってワケじゃない。要は『上になるほど凄い』という共通点から、上になればなるほど値段が高いというだけだ。

 だけど、単純に『値段が高い=質が高い』じゃないのは以前説明したとおりなワケで。まぁ装飾が華美で、付いてくる食事が豪勢で…いわゆる『セレブ御用達』みたいなもんだ。金さえあれば誰でも泊まれるのは異世界だろうと同じだっつー事っすな。


 そんなランク付けがされてる中、当然ながら俺らは銅以外の選択肢を捨ててる上で受付さん(リィンさんというらしい)に質の高い銅色宿の情報をお伺いいたしました。




「質の高い銅色宿ですかぁ? そ~うですねぇ……ギルド前に露店通りがあるのはご存知ですかぁ? あの通りを一本裏に入ったところにぃ、『鈍色にびいろ亭』って宿があるんですけどぉ、素材屋さんが道楽でやってるお宿らしくってぇ、ベッドや毛布に関しては銅色一なんですけどぉ……」

「ですけど?」

「……お食事が、ですねぇ……美味しくないんですよぉ……。 あ、一応お向かいさんがお惣菜屋さんなのでぇ、そちらで購入してから持ち込めばいいとは思いますがぁ、それをするとお怒りになられるらしいんですよぉ……。 素材を捌く事に関しては当然一流なのでぇ、生半可な人が怒りを買うとただでは済まなくてぇ……若干敬遠されている感じはありますぅ」




 ……とまぁ、やはり銅色宿だからかと言うべきか、こっちが伸びてればあっちが劣るの典型な宿をご紹介いただいた。

 本業をやってる人間の道楽だからか、お値段は『銅色宿の平均を下回る』良心価格ではあるんだけど……寝床には執着が無くても食には若干のこだわりというかそれなりの矜持がある『和食の国の生まれ』と『俺の食事で舌が肥えてしまった魔獣』のコンビにはちとキツい。


 一時期塩のみの味付けにこだわり過ぎて頑張った結果が、主に生で喰らう食生活だったお嬢様にいらんこだわりを与えてしまったんだろうかとちょっと反省。

 塩って凄いぞ。甘いものをより甘く感じさせたり、味気無いものをさらっと美味くする魔法の結晶だアレは。




「……一応上乗せすれば自炊させてくれるらしいけど、折角だし宿の料理の質そのものを上げてやりたいよなぁ……素材屋の道楽だけど」

「あなたはもっと塩の可能性を後世に残すべきだわ…! 『心を掴むには手料理が一番』ってお母さんも言っていた…!」


 何この塩信者。世の中ってもっと調味料が溢れてるんだけど、それ使うたびにこの娘信仰対象が増えてくのかしら。

 …こういう娘が、マヨネーズ作り出したら途端に何でも使い出すんだろうなぁ。いや別に作ってもいいけど、アレは中毒患者を生み出しかねんからな。


 ……ドレッシング的なものから馴らしていこう。しょっぱなからマヨは危険だな。




「とにもかくにも、どれぐらい美味くないのかってのを知らないと何も始まらんからな。まずはチェックインして夕食をそこで取ろうか」

「あまりにもマズ過ぎたら、宿ごと吹き飛ばすのも吝かではないわ」


 コレご主人逃げた方がいいんじゃないのかなぁ…。





- - - - - - - - - -





 で、お宿に辿り着いて夕食を頂いたワケですが。


「この肉野菜炒めを作ったのは誰かしらぁ!!」

「やっべぇ海原ソラ山先生がお怒りでいらっしゃる」


 肉も食べられる素材の解体をしているからなのか、お食事すらも良心的な価格で提供されたのですが、解体技術は素晴らしいと評される『クセ』に、逆に素材じゃない野菜を含め、とにかく調理方法に関してはビックリするぐらい酷かった。

 油はねを避ける為か極度に水分を抜かれたものや、包丁でたたっ切ってやったぜと言わんばかりに形が雑なもの……そしてなにより、何をどうやったのか分からないレベルで『味がしない』謎の味付け。

 肉に関しては筋切りだったり軽く叩いてあって食べやすいなどが完璧なだけに、驚くくらいもったいない状況にソラ山先生も流石に声を荒げていらっしゃる。


「俺だ俺だ俺だァーッ!!」


 \ジャーン!/とでも銅鑼が鳴っているかの如く堂々と現れたのが、ソラ山先生ご立腹の現況である素材屋兼宿屋のご主人。


「はりきって言うんじゃないわよ! 何なのこの肉以外残念な料理は! 味がしない、火が通ってない、上げればキリが無いぐらい欠点しか見当たらないじゃないのよ! 肉以外!!」


 肉に関しては流石なのは同意するわ。


「肉の下処理はかかさねぇ! お褒めいただき恐悦至極だ!」

「むしろ肉すら出来ていなかったら、この辺り一帯が更地になってたレベルよ! 下処理してるのにどうして肉の味すらも消えてるのよ! やわらかい分物凄く残念でしかないわ!」


 不味かった場合の仕打ちが宿から周辺まで拡大するレベルの話だったのか…。




「こうなってはしょうがないわね……」


怒りを抑えるようにぐっと声色を落ち着かせつつ、ソラ山先生は人差し指を立てて主人に言い放つ。


「……1時間よ。1時間だけ台所を貸しなさい……あなたに本当の料理と言うモノを教えてあげるわ! ユウトが!!」




俺かーいってそりゃそうか、こいつ料理一切出来ないし。









そのくせなんで偉そうなのこの娘。驚きだわ。

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