俺達の宿探しはこれからだ!
紗神悠斗先生の次回作にご期待ください(嘘)
シューゾさんに伝言を頼みつつ、冒険者ギルドがどこにあるか聞いて、先にギルド前へと到着して場所を覚えつつ、付近をウロウロなう。
この作戦…作戦?においてまず重要なのが、『ロバートさんを先にギルドへと入らせる』という事だ。
これはなにより、『知り合いのいない新参者がギルドに入ると、ガラの悪い先輩冒険者に絡まれる』という使い古されたテンプレをぶっ壊す布石になる。特に俺みたいに『冒険者としての体躯が無さそうな』人間だとね。
そんでもってそんなチンピラみたいなのを倒しても、また逆に『倒された』としても、それはそれでめんどくさい事態になる。
前者は勿論、『あのガキ、○○ランクのアイツを倒しやがった…?!』とか『ガキのくせになんてヤツだ…!』とか騒がれて、ガヤガヤしてるとギルマスとか呼ばれて余計めんどくさい事に発展する確率が倍率ドン、更に倍!
後者は最初『戦闘力5…ゴミめ』とか『クッソ雑魚過ぎ草生える』とかで余計絡まれて、そこから強くなったらなったで『アイツいつの間に強くなりやがった?!』とか『なんだあの成長速度は…たまげたなぁ』とかでギルマスが以下同文。
考え過ぎ? いえ、今まで飽食気味になる程テンプレを四方八方から浴びせられたが故の防衛本能です。
ちなみに、ロバートさんへの伝言の詳細はこうだ。
『冒険者ギルドで俺を待ってろ。さもなくばクックック…!
あ、一応設定としては、極東に住んでる俺の親父の知り合いで、王都に来たからギルドで待ち合わせしてるって体で。俺より先にギルドに入ったら、多分『何故こちらへ?』とか聞かれるだろうから、そんな感じの事を伝えておいてくれ。
絶対に強さに関しての話題を出すな。あくまでも冒険者となって活動して一定の評価を得る事が両親からの修行内容らしい、とだけ言っておいてくれ。
そしてコレが重要なんだけど、『手助けは一切しない』と会話のどこかで発してくれ。あんたが来てるだけで十分注目は集めるだろうが、そんなものは一過性だろう。『実力も知らないがまぁ頑張れよ!』ぐらいで颯爽と立ち去ってもらって構わない。
…俺がギルドに入ってから、ギルドの職員が一言でも俺に向かって「お強いんですね」と発したら、その時は俺の全力全開の拳がフッフッフ…!』
あえてどうするかという部分だけぼかす事により、恐怖がマッハとなる。
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付近をウロウロする事数十分。あんまりにも来ないんでそこら辺の露店でソラの髪に似合いそうな髪飾りを物色していると…
土煙が出る程の勢いでギルド目指して突っ込んでくる馬と馬上の人間の姿が!
…そんなにおっかねぇっすかね、俺の伝言って。ロバートさん顔真っ青なんですけど。
というかそんだけ急がれたら逆に色々と不安が湧き上がってくるんですけど。ロバートさんが待たせちゃいけない相手だと思われかねんのですけど。
……こうなったら架空の俺の母親に頭が上がんないって設定も勝手に追加しとくか。息子をよろしくって素敵な笑顔で言われてたねって。
という一幕もありつつ、そこからまた数分ソラの髪飾りを物色して購入してから、のんびりとギルドへと突入をしてやったぜ。
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「お、おおおっ! ユウト君! 久しぶりだね!」
俺の顔が見えた途端、目に見えてほっとした雰囲気をかもし出したぞこのオッサン。これは架空の追加設定が生かされる瞬間ですね。
「あっ、ロバートさん! わざわざすいません、ココまでご足労頂いて」
「いやなに、君のご両親から頼まれているからな!」
「……うちの母さんに頭上がらないですもんね」
ピンポイントに威圧を軽くかけつつ、察しろと言わんばかりの微笑を食らわせてやる。
「…あ、あぁ、流石にあの人には逆らえないからなぁ…ハハッ、ハハハハッ…」
あの人イコール俺ですね、分かります。
「とは言え、ロバートさんもお忙しい立場だって聞いてますから、来てもらった事自体が申し訳ないんですけどね…」
「ん、あぁ気にするな! ココで冒険者の先輩に『ルールを教えてやる』とでも絡まれた日には…私の胃に穴が開きそうだ」
「……なんだ、一応どういう経緯で呼んだかは察してはいたんですね……」
「……以前話を聞いた時から、なんとなくそういう『お約束』に嫌悪感を抱いているように見えていただけだ……当たっててよかったが、その為だけに私を呼ばないでくれないか……?」
「…………」
無言の笑顔って凄いよね。
「ともあれ、確かに私も忙しい身の上だからね。友人の息子だからと無理を言って来てしまっているのも事実だが、せめて冒険者登録するところまでは見届けさせてもらうとしよう」
「ご面倒おかけします」
「ただ見届けるだけだ、別にこれからもバックアップをしようというつもりも無いしな。これからの冒険者生活が順調に行くかどうかも分からないが、まぁご両親からの修行と言う事なら、私はこの先も頑張れよとしか言えんさ」
「ははは…まぁ死なない程度に頑張りますとしか俺も返せないです。まだ若輩者ですからね」
…やっぱりロバートさん、近衛兵団辞めても役者でメシ食ってける逸材なんじゃなかろうか。
「…というワケで、冒険者の登録をお願いしたいのですが」
なんか微笑ましく俺らの話を聞いていた受付のお姉さんに話を振ってみた。
「あ、はぁい。ではこちらの書類にご記入をお願いしまぁす」
書類には大体
・名前
・年齢
・武器
・使用魔法属性
と書く欄があって、その下に『死んでも一切責任は負いません』とさらっと書いてあった。
…まぁ、冒険っていうロマンの塊を勝手に求めてきて、死んでまでギルドに責任とかどうしろって話だし。
とりあえずサラサラっと書き上げる。あと、意外にも空気になってたソラの分も書類を要求して書き上げておいた。 …身分証明ってのはあるに越した事は無い。
「はぁい、書類の方は受理させていただきましたぁ。ではではぁ、こちらのギルドカードの方に血を一滴よろしくおねがいしまぁす」
書類受け取ってからギルカ出てくるのはっやーい!と思ったけど、どうやらまずギルドカードの偽造が出来ないようにまっさらのギルカに個人を登録するんだとか。で、登録後に今処理してる書類と紐付けて、討伐数やらランクやらを管理出来る『世界に一枚だけのギルドカード』の出来上がりなのだとか。
…意外と考えられてるのなーって当時は思ったりもしたんだけど、後々この仕組みの細部について、この仕組みを作った本人から話を聞いた時、あぁ…って納得したのはココだけの話な。
「はい、ではこちらがユウト・サガミさんのギルドカードでぇす。そしてこちらがソラ・サガミさんの分ですねぇ。紛失された場合ぃ、再発行にお金が掛かりますので無くさないでくださいねぇ」
ほんわかした受付のお姉さんから、銅色に輝くギルドカードを賜りました。これで俺も冒険者の一員って事になるんだな…
「うむ、無事にギルドカードも手に入ったようだな。…では私はこれで失礼するぞ。ユウト君とソラ君の冒険者生活に幸あれ、とでも言っておこうか」
「ありがとうございます」
「ではな!」
…どんだけやりきった感が溢れてたのかは知らんけど、すんごい煌びやかなスマイル浮かべて帰るなよ。
周りからは『知り合いとは言え初心者にも優しいとかさすが近衛兵団団長様だぜ!』とかちらほら聞こえるけど、絶対にこの理不尽な呼び出しに対する解放感だけで出てる笑顔だろそれ。
ごめーんね☆
…さて、結果的にロバートさんに言われてた身分証明の確保は出来たワケだけども…
「ところで、王都の中でそこそこ安くて評判の高い宿ってどこにありますか?」
俺達はまだ上り始めたばかりだ…
この『宿探し』って坂をよ!




