異世界テンプレ滞在記
3日振りの門前、後顧の憂い無し。
身体が軽い…こんな気持ちで門前に立てるなんて…!
…ま、実際スキルのせいで本当に軽いと感じるぐらいステが底上げされたせいなんだけどねっていう後日談。
「いざ行かん、王都へ!」
「…3日前は絶望をマスクのように顔にひっつけてたってのに、随分な変わりようよね…」
そんな俺の隣でやれやれといった表情を浮かべて立っているのが、俺のレベリング・ハイに巻き込まれて『人族変化』までホップステップ発射してしまったソラさん(人間形態)。
容姿はそうだなぁ…幸せのブルーバードとかを歌う、まな板とか72とか不名誉な二つ名で呼ばれてる南無なんちゃらプロ所属の歌姫様を、全体的に超進化させたような感じとでも言えばいいのかね?
歌姫様の唯一の欠点であったプロポーションが、同プロ所属のボソンジャンパー顔負けになってしまわれて、目つきの鋭さも若干和らいで…るのか? まぁともかく、苗字の季節がひと月分進んだ感じの雰囲気になったとでも表現すべきだろうか。
魔獣形態の時は崇め奉られるって言ってたけど、人間形態でも十分すぎるくらい目を引きそうなんですが。
そんなワケで、突撃・隣の入都門!
衛兵に団長さんの名前を言えば、事前に入都料を払ってるハズだからすんなり入れる…って言われたんだけど?
ねぇ、すんなりって言われたんだけど?
「貴様…ロバート近衛兵団団長様を『ロバートさん』だとぉ…? 一介の一般人…イケメン…のくせに冗談は顔だけ…声…スタイル…クソォ欠点が見つからんではないか!!」
「クソ…ッ! クソ…ッ! 圧倒的…ッ! 圧倒的イケメンイケボ高身長…ッ! まさに理不尽…ッ!」
「ウホッ♂イイ男じゃないか…! どうだい? 俺のオススメのハッテン場があるんだが、一発だけでも や ら な い か ?」
「あぁ…あの女のゴミを見るような蔑んだ視線…! たまんねぇなぁ…!」
「なんだあの山脈!? いいねぇ~ヤりてぇなぁ~!」
「また君かぁ壊れるなぁ…」
一番最初の衛兵はまだいいとして、鼻とアゴが尖ったヤツとハーフプレートの下から青いツナギを覗かせたヤツ、明らかにSかMかで言えば…M!なヤツ、そして最早欲望に忠実過ぎるヤツと選り取り見取りですね。
誰から殴り倒してしまおうか、なんて考える俺は至って普通じゃないかと思われ。
「あ~ロバート近衛兵団団長殿から入都料を免除していただいていたユウトと言う者ですがって何度も言わせんじゃねぇですよ」
「敬語なんだかそうじゃないんだか分からない語尾になってるわよ…」
最早敬語すら本当は使いたくないでござる。
でもこっちは冒険者ですらない自称田舎者でござる故、断腸の思いで使わねばならぬでござる。
「門前の衛兵の責任者をとっとと出しやがれください」
「…早く冒険者ギルドへ向かいたいのだけれど?」
オラァうちのソラさんが若干ピリピリし出したぞ! どう落とし前つけてくれるんじゃワレオラァ!
「コラァ!! お前達何やってんだ!!」
と、ココで誰かの声が!
「ん? …あっ、衛兵長殿!」
「お前達何サボってんだよ!! そんなんで近衛兵団なんて夢が叶うハズねぇだろ!! 夢は寝て見るんじゃねぇんだ、起きて叶えるもんなんだよ!! Wake up!! And dream!!」
炎の妖精かな?
「ですがシューゾ衛兵長殿、こいつらロバート近衛兵団団長様の名を軽々しく…」
「声が小さいよ!! もっと大きい声で!!」
「シューゾ衛兵長殿! こいつらロバート近衛兵団団長様の名を軽々しく出しております!」
「全っ然気持ち伝わってこない!! もう1回!!」
「シューゾ衛兵長殿!!!」
「もっと出るだろ!!!」
「シューゾ衛兵長殿ォォ!!!!」
「はい死んだ!! 今君の喉死んだよ!!」
爆炎の妖精かな?
「背景でバックドラフト起こしそうなくらい白熱してるとこ悪いんですけど、ロバート団長さんから連絡来てないんですかね? ユウトって人間の入都料を立て替えておくって」
流石に熱血道場始まったら手のつけようもないので、一通りテンプレのセリフを聞き終わってから話しかけてみた。
2mぐらい離れてるのに若干熱気で汗をかきそうなのはココだけの秘密だ。
「やぁ、君がユウト君だね! 僕は第17区衛兵団団長のシューゾ・マッツォーカだ! ロバート先輩から話は通っているよ! 一応部下達にも伝えておいたんだけど、どうやら何かしらの食い違いがあったようだね! 本当に申し訳ない……アハァ~ン……」
「ガックリと言いたいのかため息なのか分かんないですけど、すっげぇ気が抜ける言葉ですねそれ」
もう何から何までこの人は炎の妖精さんの生き写しだね。あの人が二人も存在するとか、何らかの奇跡でタッグでも組もうもんなら星ごと溶解しそう(小並感)。
とはいえ、ようやく話が通じる人が来てくれて安心したのは事実だな。何てこと無い展開のように進めてるけど、あの選り取り見取り集団に3時間も絡まれっぱなしだったからね?俺多分、人生の中でトップ5に入るぐらい耐えたと思うよ。冗談抜きに。
「あいつらにはシューゾブートキャンプでしっかり鍛えなおすから勘弁してくれよ! 本気が、生きる基本なんだって叩き込まないとね!」
「もっと熱くさせてやってください」
「おや? お連れさんがいたんだね! その件については聞いてはいないけど、こちらの不手際のお詫びとしてそちらのお嬢さんの入都料はこちらで支払っておこう!」
「え、えぇ…ありがとう」
さすがのソラさんもこれにはニッコリ(苦笑)ですわ。
「では、王都を楽しんでくれ!! Don't worry! Be happy!!」
王都に入るまでに3時間かぁ…。昼前に門前に来たからまだ太陽はそれなりに高い位置にあるけど…
「宿屋、探すか…。テンプレと熱血で俺疲れたよ…」
「そう、ね…。ニンゲンって何でこんなに色々な種類のタイプがいるのかしら…」
ようやく理解者を得たような気がしました。




