おいでませ王都(王都内に入るとは言っていない)
オヒサシブリデス。
オッス! オラ、紗神悠斗!
とある昼下がりにぼっちで昼飯を買いにコンビニに行った帰り、車に轢かれそうになっている少女を助けたところ、なんと身体が新しくなってしまっていた!
そして何の因果か異世界へとワープ、初日からテンプレというテンプレを味わい尽くした俺は、これまたどういう事か…
(なぁ女神様よ?)
『あ、はい、何か御用でしょうか?』
(レベルがなんか『390』とか未曾有の数字になってんですけどどういう事ですかね?)
はるばる王都の門の前まで辿り着いて、見たくはなかったけどやむなくステータスを見てみたらKO☆NO☆ZA☆MAだ。
原因はおおよそ、俺のスキルである『超成長』と『成長極促進』とかいう壊れに壊れた存在のせいだろうとは思うんだけど、レベルの上限って99ないし精々200なんじゃないの?
この世界は何か? ディスなんちゃらみたいに人類が壊れ性能まで成長出来るのか?
『多分、その肉体が私謹製であるが故のレベルでは無いかと。人類が人類を成す普遍の枠から外れていますから』
(よくそれで人の事をやれ人外だののたまってくれたなテメェ)
降り立った瞬間から既に人外だったんじゃないですかーヤダァァァァァ!
しかも俺の武術やらなんやらは能力値10倍っていう下地があってあの威力になり得てるんだから、人外にしてんのそっちじゃないですか。
やってくれるZE☆
(俺さ、時空間転移とか覚えられたら、いの一番に女神様に説教してやろうかと思います)
『何故?! そもそも武芸者としてあなたはずば抜けすぎているんですよ?! 木製バットを10本束ねてへし折るなんて、あんなものマンガの世界だからこそ出来るフィクションの産物ですよ?!』
(出来たんだからしょうがない)
『いやいやいや! それに「気」だって、常人じゃ運用どころか十全に扱う事すら……いえ、そもそも存在をはっきり理解する事すら不可能に近い幻想ですからね?! あなたの師達はなんて人に技術を教えたんでしょうか!』
……風景に溶け込むかの如く、普通に道場展開してりゃ誰だって教えを乞えるだろ常識的に考えて。
つまり、そもそも女神様が幻想やらフィクションやら表現する技術を、市井に見せびらかしてる方が悪い。
『くっ…、見事な正論に反論の余地がありません…!』
(……)
…それを嬉々として学びに行った本人が一番悪いんだろうけどね! 結果会得してこうなっちゃったワケだし☆
ま、そういうのはどうでもいいんだよね。問題はこっからなのよ。
(…で、『普通の人類』ってのは…レベルの上限とかあんの?)
ハッキリ言ってしまうと、このままだと俺はまたテンプレへのチャンピオンロードを爆走してしまいかねん。
それは何故か?
だって俺、小説とかマンガでよくありがちな『ステータス隠蔽』とか出来ないんですもん。
そして、王都に着いて真っ先に向かおうとしている先が、これまたテンプレを生み出す宝庫と言っても過言では無さ過ぎる『冒険者ギルド』なんですもん。
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あのポンコツ勇者(大草原)を倒した後、激闘を先に繰り広げていた女の子の父親の遺体を出来るだけ綺麗にして馬車に乗せて、肉体的には元気になったとは言え精神的にはキツいであろう母親と女の子、あと盗賊っぽい格好してるくせにやたら言葉遣いやら身のこなしが盗賊っぽくない、結局盗賊じゃなくて騎士団の団長だったとか言い放ったロバートさんと一緒に王都へと向かっていたんだけど…
「…いやしかし、私達でさえ手を焼いたあの勇者を一撃の元に屠るとは…。さぞかし名の通った冒険者なのだろうな」
「旅をしてるって意味合いでは冒険者だけど、旅を始めてまだ1週間も経ってなかったと思うんだぁ…もうテンプレイベントが濃過ぎて日にちの感覚も無いんだぁ…」
「? てん…なんだって?」
「あーはいはい俺のこの苦悩を理解出来る存在がいるとは思えないから流してください」
異世界ってツラいわねぇ…。思わずオネエ言葉使っちゃうぐらいツラいわ…。
「そ、そうか…。しかし…その髪と目の色は遥か極東の地に住まう者達と同じものだと記憶しているのだが…旅を始めてからまだ1週間も経っていない…?」
「あー、知り合いのバカが文献だけを参考にして作ったとか言った『転移魔方陣』とやらに投げ出されて、気づいたらこの地方の静かな湖畔の森の中で寝てました」
という真っ赤なウ☆ソ♪
「て、転移魔方陣だと?! 古の時代に絶えて久しいとされる魔方陣を解読した挙句転移だと?! うーむ、極東の地はあまり情報が多くないとは言え、そこまで卓越した人物がいるとは…!」
あ、ゴメン極東の人達。なんか作り話のせいで過大評価されちゃった。
ふんべろりぃ☆
「…ん? という事は、君は本来冒険者になるべくして旅をしているワケではないんだな?」
「んー…まぁそうなりますね。ただ、特に故郷に残してきた人なんかもいるワケじゃないですし、金は常に魔法空間に入れて保管してたんで、途中あった村で武器や食料も手に入ってますし、冒険者になっても問題は無いですね」
「という事は、冒険者ギルドでギルドカードを発行してもらってないのか?」
「武芸は学んでいましたけど、別に冒険者になるつもりも無かったので」
「うーむ…そうか、それは若干困ったな…」
え? 何々? 冒険者ってギルドカード持ってないと旅も出来ないの?
「…一応聞いておくが、ギルドカード以外に身分を証明できるものは持っているか?」
「持ってません☆」
「清々しい程断言したな…」
あ、前の世界の保険証なら……って肉体ごと粉々になってしまってるやないかーい!
というかあっても一切役に立ちそうに無いです。
「…それほど大きくもない村や町なんかでは特に関係は無いのだが、ギルドを抱える程の町になれば、必然的に人の行き来も増えるしそれに伴って犯罪も増える。それ故、当然この国最大である王都の門前では身分証明の提示をするのが決まりとなっているのだが…持っていないとなると金を払わねばならんぞ?」
あと…と続けて団長さん。
「これは大きい声では言えない、いわば秘匿すべき事柄に当たるのだが、さすがに当事者には黙っているワケにはいくまい」
「何がですか?」
「…今回の勇者討伐、関係者には王家から報奨金を賜る事になっていてな。本来なら成功した暁にはそこの少女達一家と我ら近衛兵士団のメンバーに授けられる事になっていたのだが、今回君の手を十二分に借りる結果となってしまったからな。さすがに事情説明も兼ねて君にも王城へと赴いてもらわねばならんのだが…身分証明も無い、特徴だけは極東のそれと同じという、なんとも説明に困る人物をおいそれと招き入れるワケにはいかんのだ…」
「辞退させてください☆」
「私の首が物理的にも立場的にも飛ぶハメになるから、それは私にも譲れない!」
めんどくせぇ☆
「ハァ……入都料は私が手出しするから、君は早急に冒険者ギルドでギルドカードを発行してもらうといい。そして頼むから、私と共に登城してくれ! 君に関する情報はこちらから上申して緘口令を敷いていただけるようにする! 君は登城して王妃様に謁見し、ただ勇者を倒しましたと、その一言だけを話してあとはじっとしてくれてればいいから!」
「……俺、権力者ってのが一番嫌いなんだけどなぁ……」
世の中、大体は金と権力があれば好き勝手出来るって思える出来事しか、俺の知る限りの権力者ってやってねぇからさ。
しかもそれやってたのが『たかが資産家』。金で権力を買ったような人間。
それが元々金も権力も持った、資産家なんか目じゃないクラスの人間に会え、と?
いや~ちょ~っと厳しいんじゃないですかねぇ…?
「…まずは入都して、ギルドカードを作るところまでは君自身にも益となる事だろうから。そこから先は……可能な限りお願いしたいとしか言いようが無い」
「……王家の人間に関する情報を下さい。それを踏まえた上で判断しますから」
「そ、そうか! 分かった! 登城自体はその少女と母親にもしてもらわねばならないから、しばらく経ってからという事になるだろう! それまでに王家の方々の情報を、ある程度まで提供させてもらおう! あまり踏み込んだ情報は近衛騎士団団長という立場上出来兼ねるがな」
「よろしくお願いしますね」
……あいつらみたく、灰色にも成りようが無い程ドス黒くなければ…多分大丈夫…かもしれんね。
「いやーしかし、君程の武芸者がギルド登録となると、一体どれほどのレベルなのかが気になってしょうがないな! 私はこれでも30後半なのだが、それでも敵わない勇者を屠ってしまうんだ、相当に高いに違いない!」
「……え?」
あかん、既に勇者倒す前でレベルが…もうワイのレベルが90越えとるんや…!
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…って事があってねぇ…。
まぁ団長さんには作り笑いでその先は濁しておいたけど、対人戦前におかしい数字になってたのにその後もっとおかしくならないハズが無いと断言してチェックしたらあーですもん。
近衛騎士団とかいう、確実に騎士団としては上位というかおそらく最上位の、しかも団長と張る人物ですらレベルが30後半。
これは絶望の香りしかしませんね、間違いない。
『通常の人類のレベル上限ですか? 100です』
ヤッベェ。




