衝撃のスクープ! ~勇者様消失事件について関係者が語る知られざる真実とは~
王都の一部の貴族を騒がせた『勇者消失事件』と呼ばれる出来事について、我々が秘密裏にインタビューを行なう事が出来た、事件の関係者であるRさん(仮名)はこう語っている。
「……えぇ、あの事件は色々と規格外な事件でした。召喚された時から相当な力を有していた勇者と、まさか同等に剣戟を繰り広げられる少女がいたという事実もそうなのですが、仮にも勇者と称される相手を、反撃に転じて僅か3秒で『塵も残さず』まさに消失させてしまった人間がいた事に驚きを隠せませんでした」
―とある情報筋では、勇者は逃亡しただとか有力なパトロンの手によって匿われている、などの情報が飛び交っていて正確では無かったのですが、となると勇者様は既にお亡くなりになられていると判断してよろしいのでしょうか?-
「はい、近く王室広報の方から直々に発表があるかと思いますし、私もこの件に関して緘口令を受けておりませんので。ただ、私の名前は伏せていただきたく思います。別段名前を晒す事で何らかの危機に晒される危険性は無いのですが、こちらにも色々と事情がありますので…」
―それはこちらも重々理解しておりますのでご安心ください。ところで、勇者様と同等の剣戟を繰り広げていたという少女ですが、その方はギルドの有力な冒険者か何かなのでしょうか?-
「いえ、驚かれるかもしれませんが、ただの一般人です。私も又聞きになるので正確性は欠くかもしれませんが、どうやら勉学に苦手意識があったようで、武芸を磨こうと自主的に練習していたのだそうです。誰にも師事を仰いでいない一介の少女が……今思い出しても、あの少女は成長しますね。それこそこの星の歴史で『姫騎士』と称された『アルテリア・ヴァンデンシュタイン』のように」
―あ、あの『姫騎士』や『閃光の紅姫』と呼ばれた、アルテリア様のようにですか?! …ふ~む、あなたを以ってしてそこまで言わしめる少女が非常に気になりますが、そちらの方は私共の方でも確認する事が出来ませんでしたからね―
「あの少女に関しては、王室共々完全なる緘口令が敷かれていますから。それに、どちらにせよ少女を特定出来たところで、事の詳細を聞く事は叶わないでしょうから。あ、これ以上はお話出来ませんので」
―…ふむ、残念でならないですが、流石に完全な緘口令が敷かれているとなると私共でも手出しは出来ないですね。了解しました-
「ご理解いただきありがとうございます」
―そして話の核心に入るのですが、勇者様を『消失させた』とはまさに読んで字の如くと捉えてよろしいのでしょうか?-
「そうですね。…ところで、あの場所から二日程離れたところに農村があるのですが、どうやらそこに『紅い血の華』と呼ばれる悪名高い盗賊団が襲撃をした事件があったのはご存知ですか?」
―え?え、えぇ存じています。村の家屋に被害が出たそうですが、何故か『女性が攫われる被害』が無く、かつ盗賊団も壊滅したという話でしたが…まさか!-
「村長殿からお話をお伺い出来たのですが、年恰好が全て一致していました。攫われかけた女性達からも話を聞けたのですが、その盗賊団の首領が同じように『塵も残さず消えた』と証言されています。しかも、私も理解しかねるのですが……十数m離れた場所からパンチを一発繰り出しただけ、との事らしいのです。コレで人が塵も残さず消える理由は私にも分かりかねます……」
―……ちょ、いえ、かなり規格外な方なのですね。こちらの方の情報も完全に規制されているようで一切の確認が取れませんでしたが、そこまで圧倒出来る人間……最早御伽噺に出てきそうな魔族のような、筋骨隆々の大男で強面なイメージしか湧きませんね…。あ、ちなみにこちらの絵が、我々が予想したその方のイメージになるのですが、こちら掲載しても構いませんか?-
「……ふっ、くくっ……! わ、私は一向に構わないと思いますよ…くふっ…!」
―……笑いを堪えているのが非常に癪に触るところではありますが、許可を頂きましたので掲載させていただきます。本日はお時間を割いていただき本当にありがとうございました―
「い、いえ。お役に立てて何よりです」
かくして、その記事が掲載された雑誌は瞬く間に売れ、増版に次ぐ増版となって出版社を大いに潤した。そして王都では後に『紅き少女シリーズ』と呼ばれる伝説の小説が、その出版社から産声を上げる事となる。
無論、その小説は『勇者消失事件』に登場する少女を主人公として描かれた話なのであるが、空想上の『紅き少女』の人気はもちろん、ピンチになると颯爽と現れ、少女と共に困難を打破する『強面の心優しき魔族』も人気となった。
更にこの出版社には、王室を経由して『実際に少女が使っていた剣』が寄贈される事となる。何十合もの剣戟に耐え、刀身に傷が入っているただのスチールソードではあるが、後にこの剣の刀鍛冶師が同出版社の記者の手によって発覚、うれしい悲鳴を上げる事になるのだが、これはまだしばらく未来の話である。
「……おうおう団長さんよぉ、お前さん取材受けてたんだろぉ? Rさん(仮名)から許可を頂いて掲載していますーって記載があんだけどさぁ…コレどういう事なん? 俺の要素一切入ってへんやん。別に身バレしたくないからいいけどさぁ、どうにかならんかったのか?」
「いやホントマジすいません。あまりにも違い過ぎていたので逆に絶対バレないだろうなと思って安易に許可しました。反省しています」
「ん? 今なんでもするって」
「言ってないです!」
雑誌が発売されてから、王都の一角でこのような話がなされていたのはココだけの秘密である。
イメージって凄く大事。




