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夜爪を切る、足元を黒猫が横切る、目の前に死体が横たわる。  作者: マンモスうれピー奈


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「高千穂・ガールズバウト」#3

マンモスうれピー奈と申します!

学業との両立を目指し『毎日投稿』を目標に掲げているので、応援の程よろしくお願いします〜〜!


※本作はカクヨム様にも重複投稿しております。

 幸い私の家は空き地からすぐの場所にあり、およそ三分ほどで辿り着く。消毒液と包帯、絆創膏など目についたものを片っ端から手にして、急いで女の子の下へと帰った。

 息も絶え絶えになって空き地に戻ると。


 女の子が血のこびりついた手で、ワイルドに棒アイスをかじっていた。

「……は?」

 ハァハァと呼吸を繰り返す私に気づいたのか、女の子は「案外早かったですね」と称えてくれる。

「溶けちゃうなと思って、アイスいただいてますよ」

 女の子は悪びれもせず、ひらひらとアイスの空箱を見せびらかす。

 その堂々とした姿に思わず、「あ、うん。ありがとう」「いえいえ」……なんだこのやり取り。

「やっぱり夏はアイスですねー。あっでも個人的にピノはアーモンドよりロイヤルミルクティー派です」

 なんてアソートの内訳に文句を言ってくる。知らんがな。

 患部を見ると血はあらかた止まっているようで、しかしパーカーの袖周りや地面はところどころ赤く汚れていた。その光景を見てつい昨日の殺害現場を思い出してしまうも、傷口を野晒しにしておけないと考え、女の子に歩み寄る。

「アイス食べてるとこ悪いんだけど、手の傷、消毒したいから食べるのやめてもらえる?」

 なんで私がお願いする立場になってるんだとこの場の状況を嘆くも、女の子は意に介することなくペリッと次のアイスの蓋を剥がした。


「これ食べてからでもいいですか?」

 あー、もう好きにしてください。




「ね、君のお名前はなんていうの?」

 脱脂綿をアルコールで濡らしながら、このままでは会話しづらいなと思い名前を聞く。

「高千穂《たかちほ》ですけど」

 意外にも素直に教えてくれたその名は、恐らくは苗字だろうけど若干《じゃっかん》下の名前っぽさもあるな。

「そっか、高千穂ちゃんね」

「お姉さんのお名前はなんですか?」

 さして興味はないけど礼儀として聞き返した、といった態度の高千穂ちゃんに対し、私はどうしよっかなーと頭を悩ませる。

 本名は嫌いだし、昨日できたばかりの偽名を名乗るのも憚《はばか》られるなと迷う。

「私のことは、黒服のお姉ちゃんとでも呼んでくれたらいいよ」

 散々悩んだ結果、着ている服の色にちなんでそう誤魔化してみた。今や女性のホストもいるのだし、女性の黒服がいても特筆するようなことではないだろう。

 高千穂ちゃんはその返答になんだそれ、と眉をしかめるが、「じゃあクロお姉さんって呼びますね」と呼称を定めてくれた。

 ……なんだか最近「クロ」と呼ばれ続けている気がするな。全部自分のせいなんだけどさ。

 会話しながら患部を見遣ると、高千穂ちゃんの傷はどうやら先ほどの野犬に引っ掻かれて出来たようで、周りを拭うと細長い傷が露《あらわ》になった。

 それを優しく清めながらも、年長者として注意はすべきだよなぁと考える。

「高千穂ちゃんさ、どういう事情があるかは知らないけど、動物と戦うのはもうやめにしない? 危ないし、きっと心配する人もいるんじゃないかな」

 投げかけた言葉に彼女はなにか思うところがあるのか、俯きながら「実は……」ぽつりぽつりと事情を話し出す。

「あたし、小学校でいじめられてて。お母さんにもお父さんにも、おじいちゃんおばあちゃんみんなにすごく心配かけちゃって……」

 高千穂ちゃんは消毒していない方の手を握り締め、ぷるぷると拳を震わす。

 私はそれでか、とこれまでの高千穂ちゃんの刺々しい態度にも合点がいった。人を拒絶する姿勢は、学童期の人間関係によって形成されたのかもしれない。

 小学生ともなると高千穂ちゃんのように顔が可愛いというだけで、いじめの標的にされることもあるもんな。

 そうやって彼女の気持ちを慮《おもんばか》っていると、次第に話の様相は変わってきて。

「だからあたし、腕っぷしでどんな生き物にも勝てるように最強を目指してるんです」

「……ん?」

「今は犬にも勝てませんけど、ゆくゆくは熊にも勝って地球上で一番強くなるんです。そしたら、家族ももうあたしのことを心配しなくて済みますよね」

 そりゃあ熊にも勝てるような人間はいじめなんかに屈しないと思うけど、さ。そこに辿り着くまでの過程で親御さんは大いに心配されるんじゃないかなーって。

 ただ理由が理由なだけに、頭ごなしに否定するのは良くないと思えた。

 高千穂ちゃんの手に包帯を巻きながら、強い口調にならないよう意識して自論を話す。

「そっか、その心意気は素敵だと思うけどね。高千穂ちゃんが危ないことをしていると、親御さんは不安になるんじゃないかな? 現に私もこうして、高千穂ちゃんみたいな可愛い女の子が怪我をしてたら心配になるし」

 甘いセリフを発する私に、彼女はキョトンとした顔になり「え、あたし可愛いですか……?」と弱々しく問いかけてくる。

「うん、可愛いよ」

 高千穂ちゃんは「家族以外の誰かに言われたの、初めてです」と僅かに口を緩めるも、すぐに顔をフイっと逸らして。

「そんなこと言われても、絆《ほだ》されませんから!」

 そう高らかに宣言した。

最後まで読んでいただきありがとうございます✨


ツンツンしてる高千穂ちゃん! デロンデロンに融解するアイスのごとく、次回は…!!


これからの展開に興味を持ってくれた方は、ブックマークや⭐️など応援していただけると嬉しいですっ!

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