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第7話 100年ぶりの冒険者登録。〜手違いだらけの手続きと、背後に響く嫌な音〜


「あー……そのなんだ。このボロ布外すと、この街が軽く吹き飛ぶから外せないんだよ、コレ」



その言葉に二の句が継げなかったが、私は捜査官として迅速な対応が求められた。懐から対遺物用魔法陣を取り出し、クーノスさんへと向き直る。



「この魔法陣は羊皮紙課が開発した、対古代魔術用の拘束陣です。効果があるかは使ってみないと分からないですが、建前として貼らせていただいてもいいですか?」



彼は諦めたように大きなため息をついてから、ボロ布に包まれた剣の草臥れた魔法陣の上を触り、それがよく見えるように私へと見せた。



「まぁ、そー言うだろうと思ってたよ。貼るならこの古い魔法陣の上に貼ってくれや。ここなら布の無効化範囲から外れてるはずだからさ」



私は取り出した羊皮紙を無駄のない洗練された動作で滑らせ、指定された箇所へ寸分の狂いもなく一瞬で貼り付けた。

起動の呪文すら省略された素早い設置に、魔法陣が黄色い閃光を放って即座に追従する。



「これで今すぐに爆発ということは無くなったと思うのですが……なんですか、その表情は!?」



「いや、……なんだ。これくらいで封印できていれば俺が100年コイツと共寝することにはならないんだが……と思って」



クーノスさんは胡散臭そうにその魔法陣を睨みつけながら私へと訴える。



「私もこれくらいで完璧に封印出来ているとは思ってません。あの規模の封印術式が施されていた魔剣が、この程度の簡易魔法陣で効力が発揮されるなんて自惚れていませんよ……」



「お嬢さん……」



「この魔法陣で少しでも時間が稼げれば御の字です。流石に、この街が吹き飛ぶのは困ってしまいますからね。それに、そんな怪しげな物、拘束魔法なしで街には入れませんからね!……今まで爆発してないんですから、何か対策があるんですよね?」



私は一瞬重くなった空気を打ち消すために、わざと明るく彼へ話しかける。



「まぁ、俺が持っている限りは基本、問題ない。100年前もそうしてきたわけだし……不安にさせてすまないな、レールカお嬢さん」



「だから、レルカですってば『ー』は要りません。とりあえず、私が身元保証人として街に入りましょう。その後、ギルドで手続きして冒険者登録しちゃいましょうか。流石に100年前の人間を再登録する事は難しいでしょうから」



そう言って私たちは、お荷物になっているモルブさんも連れて入口の検問を抜けてグラナーダへ入った。



クーノスさんは街の様子が珍しいのか、キョロキョロと忙しなく視線を動かしながら私に大人しく着いてきてくれる。



そうこうしているうちに、街で一番の高さの建物──自由都市グラナーダ地区冒険者ギルドが見えてきた。



建物に入った瞬間、一瞬の騒めきが起きたが、私はそれを気にすることなく受付担当へと話しかける。



「エンプリア旧坑道での要救助者一名。それと緊急手配の2名の冒険者情報がないか探してほしい。あと、後ろの彼の冒険者登録をお願い」



「はい、直ちに!」



私はモルブさんを救護班へと引き継ぎ、受付担当へ向き直る。対応してくれたのは、まだ入社したてと思われる若い受付嬢だった。



「身元保証人は私、羊皮紙課のレルカで通します。彼の名前は……」



「あ、ハイ! 羊皮紙課のレルカ様ですね! お連れ様のお名前とお歳、前職をお願いします!」



ハキハキと(少しテンパり気味に)応対する受付嬢に促され、クーノスさんは珍しそうに手元の魔導端末を覗き込みながら口を開く。



「……クーノスだ。年は……まあ、見た目通りってことにしておいてくれ。前職は傭兵だな」



「クーノス様、お歳は不詳、前職は傭兵……と!」



受付嬢は手元の魔導ペンを走らせる。


だが、焦るあまり『ク・ノ・ス』と入力していることには、誰も気づいていない。



「えっと、念のため過去のデータ照会を……あれ? 該当なし……? あの、クーノス様って、以前どこかの支部で登録されたことあります?」



「あぁ、100年くらい前にな」



「ひぇっ!? ひ、百年前ですかぁ!?」



受付嬢の裏返った声が受付ロビーに響き渡り、周りの冒険者たちが一瞬ギョッとしてこちらを振り向く。



「えっ、えっ、100年前のデータを照会するんですか!? クーノスさん、見た目どう見ても人族ですよね……!? 嘘、エルフの血でも入ってる……? ううぅ、どうしよう、100年前の検索コマンドってどうやるんだっけ……っ」



パニックになった受付嬢は、半泣きで必死に画面を叩き、警告音をたびたび鳴り響かせながら端末と格闘し始めた。


その様子を横目に、私はこめかみを押さえてため息をつく。あまりここで時間を食うわけにもいかないのだ。



「……あの、落ち着いてください。100年前の人族なら、仮にデータがあってもとっくに死亡扱いで処理されていて当然です。ですので照会はなしで、新規で登録へ進んでもらえますか?」


私がわざと低く落ち着いた声で諭すと、彼女はハッと息を呑み、尊敬と安堵が入り混じった表情でぱぁっと顔を輝かせた。


「ふぇ? あ、はいっ! そ、そうですよね! 死亡扱いですもんね! 照会スキップして新規登録させていただきます! ありがとうございます、レルカ様……っ!」



私に急かされ、完全に張り切ってテンパった受付嬢は急いで手続きを進める。


パニックのまま画面の『クノス』という致命的な誤字に気づくはずもなく、「決定」ボタンが勢いよく押された。



「は、はいっ! こちらが『クノス』様の冒険者プレートになります! 紛失にはご注意くださいね!」



「おう、サンキュー」



渡された金属プレートをチラッと見たクーノスさんだったが、渡された勢いのままポケットに突っこんでしまった。



「……よし、登録も無事に終わりましたね」



私はモルブさんの経過と出してもらった資料を確認するため、オフィスへと急ごうとしたが、念のためにクーノスさんへと声をかける。



「登録が終わったら羊皮紙課までお願いしても良いですか? 調書をまとめたいので」



「えっ、プレート貰ったし。まだ、なんかあるの!?」



クーノスさんは素っ頓狂な声をあげて私を見るが、その疑問は私が答える前に新人の受付嬢がテンパりながらもハキハキと伝える。



「まだ、冒険者ギルド制度について説明してません。レルカさん、お任せください。私がちゃんと伝えておくので!!」



何故かとても熱い眼差しでこちらを見てくる彼女にいささか疑問を覚えたが、時間がないのでクーノスさんを彼女に任せて私は羊皮紙課へと急ぐ。



「いや、分かるから大丈夫だって!! ちょい待てレールカお嬢さん!!」


背後からクーノスの焦った叫びと、直後に──バチバチッ、と嫌な魔力の放電音が聞こえた気がした。


『……よし、私は何も聞こえていない。あとは任せたぞ、新人ちゃん』


私は背中で冷や汗を流しながら、聞こえないフリをして羊皮紙課へと足を早めるのだった。


第7話をお読みいただきありがとうございました!


新人ちゃんの怒涛のテンパり(とミス)に冷や汗を流しつつ、見事なスルーを決めたレルカでした(笑)

背後からの嫌な音の正体が気になりますが……あとは頼んだぞ、新人ちゃん……!


皆さんは「ここぞという場面でド派手にやらかした(あるいは巻き込まれた)」経験はありますか?

私はライブの開始10分前に見事に転倒し、ペンライトを守る為に受け身を取ったことがあります。ペンラは無事だったのですがそこに集中し過ぎた為、膝が犠牲になりました。あっライブは無事に見れましたよ。


次回の第8話は、【8/18(火)の夜(19:00頃)】に投稿予定です。


続きが気になる方、応援してくださる方は、ぜひページ下部から一言コメント、ブックマーク登録や評価(☆☆☆☆☆)をよろしくお願いいたします!励みになります!


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次回もどうぞよろしくお願いいたします!


※本作は「なろうチアーズプログラム」に参加しています。画面下のボタンから応援チアをいただけると嬉しいです!

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