159話 ラールフット族の集落にて
ラールフット族の集落は本当に不思議だった。
ケルチックさんと同じような人だらけで、声も似ていて区別するのが大変。
ただ、女性ははっきりと分かるのだが、みな身長が低めで言葉が鋭い。
気が強いと言った方があってるのかな。
ララミィよりもう少し背丈が高いくらいだけど、ララミィは終始圧倒されていた。
この集落には、罠を解除したり設置したりする練習場所があったり、衣類や靴などを作る道具が置いてあったりする。
女性も男性も器用にそれらの道具を使ってものづくりをしたり、新しい罠の開発をしたりしている。
俺たちは集落に到着後、罠の勉強をララミィとしている最中。
ララミィはもう……「私、ダメだぁ……ファウの頭はどうなってるの? すごく頭の良い文官だって悩みそうなのに」
「えっと。もっと小さい頃にいっぱい勉強してたからかな?」
と、ごまかしてはみるけどこの内容は多分高校生くらいじゃないと分からない。
ララミィは少し落ち込みやすい性格だから気を付けてあげないと。
「土の力があるから罠についていっぱい勉強しないといけないのに、私よりファウの方が全然理解出来ちゃうなんて……ちょっとずるい」
「あはは……でもララミィには雷の力があるからね。ケルチックさんのメモに、雷は本当ずるい。罠まで起動させなく出来たりするからなって書いてあったよ」
「えへへ……一つくらいファウに自慢できることが欲しいもん。まだ、使っちゃいけないけどね。少しだけアテが出来たの」
「そうなんだ。けど、もうじきここを出発するでしょ? ララミィ本当についてくるんだよね?」
「うん……ミストレートにはちゃんとした冒険者ギルドがあるんだって。ミルルさんが言ってたよ」
そういえば、ミルルさんはちゃっかりついてきていた。
ウラドマージの冒険者ギルドが燃えて無くなってしまったから当然といえば当然なんだけど。
それと、ララミィが自分の頬にキスをしたのを見て物音を立てていたのはマシェリさんじゃなくてミルルさんだった。
口を緩ませてごちそうさまでしたと言われた。
ララミィは王女なんだから変なことを皆さんに吹き込まれないようにしないと!
「ファウ?」
「あ、ううん。なんでもないよ。明日出発だしそろそろ支度をしようか」
「そうだね。私、船に乗るの初めてでちょっと怖いけど楽しみなんだ」
「僕は少し苦手かな。酔いが酷くて……でも今回の船旅は短いから平気だと思う」
「一日もあれば到着するって言ってたもんね。なんていう航路だったかな?」
「導きの航路だよ。海底にあるラギ・アルデの力を強く秘めた草が道を示してくれてるんだって」
「私、早く見たいなぁ。キレイなんだろうなぁ」
「そうだ、ララーの寒さ対策なんかは平気なの?」
「うん。ミストレートなら多分大丈夫だろうってネビウスさんが教えてくれたの。これから行く場所は寒くはないみたい。砂漠の夜の方が冷えるらしいよ?」
「そうなんだ。僕も少しだけ話を聞いたけど……」
ミストレート大陸はウラドマージの南に位置する小さい大陸だ。
エストマージを中央とすると南東に位置する。
これまで自分がこの世界で体験したのは、雪と氷の大陸、オードレート。
温暖で過ごしやすい気候のエストマージ。
砂漠が存在する猛熱の大陸、ウラドマージ。
そして……霧の大陸ミストレート。
まず、目指すのはミストレート大陸最北端にあるというミストレナードという港町だ。
ここで準備を整えてから、南西に進んでいく。
街道が敷設されているのだが、霧が濃く、残念ながら移動は徒歩となる。
ミストレートでの移動は常に視界への注意が必要であり、そして視界が悪いと罠などに引っかかりやすい。
そういったこともあり、数日の間だけここで罠について勉強させてもらったのだ。
明日からいよいよ大陸を渡る船に乗る。
今からでも胸の鼓動は高鳴るばかりだった。
「ファウはミストレートに到着したらまず何がしたいの?」
「まずは冒険者ギルドかな。それとキュルルの装備を買い替えてあげないと。お金は十分あるし、キュルルも空を飛べるようになったから、それを考えた装備選びかな?」
「ふーん。私もララーに何か買ってあげようかな?」
「うん。喜ぶと思うよ。ララーはまず、冒険者試験がいつかを調べないとだね」
「うん。受かるかなぁ……」
「大丈夫、ちゃんと教えるから。それに雷は使えなくても土に火が使えるからね。試験のコツは船旅のときにでも」
「うん! 私、頑張るね」
「無理はし過ぎないようにだよ、ララミィ。ゼフィスさんにも言われたでしょう?」
「あ……うん。頑張り過ぎない、だよね。
「まぁ、それは僕もなんだけどね。あはは……」
こうしてララミィと過ごす時間は楽しいと思う。
それでも彼女が無理をしていると感じることもある。
自分も両親の安否は分からないけど、ララミィだって分からないはずだ。
それに両親との関係性も聞けない。
悲しいことに繋がるようなら考えさせたくはない。
だからみんな、ララミィにそういった話を振ることは無い。
「お、いたいたファウー!」
と、罠の勉強をしていたラギ皮紙をしまっていると、ケルチックさんがやってきた。
「今日中に荷物積んじまいな。早朝に出発するから今日は船の上で寝るらしいぜ。おいらが仕入れ役でついてくけど、ゼフィスやリリスたちとはここでお別れだぜ。つかあいつもう戻っちまっていねーけどな」
「はい。挨拶はもう済ませましたから。ゼフィスさんとは必ず、またどこかでお会いしますから」
「ああ。おいらも送ったら直ぐ戻ってサグドラス・オアシスへ向かわねーとなんだ。本当人使いが荒いよ」
「それだけ信頼してるってことでしょう?」
「まぁな。ファウ、おいらともまた必ず会おうぜ。そん頃にはお前、ララミィと結婚してるかもだけど」
……最後にとても余計なことを言うケルチックさん。
ララミィは耳まで真っ赤です。
「一体どれだけ長く合わないつもりなんですか!」
「はっはっは。まぁいつになるか分からねーけどよ。おいらは多分、この大陸にいるから。んじゃ明日までよろしくな」
ついに出発までもう直ぐ。
ララミィと集落での借宿へと戻り準備をする。
一度さらわれてからというもの、キュルルは更に甘えるようになっていた。
少し離れるだけでも心配そうにしている。
このままでは少し良くないなと思っているが、自分もキュルルをまたさらわれたらどうしようと深く考えるようになった。
キュルルは性格が優しい。
自分が指示をしないと誰かを攻撃したり、どう動いたらいいかという判断もはっきりとは出来ていないと思う。
そして何より……俺自身を優先させ過ぎているのが気がかりだ。
竜は、もっとたくましく賢い生物だと思っている。
こうなってしまったのはきっと、自分の影響を強く受けてしまったからじゃないだろうか。
だから……「キュルル、船の上で少し特訓をしよう」
「キュー?」
「僕たち、もっと自分たちの身を守れるようにならないとダメだと思うんだ」
「キュー……キュキュー!」
うーん。遊ぶのと勘違いしている気がする。
キュルルもまだまだ子供なんだよね……。
いよいよ次回160話で第四章が終了となります。
竜トモさんも気付いたらなかなかの文字数までいってましたね。
いつも通り第四章終了から第五章までは少々お時間を頂く予定です。
新たな大陸ミストレート。そのわずかな部分だけを公表いたしました。
この大陸の構想図は出来上がっていて、後はどのような楽しいコンテンツをおりまぜていくのか、だと思っています。
まだまだプロ作家としてデビューにいたってはおりませんが、応援して頂ける方も少しずつ増えてきていて大変嬉しいです。引き続き面白い作品を提供できるようがんばりますー!




