第160話 霧深き洋上
あれぇ? なろうさんで竜ともさん160話目が投稿されてませんでした。
されてませんでした。
大事なので二回言いました。されていませんでした。
作者はすでに土下座姿勢です。
<(_ _)>
ツファル族の集落から船へ乗り、出発してから既に一日が経過していた。
旅立ちの日はとても多くのことを考えさせられた。
自分が生まれ育ったオードレート大陸は世界地図でいえば一番最北西にあたる場所。
そして自分が向かっている場所は最南東に位置する。
これが地球だったら東に進んで北上すればオードレートに着くんじゃ? なんて思うけど、そうはいかないのだろう。
以前オードレート大陸について話を聞いた限りでは、船で直接向かうのが厳しいとのことだった。
ミストレートからオードレートへ戻るには、西へ西へと進み、スレンビーの足跡という横長の大陸を目指さねばならない。
ただ……横にいるララミィも心配そうだ。
「霧がすごいね。まだ大陸が見えていないのに」
「そうだね、ずっとこんな調子じゃ視界が悪くて大変そう」
「何言ってるんだいファウ。あの大陸の霧はこんなもんじゃないよ」
「もっと酷いんですか!? えっと、マシェリさん……?」
「あはは、そっちにいるのは私だよファウ」
「あれ、ティオンさん?」
「おい、うるせえぞガキ共」
「あんたはもちっと丁寧なしゃべり方が出来ないもんかね」
「けっ。女じゃなく男みてえなしゃべり方するお前に言われたかねえな」
「本ッ当にこの人ついて来たんだね。先が思いやられるわ」
「あはは……でも頼りになります。ドラグは強いですから」
「でも怪我が治っていないんでしょう? 無理について来なくてもよかったんじゃないのかな?」
「ララミィ。こいつはね……」
「おい、それ以上余計なこと言うんじゃねえ」
そうなんだよね、ドラグのことは随分分かってきた。
干渉されたりするのは嫌い。
無口だし、粗暴だ。
でも悪い奴じゃないんだと思う。
過去にトラウマがあって、それで誰も信用していないのが一つ。
後はスミグニ族っていう部族の特徴というか気質。
プライドが高いっていえばいいのかな。
ドラグは生まれ持った才能があるんだと思う。
戦う力、行動力、強い意志。
これらは磨けば手に入ることもあるけど、生まれたときからの資質が大きい。
自分がもしドラグと同じ年齢になったとき、あれだけ怪我をして休まずに大陸を渡ることが出来るのだろうか。
「おい、酒はよ」
「あんたまだ飲むつもりかい? 治療に差し支えるから控えなよ」
「ふん。飲んでる方が早くなおるんだよ。船倉探してくらぁ」
「……うーん、やっぱりただの酒好きでダメな人なのかなぁ」
と、最近は割と飲んだくれてるだけな気がする。
お酒もめっぽう強い。
将来は……ドラグみたいになっちゃだめだとは思う。
そう考えていたら、深い霧もあって手探りで近づいて来たマシェリさんに肩をつかまれた。
「ファウ見っけ。キュルルの特訓はどうだったんだい?」
「ええと、飛んで逃げさせる練習をしてみたんです。それで気付いたんですけどね」
「飛んで逃げる練習? そりゃまた随分と面白そうだね」
「マールさん。それがそうでもなかったんですよ。キュルルちゃんお利口なのにファウにべったりなんです」
「あはは、さすがはララミィのライバルなだけあるね」
「もう! からかわないで下さいよ!」
「キュルルは指示をすると羽ばたいて飛び上がるんですけど、遠くには行かなくて。やっぱり飛ぶのが怖いんですかね?」
「かもしれないね。本来なら母竜と一緒に空を飛ぶだろうし。高く羽ばたいて落ちても母竜が支えるだろう?」
「ですよね……どうしたらいいんだろう」
「遊びで覚えさせるのはどう? っと全然見えない。キュルルちゃんはどこかなー?」
「ティオン。あんまりうろつくと船から落ちるよ。キュルルはここだ」
「わっ!? 違いますよ、それ僕のお腹です! わざとやってますねマシェリさん!」
思い切りお腹をむにゅっとつかまれた。
でもあんまり肉が無い。
まだ十歳の体だし、痩せてるし、筋肉も少ない。
もっと鍛えないとだなぁ。
「キュー?」
「キュルルちゃんは私の足元でした。白い竜だから霧の中だと本当に見えないね。何か工夫が必要かも」
「うーん。ミストレートに到着したらキュルルの装備を買おうと思ってるんですけど、黒色の装備なんて売ってます?」
「あるんじゃない? でも霧の中なら黒色は止めた方がいいかな」
「どうしてですか?」
「夜になったら分かると思うけど、もっと見えないから。黄色か赤色がいいと思うよ。ほら、私のここ見えるでしょ?」
「えっとティオンさんの……あ、本当だ、よく見えま……」
「ちょ、ティオンさん! ファウに何見せてるんですか! ファウ、見ちゃダメーーー!」
ん? 何を見せられたんだろう? ティオンさんの近くにいたのはララミィだけど。
ここからじゃ色とぼんやりとした逆三角形っぽい形しか分からなかった。
「いいじゃない子供なんだし」
「全然よくありません! はしたないです! ファ、ファウ? よく見えた……?」
「ううん、全然。色とぼんやりとした形しか。カバンの飾りですか?」
「ヒ、ミ、ツ。女はこういう遊び案外好きなのよねー」
「私には絶対真似出来ません……」
「あはは、王女様がやったら大事だものね」
こんな話をしながらも船は着々と進んでいた。
操縦してくれているのはケルチックさん。
この霧でも迷わず進めるのは海底に秘密があるという。
期待していたけど全然見えないんだよね。
ちなみに船で読もうとしていたネビウス先生の書類も見えないし、勉強も出来そうにない。
ここで暮らしている人たちは大変なんだろうな。
やっぱりエストマージのような気候が一番日本っぽかったから、ああいうところでみんな暮らしたいんじゃないのかな?
って思ってはみたものの、住めば都かな。
エストマージはいいところだったけど、刺激が少ないというか、なんというか。
安定した生活を人は望むけど、実際は刺激を求めるのが生物だって聞いたことがある。
それに自分も、また新たな旅立ちに胸が高鳴っていた。
「おーーーい! そろそろ到着すっぞーーー!」
「ケルチックさんの声だ。 はーい! 降りる支度しますねーー!」
遠くから聞きなれたケルチックさんの声。
ケルチックさんは港に着いたらお別れだ。
罠について随分教えてもらったけど、頼れる罠師がそばにいなくなるのは不安だ。
ミストレート大陸についてはケルチックさんから多少話は聞けたが、どんな国があるのかとか、どういった特色がある場所なのかはあまり聞けてはいない。
ただ分かることは、本当に霧が深くて視界が悪く湿気もすごいということ。
港に到着したらまずは宿。
そこから西へ向かう手段を確保しないといけない。
それに冒険者ギルドも寄って、ララミィの試験受講についても考えないといけない。
「大陸に着いたらやることが多いよ、キュルル」
「キュー!」
「私、本当に船で違う大陸に辿り着くんだぁ……思っていたのと少し違う視界だけど楽しみ!」
「怖くはないの?」
「うん、だって……私には王子様がいるから。ちゃんと私を冒険者にしてね?」
そう約束したのはまだ最近のこと。
自分はララミィを冒険者に。
そして……「うん。ララミィが強く生きていけるように。僕ももっと強くなるから」




