表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第四章 ウラドマージ大陸に別れを告げて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/169

第157話 先生へのお礼とララミィの適性検査

 自分は丸五日間も寝込んでいたようだ。

 その間、世話の大半はマシェリさんとティオンさん、そしてリリスミンさんがやってくれていた。

 自分が倒れて直ぐに解毒処理を施し、そのまま担いでモグラへと戻った後、雄姿を募って俺の腕輪を外し、キュルルを奪還しに行ってくれたのがドラグたち。

 何から何まで世話になりっぱなしだったのが申し訳なく思う。

 いつか必ず恩返しをしなければならない。

 そして、話を聞く限りでも、この世界の毒物の恐ろしさを知った。

 自分はこれから竜の医者になるため、多くのことを学ばねばならない。

 その中には当然、即効性のある毒物や、竜にとって害となるものまでも調べる必要がある。

 しかし、どうしても図書館に縁が無い。

 

「ファウ。起きてる?」


 と、寝ている俺を訪れたのはティオンさん。

 ティオンさんも火傷を負い、怪我をしている。

 だが、ネビウス先生ほどではないという。

 ネビウス先生は別の荷車で共に南下している最中だ。

 現在どのあたりまで来ているのかは分からないけど、もう起き上がれそうだ。


「まだ無理しなくていいよ。本当に死んじゃうところだったんだから」

「ずっと寝てたら逆に死んじゃいそうですよ。キュルルの餌やりだけは僕がやらないと……痛つつ。しかし本当に痛みますね」

「そういう種類の毒だからね。盗賊が好んで使うのは、苦痛を与えて情報を聞き出す類の毒。楽にしてやるから話せ……ってね。おー怖い怖い」

「全くです。ほんの少しかすっただけなのに」

「投てき物って大半がそうなの。風術が強ければ風で防げるから相性はいいんだけど。炎は逆にダメね。火の勢いが強くなるばかりだから相性が悪い」

「そっか、風で……僕にはまだ無理かなぁ」

「それはそうよ。これでも私、元宮廷風術師なのよ? でも、あなたならきっと違う方法で強くなれる。ファウ、本当、立派になったね。いかだで流されてた頃が懐かしい。でも、まだ可愛いファウでいてね?」

「可愛いは止めて下さい。僕はもう、十歳の男の子ですよ?」

「ふふふ、そうだった。今荷車を止めて休憩に入ったところだけど、ネビウスさんが話をしたいみたい。連れて来てもいいかな? しばらくしたらララミィちゃんも。二人とも、すっかり恋人みたいね?」

「もう! からかわないで下さい!」

「うふふ。それじゃちょっと待っててね」


 絶対楽しんで言ってる。恥ずかしい……。

 ララミィは王女様なのに。

 そう、ララミィは唯一の……生き残りの王女様だ。

 本当は自分なんかが気安く話していい相手じゃないんだよね。

 そして、しばらくしてネビウス先生が入って来た。


「ふう。やれやれなのだよ。ファウ、お互い大変であったな」

「ネビウス先……まだ足が」

「うむ。この通り歩くのは難しい。そこでな。私はラールフット族の集落で研究所を設けて、日々氷のラギ・アルデを研究するつもりだ。旅はそこまでとなってしまう。大人としての責務が果たせぬこと、どうか許して欲しい」

「先生……いえ、生きていてくれてよかったです。有難うございます」

「うむ。さてファウよ。私はそのような身の振り方を話しに来たわけではない。ファウが持つ氷の竜角のこと、それからキュルルのことについてまとめた資料を渡しに来たのだ。ここまでの旅の間に綴ったものだ。時間があるときにゆっくりと読んでくれたまえよ」

「いいんですか? 紙は貴重なのに」

「構わん。ファウの力になれることがもう、これくらいしか残ってないのだ。私の代わりになるかは分からないが、きっとマールがファウを助けてくれるだろう」

「はい……ネビウス先生。大変お世話になりました。僕、帰郷して落ち着いたら必ず、先生の下へ!」

「はっはっは。子供がそのようなことを気にする必要はないが、またいつかファウに会うこともある。そう願っている。ただし無茶はし過ぎぬよう。君のことを深く知る者は少ない。今後もアレのことは注意して話すように。いいね」

「はい」


 そうだった。自分が転生者であること。

 それを知っている唯一の人がこの人だ。

 この世界に生まれて、初めて心の底から信用した大人。

 理知的で落ち着いていて、優しい先生だった。

 先生の足は……もう治らないんじゃないだろうか。

 それに先生は、一緒に逃げるために大切な人を……。


「ファウ。暗い顔をするな。私はファウの元気な顔が好きであったのだよ。旅先までまだ時間はある。その間は出来るだけ、元気な顔を見せてくれないか」

「はい……はい。先生、そうします。僕、頑張ってちゃんと、故郷に帰りますから」

「ああ、約束だ。さて本日はもう一つ、スーララ姫の適性検査であったな。道具を用意してきた。どうだ、懐かしいだろう?」

「これはにかわですね。本当に懐かしいです」

「どうだね、作り方は覚えているか?」

「はい。膠を水に数日浸して加熱。それから冷却し完成した固形物を粉末に。適量を皿に乗せ術を唱える、ですね?」

「その通り。さすがはファウ。物覚えが非常に良い。当然今回も完成品があるのだよ」

「さすがはネビウス先生です。用意が良すぎますよ」

「はっはっは。私は研究者だからね。この手のものは欠かさずもっておるのだよ。すまないが粉末状にしてもらえるかね?」


 と、渡された膠は少し大きめだった。

 前はこれほど使わなかった気がするけど、違うことにも使うのかな? 


「ファウ。以前やらなかった適性検査がある。君は火の適性があると判断し、適性検査を飛ばした。ここで今一度やってみてはくれないか」

「そういえばそうでした」

「スーララ姫が来る前にやってしまおう。君のを見たら気を落としてしまうかもしれんから」

「えっ? それはどういう……やってみますけど」


 適性検査は道具さえあれば簡単に出来る。

 皿の上に乗せた粉末に向け、詠唱をすればいい。

 

「ガルンヘルア」

「……やはりか」

「色が……白い?」

「ファウよ。君は炎に愛され、炎の祝福を受けている。この世界でも数人しかいない炎の使い手である。しかしこれは極めて珍しい」

「炎に、愛される……」

「炎は氷を溶かす。氷は風をせき止め、風は土を削り取る。土は水を吸収し、水は炎を消す。この純通りの仕組みこそ属性の仕組みであるのは分かるかな」

「なんとなく。雷は別なんですか?」

「うむ。雷は次元が違うものである。氷は雷を通しにくいなどの性質はあるがね」

「炎が強いと本来は氷の力が弱い……ってことですよね」

「その通り。水の力を持てば相反、氷の力を持てば傾強けいきょうと呼ばれる使い手である。ファウは相反であり傾強。つまり三種両立……いや適切ではない。三種掌握(しょうあく)……といったところであろう。このような例は私も聞いたことが無い」

「三種掌握……」

「そしてバランスのとり方が能力の強弱に現れている。弱い水の力で強すぎる火が抑えきれぬ。そのため氷の力も並び立ち強くなっていると考えるべきであろう。その影響で風の力も授かっているのだ。絵で表すとこうである」


 さらさらときれいな絵をネビウスさんは書いてくれた。

 そこには水で多少消えた火を、風の影響を受けて大きく固まった氷が防ぐ絵だった。


「ファウの水の力が強ければ、氷の力はここまで強く無かったのだよ。このように、ラギ・アルデの力はバランスを保っておるのだ。該当しない場合もあるのだがね」

「つまり、適性検査を全て行わなくても、ある程度判別が出来るんですね」

「そういうことである。さて、王女が来たようであるな。私は先に戻って休んでいるよ」

「先生がやるんじゃないんですか!?」

「うむ。弟子にやらせるのが師匠であろう?」


 そう言って少し微笑むと、先生はティオンさんに合図して、支えられながら杖をついて戻っていった。

 俺は自然にその後ろ姿へ丁寧ていねいに長く、お辞儀じぎをしていた。

 自分がこうして生きていられたのは、寝床を無償で貸してくれていた、トリシュタイン・ネビウス……その人のお陰だと、心からそう思っていた。


 ――ネビウス先生と入れ違いで来たララミィは、びっくりするくらい女の子っぽい恰好に変わっていた。

 そういえば南下している影響か、涼しくなったような……砂漠地帯はもう抜けたのかな? 


「ファウ、もう寝ていなくても平気なの?」

「うん。大分よくなったみたい。看病してくれて本当に有難う」

「ううん。意識もはっきりしてる?」

「え? うん。眠くもないし大丈夫。ララミィの適性検査をやらないとだから……え?」


 ララミィは少しきょろきょろすると、近づいて……頬にキスをした。

 途端顔を真っ赤にして後ろを向いてしまう。

 それはこっちがやりたいんだけど。


「ララミィ……?」

「あの……エストマージでは感謝を伝えるには必ずこうするんだってマールさんがね。だから、その……」

「えーっと。そんなしきたり、多分無い……よ?」

「……ええーーーー!?」

「あはは……マールさん、どこかで見てるな。でもララミィの感謝は受け取ったから。ね? これで貸し借りなしだよ」

「あうう……は、恥ずかしい……適性検査が終わってからにすればよかった。でもでも人が来ちゃうかもって言われて、わたし、わたし……あうう……」

「おーいララミィさーん。聞いてー」

「はっ!? ご免なさい。あの、そっちを向きますから……」


 自分もどこを向いたらいいのやら……こういう状況になったら絶対トーナが出てきて「あーーー!」とかいって止めに入るはずなのに。

 ……はは、こんな時にまでトーナたちのことを。


「ファウさん?」

「ご免、直ぐに始めよう。順番通りに話すね。それじゃ……」


 こうしてララミィの適性検査を行った。

 ララミィは砂漠の民らしく、少し強い火の力と、土の力、それから……「雷の力が、ある……凄い!」

「本当ですか? 私、スリリさんみたいなことが出来るの?」

「どうだろう、そこまでは分からないけど、凄く珍しいんだよ」

「そういえばお母さまにはそういった力があったって……だからかもしれません」

「そうだったんだ。雷の力は遺伝するのかな? でも、三つあってよかったね」

「はい。ファウさんはどのようなお力が?」

「あーははは……あんまり言わない方がいいって言われてるんだ。それよりもさ。早速試しに撃ってみない? ララミィ、そういうの好きでしょ?」

「はい! うふふ、ちゃんと教えて下さいね?」


 と言ったところでガタゴトと物音が聞こえた。

 絶対、マールさんたち見てるよなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ