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9話 ナーエの事情



「私の本名は、立花 三奈江。

 魔王召喚によって日本からこの世界に呼ばれた人間よ」

 ナーエ改め三奈江が最初に発した言葉に戦慄が走る。


「待ってくれ、魔王召喚だと……

 どういうことだ。

 前の周回のとき、魔王との戦いに俺達側で参戦していたのはお前じゃないのか」

 つかさの疑問に三奈江は頷きながら答える。


「もっともな質問ね。

 あのときあなたに倒された魔王ミーナは私のドッペルゲンガーよ。

 魔王の魔石は私が倒した琥竜の魔石を使ったイミテーション。

 イミテーションと言ってもおそらくこの世界では最高の魔石でしょうね。

 それに、私はもともと人間だから、私から魔石は取れないと思うわ」


「あの強さでドッペルゲンガーだったのか……

 三奈江、君は一体どれほど強いんだ。

 それになぜ魔王軍の召喚に応えて人間側と戦っている」


「その答えはたぶんあなたと同じよ。

 私の強さはおそらくあなたと同等。

 私の目的は元の世界、日本への帰還よ」


「日本への帰還?

 どういうことだ」


「あなたが魔王を倒せば日本に帰られると騙されていたように、私も勇者をほふれば日本に送還されると言われていたのよ」


「それならなぜ前回の周回で俺達勇者側に付いたんだ?」


「9回目の周回を覚えている?

 前々回のことよ」


「ああ、覚えているとも。

 俺達は魔王との決戦にまで辿り着きはしたが、魔王軍との激闘の末、疲れ切った状態で魔王ミーナと対峙し、あえなく全滅した」


「そう、私はあのとき初めて勇者であるあなたを倒した。

 そしてその後に待っていたのは魔王軍からの裏切りだった。

 前回の周回で、人間側が勇者を滅したように、前々回の周回では魔王軍側が用済みとなった私をだまし討ちにした。

 もちろん彼らはスキルリピートライフのことを知らない」


「と言うことは、前の周回でナーエとして俺達に付いたのは……」


「お察しの通り、魔族側で日本に帰られないなら、人間側にかけるしかなかったから。

 しかし、その結果はあなたも知っての通りよ」

 真実のあまりな内容につかさは言葉を失う。


「なんてきたねえんだ……」

 みんなの気持ちを代弁したのは肉屋のボルハチだった。


「全くその通りよ。

 魔族も人間の王族も、人攫い同然に私たちを召喚しておきながら、不要となれば殺しに来る。

 この世界の為政者達の良識は死んでいるわね」


「この世界の人間として恥ずかしい。

 つかさを前回はめた王族はもちろん、敵対している魔族側もひでえ」


「そう、だから今回は、人間の王族にも、魔王軍にも頼らずに帰還の方法を探す必要があると判断したの。

 そして、今回の周回でのレベルがやっと十分に上がったので、つかさ、あなたに接触したのよ」


「そうか……

 そうすると、今までの戦略を再考する必要があるな」

 つかさはしばらく考え込むと絞り出すように言った。


「戦略?

 よかったら私にも教えていただけるかしら」


「ああ、今回俺は、正規の勇者パーティーが辿り着く前に、お前を含めたこのパーティーで魔王を倒し、こっそり魔石を手に入れて、王城の魔方陣を送還用に書き換え、日本に帰還するつもりだった。

 そのためにドッペルゲンガーを3人ほど王城に残し、召喚の魔方陣を研究させている。

 しかし、仮に研究が上手く言ったとしても、魔王から魔石が取れないんじゃどうしようもない」


「それってこれで事足りないかしら」

 そう言うと三奈江は懐から大きな魔石を取り出す。


「それは?」


「前回イミテーションに使った琥竜の魔石よ。

 今回の周回では昨日やっと討伐できたの。

 これが手に入ったから、あなたたちに接触したのよ」


「なるほど……

 前回もこの魔石で魔方陣は起動しそうになっていた。

 試す価値はあるな」


「よかったじゃねえか、つかさ

 魔王城まで攻め込む必要がなくなったな」

 ボルハチの言葉に頷きながら、つかさは今後の方針を口にした。


「ああ、これで方針は決まった。

 王都に帰還して、夜中に召喚の間へ忍び込む」


 一行は会合の場所として使用していた宿の部屋を引き払うと、瞬間移動でボルハチの店へと跳ぶのだった。







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