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8話 ナーエを探せ

肉屋のボルハチとの出会いやレベルアップエピソードを省略して5ヶ月後の世界から執筆しています。

ご了承ください。


 5ヶ月後、つかさはかつて魔王を討伐したときのレベルへと到達した。

 といっても、正規パーティーメンバーのカールたちと一緒にレベル上げしたわけではない。

 正規のパーティーメンバーが王都を出発するのは今から1ヶ月後の予定なのだから、当然だ。

 では一体どうやってレベルを50オーバーまで持って行ったかというと、スキルドッペルゲンガーと瞬間移動を駆使してこっそりと狩った動物や食用に適する魔物の肉を買い取ってもらった肉屋の店主ボルハチと意気投合し、ボルハチの嫁さんのライラさんと共に臨時パーティーを組んでもらって、瞬間移動を駆使することで高レベルの魔物の生息域へ行き、経験値を荒稼ぎしたためである。いわば、裏パーティーを結成したわけだ。

 その間、カールたちにはドッペルゲンガーによる分身で相手をしておきアリバイは完璧だ。


 進化した瞬間移動スキルを使えばいきなり魔王城へ到達することも可能だが、それをやってしまうと、たとえボルハチ達の協力があったとしても魔王に返り討ちに遭うことになる。

 鍵となるのは踊り子のナーエだ。

 彼女を仲間にできれば、カールたち抜きでも魔王討伐はできる。そしてそれこそが士の狙いでもあった。


 王城の連中に気づかれないうちに魔王の魔石を手に入れ、ドッペルゲンガーに密かに解析させた王城の召喚魔方陣を書き換えて、地球へ帰ってやろうというもくろみだ。

 魔方陣の解析は夜中の人がいない時間帯に、徹夜でドッペルゲンガーに作業させたおかげで、あと1ヶ月もあれば目的を達成できそうなのだ。


 問題はナーエとの合流である。

 彼女は踊り子という職業柄、この時期は旅回りをしているはずである。

 前回の周回時の話では、魔王領域の近くの辺境を転々としていたと言うことなので、今俺は分身可能数の上限までドッペルゲンガーを増やし、転移で複数の町を同時調査中である。

 最大数である99体の分身のうち、3体を魔方陣の解析とカールたちへのアリバイ作りに、残りの96体をナーエの探索に当たらせているので、結果はすぐに出ると思っていたのだが、3日立ってもめぼしい情報は集まっていない。

 この間に聞き込んだ町の数は実に960。

 辺境の町全てと言ってもいい。


 これだけ探して見つからないと言うことは、ナーエはもっと内陸の街にいるのだろうと考えた士は、今日の午後から分身たちに魔王領域から離れた町の探索も命じている。


 つかさ本人はボルハチたちとキングギガンテスを相手に経験値稼ぎをしている。

 今日中に前回の魔王討伐レベルを超えることは確実だろう。


 そしてついに、過去最高のレベル53に到達したとき、分身ドッペルゲンガーの内の一人が長距離瞬間移動でつかさの前に現れた。


「見つけたぞ。

 というか、想定外の状況だ」

 つかさへ向かってまくし立てる分身ドッペルゲンガーの言葉に、うな頷きながらつかさはこたえる。

「分かった、分かったから、まずは融合だ」

「ああ、そうだったな。

 それで全て伝わる」

 そういうと分身ドッペルゲンガーは右手を差し出す。

 つかさが差し出された分身ドッペルゲンガーの右手を握ると同時に、分身ドッペルゲンガーは光の粒となってつかさに吸収された。


「何度見ても驚きの光景だな」

「全くね」

 パーティーメンバーとなったボルハチとその妻ライラはあきれ気味に嘆息を漏らす。

 この二人も今ではレベル50を超えており、その強さは魔王軍の幹部にも通用するだろう。

 前回の周回のカールたちより強い。

 右手に巨大な斧、左手に巨大なクレイモアを持つボルハチと、総ミスリル製の三節槍を持つライラは、一度引退したとは思えない腕前を取り戻しているのだ。


「だいたい分かった。

 すぐに跳ぶがいいか?」

 分身ドッペルゲンガーの記憶を融合した士はパーティーメンバーに問う。


「もちろんだ。

 前衛に偏りすぎたこのパーティーに支援もできる踊り子は大歓迎だからな」

「あら、あなた。

 私も少しは回復魔法と支援魔法が使える魔法槍士なんだけど」

「いや、そうはいってもお前はいつも俺達の横に並んで戦っているだろ」

「まあ、そうだけど……」

 この掛け合いを何時までも見ていたい気もするが、今はナーエだとつかさは思い直し、二人に声をかける。


「いつまでも仲がいい夫婦で羨ましい限りだが、今はナーエと合流することを優先してくれないか」


「ああ、そうだったな。

 つかさの思い人との合流が先だ」

「いや、その言い方は語弊があるぞ。

 ナーエは魔王との決戦に欠かせないメンバーだが、俺の思い人は元の世界にいるんだから」

「そう言えばそうだったな」

「けどあなたの最近の言動は、そのナーエさんこそ思い人のように見えてくるほどなのも事実よ」

 事情を話しているはずのボルハチとライラから、半分は冷やかしだと思われる言葉をかけられながらも、つかさは転移魔法を発動した。


 そこは、魔王領との境から少し東へとそれた小さな町の宿屋だった。

 分身ドッペルゲンガーが取っていた部屋の中で、探し人は待っていた。


「久しぶりねつかさ

 その言葉につかさは違和感を覚える。

 分身ドッペルゲンガーとの会合を経ているとは言え、さきの俺が分身体であり、今回の周回ではナーエと本体のつかさが会うのは初めてのはずだ。

「確かに、俺にとっては久しぶりだな、ナーエ……

 しかし、お前にとっては本体の俺と合うのは初めてのはずではないのか?」


 士は素直に疑問をぶつける。


「そうね、分身ドッペルゲンガーさんにはそこまでは言っていなかったわね。

 今の私が召喚者であることは伝えたけど……

 つかさ、私もあなたと同じスキルを持っているのよ」


 つかさは本日二度目となる衝撃を覚える。

 一度目はつかさ分身ドッペルゲンガーと融合したときに知った、ナーエの召喚者告白、そして二度目が今の話だ。


「それはつまり……」

「そう、私もリピートライフカンパニーの顧客で、あなたと同じスキル『リピートライフ』を持っているのよ。

 そして、おそらくあなたと同じ11周目の周回が今の私なの」


『なんと言うことだ……』

 つかさは心の中でつぶやく。


「おどろいた?」

「ああ、これが驚かないはずがない。

 しかしそれならなぜ前回の周回で言ってくれなかったんだ」

「私にも私の都合があったのよ。

 言わなくて日本に帰られるならそれが一番いいと思っていた。

 けど、今の状況はそれが許されるとは思えない。

 私を召喚したのは魔王軍なのよ」

「なっ……」

 つかさは三度目の絶句に見舞われる。


「どういうことだナーエ」

 当然だが、つかさは聞かずにいられない。

「もちろん説明するつもりよ。

 少し長くなるけどいいかしら」

「ああ、もちろんだ」

 つかさとパーティーメンバーはナーエに促されるまま、部屋の椅子やベッドに腰を下ろした。







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