6話 11度目の異世界の王との謁見
王の間には王様や衛兵の他、3人の男女が待っていた。
皆見知った顔だ。
王の前で片膝をつき、臣下の礼を取ると、王はよく通る声で士に話しかけてくる。
「ようこそおいで下された勇者殿。
わしがこの国を治めているヘンリケⅢ世だ。
宰相のシュルから話は聞いておると思うが、どうであろう、この者たちとともに魔王の討伐に協力してもらえぬであろうか。
もちろん魔王の魔石はそなたの帰還のために使うことを約束する」
「わかりました。その役目、謹んでお受けしいたします。
私のことはツカサとお呼びください」
士の腹は既に決まっている。
魔石獲得のため魔王の討伐まではこの流れに乗る。少なくとも表面上は……
「おう、そうか。
よくぞ申された。王国もできる限りの援助はしよう。
まずはお主とともにパーティーを組む者を紹介しよう。カール、リージュ、タシアの3人だ」
ヘンリケ王の言葉に続いて横に控えていた3人の見知った顔がそれぞれ自己紹介をする。
「カールだ。剣士をしている。
現在は王国近衛隊の小隊長だが、任務達成の暁には騎士団長を任されることになっている。 よろしくたのむ」
背の高い赤髪の青年が士に歩み寄ると右手で握手を求める。
握られた右手が痛い。相当な力である。
この時点でのカールのレベルは確か23。
士はレベル1。
まるで自分の力を誇示するかのような力のこもった握手だ。
力の差は当然と言えば当然であり、11回目ともなれば慣れたものなのだが、何か悪意を感じるのは10回目の最後の経験からだろうか。
「私はリージュ、黒魔道師よ。
炎と氷の2系統が得意よ。よろしくね」
「タシアと申します。
白魔道師です。
癒やしの魔法と補助魔法が使えます。
聖属性の魔法も適性はあるのですが、まだあまり使えません。
よろしくお願いします」
2人の魔術師が続けて自己紹介した。
「ツカサだ。全属性魔法と剣術に適性があるが、レベルが低いのでまだ何もできない。
これからがんばっていくのでよろしくたのむ」
士はシュルにした説明の範囲で自己紹介した。
「そうか、召喚されたばかりだとレベルが低いのは当たり前だな。
わかった、これから訓練として、何日かスライムを狩ることにしよう。
俺たちがつきあうからとりあえず危険はないはずだ」
カールがいうと、他の二人も頷いたので士も了承した。
「そうと決まればまずは腹ごしらえだ。
王宮の兵士やメイド用の食堂は無料で使えるからそこでいいか?」
カールの提案に同意すると士たちは王様の御前を辞し、食堂へと向かった。
食事は地球と大差ない。
肉や野菜が地球のものとかなり違うこともあれば地球で食べた野菜にそっくりなものもある。
もしかするとこの世界も、ずいぶん前に分岐したパラレルワールドなのかもしれないと思いながら、士は鶏とよく似た味のする唐揚げをおかずに、米としか思えないご飯を美味しくいただいた。
そういえば一日の長さや1年の日数もほぼ同じで、春夏秋冬も地方によってははっきりしている。
北方では白夜となる国もあるというから、地軸の傾きも地球と似通っているのかもしれない……、などと考えているとカールから質問された。
「ツカサは魔法も剣も扱えるようだが前衛、後衛どちらを目指すつもりだ?」
士は迷わず返答した。
「前衛だ。魔王との戦闘は接近戦になるだろうからな」
そう、士は過去の2度の邂逅から知っている。
魔王とは互角の魔力のため、その勝敗は魔法では決着せず、勝っても負けても最後は肉弾戦で雌雄を決することを。
9回目のときは士が敗れ、10回目のときは士が勝った。
9回目では、タイムアクセルという反則級のスキルを得て、そこまでの主な敵をほとんど問題なく始末した士は、9度目にしてはじめて魔王のところまで無傷でたどり着いた。
この調子で魔王も倒せると油断したのがいけなかった。
なんと、魔王もタイムアクセルを使えたのだ。
初めて見る魔王の容姿も士の油断を誘った。
魔王は士と同じくらいに見える二十歳前の美しい少女だった。
頭に角がなければ、その辺の女子高生といっても通用するだろう出で立ちに一瞬見ほれた。
加速した時の中での魔法の光が反射し、剣戟の音がこだまする。
魔王の迷宮最奥の間で死闘は繰り広げられ、一瞬の差で致命傷をもらってしまった9回目。
ナーエの加入で魔力を温存したまま魔王と会合し、魔法で押した勢いのまま剣の勝負を制した10回目。
今ならおそらく、10回目の戦いを再現できるだろうが、決定的に足りていないものが2つある。
それはレベル1にもどってしまったステータスと、踊り子のナーエだ。
彼女の援護なしには魔王は倒せない。
彼女と出会うのは前回を踏襲すれば2年後となる。
それまでにできる限りしっかりと準備をし、ステータスを上げつつ情報を仕入れようと誓う士だった。
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