第6話「逆説的に安全保障」
子どもがいなければ、まず見返さない冊子。
あなたのアルバムには、思い出がいっぱい?
――撮らないか?
散歩をしていた保志宇宙が、休憩しようと公園のベンチに向かうと先客がいた。
馴れ馴れしく宇宙を誘ってきたのは――
……カメラ、だよな。
周りを見回してみるが、人っ気はなかった。
忘れ物にしては、このカメラの態度が気にかかる。
……いや、気に障る。
カメラはいやに横柄かつだらしない様子でベンチの背もたれに寄りかかっていた。
ファインダーを意味ありげに開け閉めして、何のつもりだ?
カメラのような何か「僕と、スリリングなショットを、キメないか?」
正しい意味で、頭痛が痛い、宇宙は肩をすくめて天を仰いだ。
これは、野放しにしてはいけないやつだ。
カメラからだらりと垂れたスリングストラップを引っ掴んで、なるべく遠く高く――
シインビール「ショット? 僕と勝負だ!」
……お帰り。
シインビール「まず、僕からだ。ねえ、スコープを覗いて、レティクルはこっちで合わせるから」
……スコープを覗く、俺が?
照準をお前が担当するなら、覗く意味ないじゃん。
それでも周囲を見回して、よさげなターゲットを見繕う宇宙。
と言っても、街中で、お前のライフルなんて……
途中で飽きたのか、宇宙が振り向くと戦闘機はもう、いなかった。
公園に残されたのは、持ち主の定かでないカメラを持った宇宙だけ。
マッハ0.8だもんね。
カメラのような何か「勝負するまでもなかったようだ。もっとも、私を相手にして逃げるのは、恥じゃない」
うん。そこは、同意する。
カメラのような何か「撮ったところで、君が何を失うというんだい? 興奮の瞬間を得るだけじゃないか」
すでにいろいろと何かを失っている気がする、しかし宇宙は1枚だけ写真を撮ることにした。
着いてこられたら、面倒――
カメラを適当な被写体に向けて、ファインダーを除く……
「なんじゃ、こりゃあぁぁぁ」
ファインダー越しの公園には……
カメラのような何か「スリリング、だろ?」
心霊カメラか、お前―――っ
宇宙は咄嗟に心霊カメラを放り投げかけ、思い直して深呼吸をした後、元のベンチに丁寧に戻した。
心霊カメラ「本物を、撮らないか?」
自分から、撮るもんじゃねえ。
去り際に、宇宙は脚を止めた。
……俺の部屋に、いないよな?
目に見えたところで、祟りは消えはしない。
が――
心霊カメラ「……待ってるよ」
ねっとりとした視線が、鬱陶しい。
宇宙の脳裏に2体の祟りが浮かんだ。
祟りは、見えない方が良さそうだ。
悪いことは、できる限り偶然のせいにしておきたい――
アルバムの中に隠れて……
心霊写真がいっぱい。
おあとが、よろしいようで。




