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03 回復の超越

 俺は腕の重みが外れるような気分となった。

 感覚が元に戻るような気分。


「もう大丈夫でしょ、感謝してよね」


 その言葉の意味は多分、こういうことだろう。


 切られた右腕ではなく、俺は左腕から、俺は立ち上がった。

 まだ完全に治っているとは思わなかった。

 しかし、こんな簡単に立つことできるとも、想像はしてなかった。


 俺の腕は、何の問題もなく元に戻っていた。

 ……助かった。


「ありがとう……」


 俺は立ち上がり、血の付いた服を眺めていた。

 これ、どうするんだよ……

 着替えなんて持ってきてねぇぞ。


「当たり前ってこと」


 あの回復能力が超越なのだろうか。

 超越ってのは、特殊な能力。

 つまり、超越者は能力を使える能力者っていうことか。


「おい、そいつは民間人か!?」


 もう一人現れた。

 俺より少し年上の見た目で、俺を睨みつけていた。

 きっと、こいつも特殊な能力を使える能力者ってことか。

 多分、爆発をさせたやつだろう。


「ありがとう、助かった!!」


 俺を助けてくれたのはこいつってことか。


「レイカ、こいつは超越してるのか?」


 俺には見向きもせずに、隣のレイカ?という人に話しかけしまう。

 俺が感謝しているというのに、生意気な奴だと感じるな。


「……いいえ」


「そうか、なら、俺はお前を殺す!!」


 向けられた視線よりも先に、腰に据えた剣がこちらに向けられた。

 銃刀法違反なんじゃないのか!?

 が、こんな場だ。法律なんて気にするものはいないだろう。

 さっきは脅迫された訳だし。


「落ち着け!! 俺は敵じゃない」


「でも、仲間じゃないんだろ」


 その言葉には、俺は何も反論は出来なかった。

 確かに導かれたというだけで、俺は超越者でも何でもない。

 あの死体の数々は、超越者を知ってしまっから、殺されたのか。


「待って!! この子は私がどうにかするから」


 彼女は剣と俺との間に無理矢理入ってきた。

 待てよ、こいつは俺のことを助けてくれたよな。


 大きく腕を広げて、目の前の剣にも然程ビビっていなさそうだ。

 剣を顎先に向けられていたが、突き刺さってしまいそうだ。


 けれど、突き刺さっても、彼女は人を回復をすることが出来るのなら、きっと自分に刺さっても大丈夫なのだろう。

 首を掻っ切られて即死した場合も大丈夫なのかは、知らないが。


「貴様!! この目撃者を生かすというのか」


 彼女は頷いた。

 剣は彼女の頬を掠める。

 剣が目の前にあるのに、おっちょこちょいのような気がするが、彼女は違ったようだ。

 むしろ、あえて当たりに行ったように感じる。


「クソが、!!」


 生意気な態度とっていた野郎は、捨て台詞を吐いていく。


「ふぅ、危なかった」


 膝に手をつけて、身体で息をしていた。

 名は確か、レイカ。

 能力は人を回復させることだろうな。


「大丈夫だった?」


 彼女の言葉を俺に向けらていた。

 落ち着いている。あの羽を持った天使のような姿の奴とは違って、優しそうだ。

 しかし、天使のような姿だったが、あいつは悪魔だったし、声は普通の可愛い声だった。


 もう騙される訳にはいかないな。


「私の名前はレイカ、」


 そう言って振り向いた彼女の顔からは血が垂れていた。


「大丈夫ですか!?」


 流れていた鮮血を何事もなかったように、何か詠唱のようなものもなく、無言で消した。

 傷穴は塞がり、そこに流れていた血が戻っていったようだった。


「大丈夫だよぉ、あいつもひどいよね。助けておいて、殺そうとするなら、もとから助けなければ良いのにね」


 レイカは近づいてきた。

 武器なんてものは持っていない。殺気だって感じられない。


「……」


 こいつは信頼していんだよな……


「止まれ!! それ以上近づくな!! お前たちは一体何なんだ……?」


「そうだよね……」

「私たちは超越者。超越をした者たち」


 超越者……

 やはり超越者なのか。

 こいつらが!!


「……何が目的なんだ、お前たち、超越者は?」


「私たちは、より高みを目指すだけです」


 そう言って、彼女は去っていた。

 高みを目指す。俺にとっては、既に高いレベルにいる。それでもまだ高みを目指すらしい。


 ……って!!

 俺、置いていかれてる。

 周りを見回しても、もう超越者は一人もいない。

 そして、あの雲も今は引いている。

 せっかくここまで来たのに、どうしてだよ。

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