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くびわの意味。




【リュウキ視点】




俺は今、夢でも見てるんやないやろうか?




ユキは言う。

自分は俺の白いのやって。


生まれ変わったんやなくて、そのまんまの白いのやって。




今、俺の腕の中にいる小さく震える温かい体温が俺に教えてくれてる。

紛れもなく、お前は俺の白いのやって。




「・・・はは。白いのに会えたら、話したいこといっぱいあったんやけど。全部吹っ飛んでもうたわ。・・・でも、なんや。そうやな・・・。驚いたけど、それより何より、嬉しいもんやな・・・。」


「ごしゅじん、しゃま?」




そんな不安そうな顔せんでもええんよ。

前世での心残りやったこと、全部、現世で遂げられるなんて有り得へんこと、天変地異が起ってもないって思っとったけど、こんなこともあるんやなぁ。




リーフからさっき聞いたことやけど、地球から聖域に『白いの』を飛ばすやなんて、神さんも粋なことしはるね。


まあ、そのおかげで俺はまた『ユキ』としてやけど、『白いの』に会うことが出来たんやから感謝してもしきれへん。




「りゅうでええよ。なぁユキ。俺と買い物行った日、生まれ変わりなんて話してしもうたから言い出せんかったんやろう?ごめんな。ずっと気にしてくれてたんやろね。」


「りゅ、う。おこ、て、にゃい?めって、すりゅ?」


「そんなん。めっ、なんて出来るわけないやん。あの頃も今も、俺はお前が可愛いて可愛いてたまらんのやから。そんなことくらいでユキをめってする奴おったら俺がこの手で成敗したるよっ。」




ユキを片手で支えながら俺が刀を振り下ろす動作をしたら、潤んでいたユキの大きな目がほんの少しだけ細まって笑ろうてくれた。


その細まった目が俺の大好きやった小さい白猫とおんなじ目ぇしとったから、やっぱりこいつは生まれ変わりやなくて、俺がこの手に抱いて可愛がっとった『白いの』やって確信出来たんや。




「なぁ。ユキ。」


「にゅ?」


「少し俺の我侭聞いてくれんやろうか?」




小首を傾げて俺を見上げたユキは、不思議そうに俺の顔を見つめた後に小さく頷いてくれたから言葉を続けた。




「猫の姿になってくれへんかな?ほんの少しでええんよ。勘違いせんといてぇや?俺はその姿のユキも可愛い思うとうよ?けど、その、なんやろ。仔猫のユキに改めて会いたいっていうんかな。・・・あかんか?」


「おはにゃし、できにゃく、なりゅ。いーい?」




俺がうんとゆっくり頷くとユキはふわりと可愛らしい笑みで頷いて小さな白猫の姿に戻ってくれた。




片手に乗るくらい小さな仔猫の体温を感じて、それでも両手で落とさへんように、潰さへんように優しくすくい上げて頬を寄せたら、あの懐かしい音が聞こえてきて俺は目を閉じた。




ゴロゴロゴロ・・・・。




耳元に優しく懐かしい『白いの』の喉を鳴らす音が聞こえて、こんなに小さいのに生きてるんやなって感じて鼻の奥がツンとしたけど、それよりも目の奥にジリジリと熱が集まるのを感じて小さな体温とゴロゴロという音に集中してやり過ごす。




「ユキは、あったかいなぁ。・・・大好きやで。」


「みぃ。みぃあ。」




頬にユキがおでこをこつりと当ててスリスリと擦り寄ってくる。




ふわふわの仔猫特有の柔らかな毛がくすぐったいけど、もう少し堪能させてぇな?


そう思いながらゴロゴロと安心したように可愛らしい音を鳴らすユキを離したんは30分以上経ってからやった。


というか気づいたら既に時間が経ってて、その間もユキは俺の好きなようにさせてくれてたんやから、ほんまありがとうって思った。




「あ。そうや。この間な。買い物行った時にユキに買ってたんやけど、渡せへんかったものがあるんよ。・・・あーでも、人間になれるんやったら無い方がええんかな?って思ったりしてな。ユキが嫌やったら返してくれてええからな?」


「みゅ?」




俺が立ち上がったらユキは俺の肩に移動して、また頬にゴチンスリスリとしてくれたけど、俺の言葉になんだろう?と不思議そうに見つめてきた。




引き出しから小さく薄い小箱を取り出して手に取ると、じっとそれを見つめるユキ。


俺には今のユキが猫扱いして欲しいんか、人間扱いして欲しいんか分からへんから、このプレゼントは喜んでもらえるんか実はかなり不安なんよ。




コトリと小さな音をさせて小箱の蓋を開けて、上に乗っていた薄い紙を除けるとチリンと可愛らしい鈴の音。


ユキは小さく震えて目を見開いとるけど、その目は箱の中に釘付けで、そこにはピンクゴールドの小さな鈴がついた赤い華奢な首輪があった。




俺がユキ、否、『白いの』に着けたった最初で最後になってしもたプレゼントが、実は鈴のついた赤い首輪やったんやけど、買い物した時に買って、渡したら俺のただの思い出を押し付けるだけなんやないかって渡せへんかったんや。


といっても、あの頃は革製品なんて出回ってる時代でもなかったから、朱色の染色した布を編みこんで鈴をつけただけの簡易な首輪やったんやけどな。




それでも喜んでくれてたみたいで、誇らしげに跳ねるようにチリチリと鈴を鳴らして歩く『白いの』の姿が俺は好きやってん。


・・・これも押し付けになってしまうんやろうけど。




「みゅっ。みゅっっ。」


「っ。あ、ああ。ごめんな。ボーっとしとった。」




ぐいぐいと俺の頬をおでこで押すユキは、俺の手にある首輪をキラキラした目で見て、俺を見て、交互に首を動かしてから、また俺の頬を押す。もしかして・・・これは。




「・・・つけて欲しい、とか?」


「みぃっ。」




確か1回鳴くんは『YES』やったよな?

え?ほんまに??ええの??!




ユキが俺の肩から腕に移動してそのままテーブルの上にトンと軽い音を立てておりると、ちょこんと座って首を上に向ける姿が『早くつけて』と急かしてるみたいで、なんや可愛らしくて笑ってしもうたけど、受け入れてもらえたんが嬉しゅうてゆるゆる上がる口角を誤魔化しながらユキの細い華奢な首に震える指先で首輪をつけた。




チリンチリン。




ユキは首輪の鈴の音を聞くためなんか、俺の知っとるあの跳ねるような歩き方でテーブルを降りてその周りを歩き回って可愛らしい音を楽しむように目を細めて誇らしげに跳ねる。


ああ、ほんまに、可愛らしいなぁ。


お前のその姿がまた見られるなんて、俺はほんまに幸せもんやなぁ。




俺がユキの前に片膝をつくと、ユキはトンと膝の上に飛び乗って俺の伸ばした指先に擦り寄ってくれる。




「気にいってくれたやろか?」


「みぁっ。」


「そうか。ありがとうな。」


「みゅ?」




たくさんの意味が篭った感謝の言葉を伝えたら、ユキは不思議そうに首を傾げたけど、ええんよ、お前はもう前に進んどるんやから。




だから俺の『白いの』への執着とか、汚い独占欲とか、そんなもんに気づかんといて。


お願いやから、気づかんといてな・・・。




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