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ひてい、こうてい。



絶対零度の視線の的にされていたリーフは困ったように苦笑いします。




「・・・はぁ。そんなに睨まないでください。私は別にユキを危険な目に合わせようと思っていませんでした。」




王を外したすべての守護精様たちと、自称ユキの世話係であるエイルがリーフの部屋の応接室を占拠している様は圧巻・・・と言うべきでしょうか。




湯浴みから戻りリーフがソファーへ腰を落ち着けて早々、エイルが紅茶を淹れる間、ひと通りの戻ってくるまでの流れを説明している間もリーフへの視線が突き刺さります。


特にイフとリュウキの威圧感が半端なく突き刺さり、リーフは『何ですかあのおどろおどろしい背中の黒い靄は・・・。』と内心ヒヤヒヤさせられました。




「・・・というわけで、あの星の危機は回避されました。今は予想の範囲から出てはいませんが今後あの星が落ち着くまでは目を離さないように致します。」




話し終えると守護精たちはしんとした部屋の中、考え込むように押し黙りました。


リュウキはチラリとリーフへ視線を向けから隣りの寝室へ続く扉を見ていますが、リーフは『って、は?どうしてリュウキ様は私の寝室など?ままままま、まさか!?』と思いました。




「今度はこちらがお聞きしたいのですが・・・。ユキはどこです?」


「ああ、隣りのベッドに寝かせてある。」




や、やはり・・・と、ため息を尽きそうにになるリーフにイフは言葉を続けましたが、その理由にリーフは納得するしかありませんでした。




「・・・あまり離れると、不安になるだろ。・・・ユキが。」




ですが、それは違う気がしました。


起きた時誰もいなければ、もちろんユキも不安になるかもしれませんが、イフ自身がユキから目を離したくないのだと、リーフはそう確信しました。




そんな時、か細く小さな音が聞こえてきて、それは今見ていたリーフの寝室からの物音だと気づきます。


守護精たちもそれに気づいたようでしたので、リーフは無言で立ち上がると寝室へ向かい扉を開くと、裸足のまま扉のすぐ近くで零れそうなほど瞳いっぱいに涙を溜めたユキが見上げていました。




「っ!ユキ!?どこか痛むのですか?!どうしましたっ!?」


「「「「っっ!?」」」」




ユキの前に片膝をついて顔を覗き込むと、ユキは小さな手を伸ばして立てていたリーフの片膝に抱きつき泣きます。




「・・・ふぇ。ごめ、しゃい。ごめ、にゃ、しゃい。」


「ユキ・・・・?どうして謝っているのですか?そんな顔して、それでは、まるで・・・。・・・っっ。」




・・・・世界中の罪を背負ったような―――――




言葉にならなかった音が零れ落ちていくような錯覚に囚われそうなりながら、ユキが謝っているのはきっと、目の前にいるリーフだけにではないのでしょう。




「ユキ。リーフから全て聞いた。もう怖がらなくていい。俺たちはユキの全てを受け入れると決めたのだから。」




イフの言葉にユキはビクリと肩を揺らすと、ゆらゆらと瞳を揺らして不安そうにイフたちに視線を向けてもう一度リーフの顔を見ます。


リーフが小さく頷いてユキの小さな頭を撫でると、ユキはくしゃりと顔を歪めて涙を流しながらも何度も頷きました。




リーフは優しくユキを抱き上げて執務室に戻ると、立ち上がっていた守護精様方もソファーに座り直し、視線だけはユキに向けていますが、その表情は拒絶ではなく、とても穏やかなものでした。


そんな中、ユキはリーフの腕の中から、リュウキに手を伸ばしました。




「ユキ・・・?」


「りゅ、う。りゅう、に、おはにゃし、したい、こと、ありゅにょ。」




リュウキは戸惑いながらもユキに手を伸ばし、リーフの腕の中からユキを優しくふわりと抱き上げました。




「話って、どうしはったん?時間かかりそうやろか?」


「んにゅ・・・。」




小さくコクリと頷いたユキを見て、リュウキは少し考えた素振りを見せましたが、周りで様子を窺っているみんなに言います。




「・・・悪いんやけど、今日はもう解散にしてもらえへんやろか。ユキは今日は俺の部屋に泊める。詳しい事は・・・ごめんな。また、落ち着いたら皆に聞いてもらいたいから。かまわへんか・・・?」


「ユキがリュウキと話したいと言っているのだから、まあ、仕方ないな。」




リーフを含めて周りの守護精たちが頷く中、イフは小さくため息をつきながらも仕方ないといった表情でしたが、零れ落ちてしまいそうな程に涙の膜を張っているはちみつ色の瞳をゆらゆらと揺らしているユキを見ると、安心させるように微笑みました。




******




ユキはリュウキの部屋へ来たのは初めてでしたが、落ち着いた雰囲気の部屋で、所々に月をモチーフにした装飾が目に入りました。


リュウキはソファーにユキを降ろそうとしましたが、ユキがきゅっとリュウキの首にしがみついて拒否したことにゆるゆると嬉しさがこみ上げてしまいます。




ユキを片腕にだっこしたまま、先程リーフの部屋を出る時に『ユキが落ち着きますから』と渡された華虫の蜜の小瓶を持って隣りの部屋にある簡易なキッチンでミルクを温め、同じく慌てたようにエイルから渡された『ユキちゃんお泊まりセット』の中から、藍の宇宙のとある星で流行っているという『落としても割れない』をコンセプトに作られた小さな子供用マグカップを取り出して、蜜とミルクを入れました。


リュウキはリーフとエイルの保護者っぷりに苦笑いしましたが、肝心のユキはまだ笑ってくれません。




リュウキが小さなマグカップの中に蜜を入れ、くるくるとかき混ぜているのを静かにじっと見つめているユキに、リュウキはふふっと笑いました。




「帰ってきてからまだ何も口に入れてないんやろ?後で一緒に何か食べよな?甘いミルクが好きやなんて、なんや昔の事思い出すわ。・・・っと、こないな話しても分からんやんな。」




リュウキはユキがしろいのの生まれ変わりだと信じていたので、昔の記憶がもしあったとしてもそんな小さなことは記憶にないだろうと思い、失言してしまったかと焦りながら困ったように笑います。




用意してもらった甘いミルクをリュウキの膝の上でぺろりとひと舐めして、ユキはリュウキにぐいっとマグカップを返しました。




「もういらへんの?じゃあテーブルに置いとくから後でちゃんと飲むんよ?」




ユキは小さく頷いた後、リュウキと向い合わせの状態で見上げて、きゅいっと目の前にあるリュウキの服を両手で握ると、決意したように一度下唇を噛んで覚悟を決めました。




「りゅ、う。あにょね。・・・まえ、りゅうが、うみゃれかあり、のこと、おはにゃし、して、くれたにょ。でも、ゆき、ちがう、にょ。」


「・・・うん?」




リュウキは自分の胸元のシャツを握る小さな震えるユキの手を優しく撫でながらも、小さく首を傾けて『どういう意味?』と問いかけます。




「ゆき、ほんとは、しろいにょ、なにょ・・・。」


「うん?ユキは白いのの生まれ変わりっていうことやんね?分かっとるよ?少しは俺の事、覚えててくれてるんやろなって思っとったし・・・。」




リュウキの言葉にユキはまたもやフルフルと首を振って否定しますが、リュウキはユキがどうして否定するのかさっぱり分かりません。


ですが、次のユキの言葉にリュウキは驚愕することになりました。




「ユキ、しろいにょ、なにょ。うまれ、かわって、にゃいっ。りゅう、ごしゅじん、しゃま、だったにょ。ふぇ・・・。ず、ずっと、きょーの、おうち、まってたっ。ひっく。い、いくしゃ、おわった、にゃのに、ごしゅじん、しゃま。かえって、こにゃくて・・・。」


「っっっ!??ほ、んまに・・・?ほんまに、お前は。俺の・・・白いのなん?」



大きく見開いたリュウキの黒い瞳には、不安そうに見上げるユキが映っていました。






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