ゆめのはざまで。
お待たせ致しました。
亀更新ですがお付き合いくださると嬉しいです^^
ぽかぽかぽか・・・。
ぬくぬく・・・・・・。
ああ、この感じ、とっても久しぶりだな。
おひさまが、あったかい。
「・・・・・・の。」
んぅー・・・。
とっても懐かしい、声。そっか。これは、夢なんだね。
ああ、そうだ。
お出迎えしなきゃ。
ゆっくりと目を開いたら、ここは縁側じゃなくて黒い黒い骨組みだけの焼け落ちたお屋敷の門。
せっかくの懐かしい夢なのに、どうしてかな?なんでかな?
どうせ夢ならご主人さまが帰ってこない待ちぼうけの夢なんかじゃなくて、ご主人さまと一緒の夢が良かったのに。
「・・・・っっ。・・・・・・いのっ。」
やだな。夢の中でも夢を見てるみたい。
だって、ご主人さまは『いくさ』で死んじゃったのに。
声、聞こえるんだ。
変なの。
現実のように待ってみるけど、夢の中くらいご主人さまに会わせてくれたっていいのに、おひさまはゆっくりお家に帰っていって、可哀想にって赤いお空だけを置いていく。
夜はきらい。
暗闇はこわい。
見つけたい人がいるのに、くらいくらい影が隠してしまうから。
また、まちぼうけ。かな。
だったら早く覚めてくれればいいのに。
そしたらきっと、目が覚めたら誰かがいてくれるはずだから。
あれ?
誰かって、だぁれ?
帰らないと、心配してる。
帰るって、どこに?
私のお家はここなのに、変なの。
「みぃ・・・・・・。」
茜色っていうんだって、このお空、夕焼け色は茜色。
ご主人さまは茜色のお空から、紫色に変わって、ふかいふかい夜の色に変わって行くのを見るのが好きだって言ってた。
ご主人さまは言葉が通じないのに、私のこと、お前はやさしい子だねって言ってくれてた。
そういえば、こんなこと、言ってたな。
優しさは、生まれた時から持っているわけではないんだよって。
人は生まれた時には食欲とか物欲しか持っていなくて。
でも、お父さんとか、お母さんとか、お友達とか、大切な人たちからたくさんの優しさをもらって、感じて、初めて自分らしい優しさを見つけることができるんだよって。
だから、私の優しいは、誰かとおんなじじゃなくてもいいんだって。
私らしい優しいきもち、持っていられたらいいんだって。
ねぇ。ご主人さま。
私、ご主人さまが言ってた『優しい』をもてたかな?
ねぇ。ご主人さま。
私ね、今ね、すごくご主人さまに会いたいよ。
ああ、私、そうだ。
ご主人さま。私ね。
きっとご主人さまのこと、すごく大好きだったんだ。
大好きでもね、あっためてもらったぬくぬくのミルクとか、ぽかぽかのおひさまの下で撫でてくれるおっきな手とか、そういう大好きじゃなくて。
人間がする、そう、『恋』。
私、ご主人さまに『恋』をしていたんだよ。
していたって、過去のことみたいに言ってる。
変なの。
今でも大好きなのに、変なの。
またたびの匂いでふあふあしてる時の頭の中みたいに、変なんだよ。
・・・・・・あいたい、なぁ。
ああ、また眠くなってきた。
ほんの少しだけ瞳を閉じてみる。
そしたら、おっきな影に覆われて、近くに一番聞きたかった声が聞こえた。
「・・・・やっと見つけた。しろいの。ここにいたのか。」
「っ。ご、しゅじ、ん、しゃま・・・・・・?」
あれ・・・?
私、人間の言葉、話してる?どうして?猫のままなのに。
ご主人さまは、一瞬驚いた顔をした後、今までで見たことがないくらい、くしゃりと顔を崩してとびきりの笑顔。
「しろいの。私は知っていたよ。お前が普通の猫でないことくらい。それくらい見抜けないようでは、お前の主人は務まらぬだろう?」
「っ!?」
夢の中でもいい、ご主人さまが、私を、普通の猫じゃない私をだっこしてくれて、真っ直ぐに見てくれている。
涙が、溢れる。
ううん、このまま、流れて溶けちゃって、目がなくなっちゃってもいい。
「泣かないでおくれ。お前は私の幸いだった。侍として散る際もずっと気がかりであった。すぐにでも迎えに来たかった。こんなに長い時間、待たせてしまったな。すまない。」
「ふ、えぇぇ・・・。いい、にょ。や、やっと・・・。あ、あえ、ぅぅぅ、あえ、たぁぁぁ・・・。ごしゅじん、しゃまっ。ああぁぁ・・・。」
ああ、私の大好きだった大きな手で、しっかりと包み込んでくれるご主人さま。
ずっと、ずっと、この大きな優しい手のぬくもりが、欲しかった。
とてもとても、恋しかった声とにおい。
「しろいの。お前はもう大丈夫。さ、行きなさい。」
「や・・・。いっしょ、いい。ごしゅじん、しゃまと、いりゅっ。ひっく。」
いやいやとご主人さまの腕に爪を立てる私に、ご主人さまは柔らかく微笑んで小さく首を横に振る。
「また、会える。私はお前のことを忘れていなかっただろう?忘れるはずがなかろう?忘れてしまったのかい?」
「ご、しゅじん、しゃま・・・?」
ご主人さまが何を言っているのか分からない・・・ううん、分かっているのかもしれない。
「しろいの。お前が本当に幸せに生き、安息の地を見つけることが私の願いだ。忘れないでおくれ。私はずっと見守っているよ。だからさあ、もうお行き。自ら作り出した鎖に囚われてはいけないよ。」
わ、たし、が?作った、く・・・さり・・・・・・?
だって、私、『ばけもの』なのに、みんなが私をその言葉で縛ってるのに、どうして?
ねぇ、ご主人さま。
行くって、私、どこに行けばいいの?
「大丈夫。ほら、瞳を閉じて、耳を傾けてごらん。今お前にとって大切な人たちの声をきちんと聞きなさい。私の大切なしろいの。さあ、行って。」
言われるままに瞳を閉じて、耳に集中してみる。
ぴくん。
耳が、ううん、心が、震える。
私を呼ぶ、みんなの声。
その瞬間、あったかく私を包んでくれていたご主人さまのぬくもりが、消えていく。
声が出なくて、次に瞳を開いたら、きっとご主人さまはもういないんだって分かった。
「いふ、りゅう、りぃふ・・・。まにゃ、じん、ありゅふ。おう、しゃま。せにゃ、みんにゃ。」
溢れ出てくるたくさんの想い。
どうしてみんなのこと、忘れてたのかな。
リーフさんが受け入れてくれたのに、そうだ、私、みんなに話さなきゃ。
大丈夫。
こわくない。
もう、分かってるんだ。きっと。
みんな、受け入れてくれるって、もう、私分かってたんだ。
言わなきゃ。
帰らなきゃ。
だって、まだ私、みんなと向き合ってなんかいなかったんだから。
そうだよね?
ご主人さま。
やっぱりご主人さまはすごい。
私の気持ちとか、誰かの気持ちとか、全部お見通しだったんだ。
やっぱり私のご主人さまはすごいっ。




