きみという子は。
眩い光が収まっていく中であったかい温もりに包まれていることに気づいてゆっくりと目を開けると、上から息を吸い込む音が聞こえました。
見上げようとした私の上からは焦ったような大きなお声。
「馬鹿ですかっっっ!!こんなっ、ことっ!何を考えているのです!もしも次元の狭間にでも落ちていたら二度と戻れなくなっていたのですよっ!?ああ……っ。こんな、怪我までして……っ。君は……もうっ。」
ビクっと首を竦めて、こんなに慌てた、大きな声のリーフさんは初めてで、怖かった。
それでもリーフさんがここにいると教えてくれる温もりが嬉しくてスリっと包み込んでくれている手に擦り寄れば、リーフさんの勢いは尻すぼみになっていきました。
「……はぁ。まったく。ご機嫌窺いですか?仕方のない子ですね。この星は今、とても危ない場所なのです。ユキを連れて行くわけにもいかないのですが。転送門は……。あー…。閉まってしまいましたね。」
困ったように眉を下げたリーフさんの腕の中で人型に変身すると、私はきゅうっとリーフさんの首に抱きつきました。
「やにゃっ。りぃふ、いっちょ、いるにょっ!ぴったんこ、しゅりゅっ。」
「ユキ……。しかし……。はぁ……。1つだけ、約束してくれますか?」
リーフさんは諦めたように苦笑いしてから、真剣な顔で問いかけてきます。
その真っ直ぐな水色の瞳はゆらゆらと不安げに揺れていました。
少し考えてから小さく頷いたら、リーフさんはほっとしたようなお顔。
「ひとつ。私から絶対に離れないこと。ひとつ。もし私に何かあった時には、独りになってしまっても必ずこの転送門に向かうこと。いいですね?」
最初のお願いは守る自信があるけれど、最後のお願いは起こってほしくない……。
それでもリーフさんは私を見下ろして私のお返事をじっと待っていてくれている。
分からないけど、そんなことになってしまったら嫌だけど、でも、ここで頷かなかったらリーフさんは、きっと私を置いていってしまうから。だから……。
「んにゅ……。げんまん、しゅりゅ。」
「はい。ユキはいい子ですね。約束ですよ?」
リーフさんは満足そうに頷くと、私をだきなおしてれたから、リーフさんのあごにおでこをごちんスリスリ。
リーフさんはふふっと笑ってくれました。
「ユキとの初めてのお出かけが、まさかこんな形で叶うとは思いませんでしたよ。出来ればもう少し楽しめる状況で叶えたかったですね。」
「にゅ……。」
見上げたリーフさんのお顔の向こうには真っ黒な雲に覆われたお空。
荒れた地を進んで行く岩だらけの道なき道を進むリーフさんのお顔は真剣なものでした。
ここが翆の宇宙っていうところにある星みたいだけれど、人のいる気配もしないし、それになんだか、地面から変な地鳴りが聞こえる気が……。
リーフさんは気づいてるのかな?気づいてる、よね?
チラチラとリーフさんを窺っているのに気づいたのか、リーフさんは独り言のように話してくれる。
「この星は、まだ幼子なのです。生まれたてで、無知で、純粋で、この星に生れ落ちた人間たちも、まだ災害や、トラブルに対する対処法が分かっていません。どうすれば最小限の被害で済むのか、どうしたら最良の行動なのか。どうなれば逃げなければと判断するのか。」
少し息を切らせながらもリーフさんは足早に歩きながら周囲に目を向けながらも続けました。
「もちろん。この星で起こることは、ここに生まれた人類で立ち向かわなければなりません。ですが、星自体が異変に陥った場合、私たち王立研究院や守護精様たちの力が必要になってきます。今回の場合は聖域からの調査では分からないことがありましたからね。私が、調査に出ました。」
はぁ……と、リーフさんは息を整えて足を止めました。
リーフさんが足を止めた場所は、小高い崖の上、その遥か下には小さな集落らしき小さな小屋がちらほらあります。
その小屋に囲まれるように、真ん中には大きな焚き木があって、そこは村人たちの集まる広場みたい。
「りぃふ。むら、ありゅにょ。」
「まだこの星の人類は少なくて、この村のような集落が2、3程しかありません。ユキがリュウキ様とお出かけされたような栄えた星ではないのです。……っ。」
説明してくれている途中、ゴゴゴゴという地鳴りがして、突然地震がおきました。
ぎゅっと目を閉じた私の頭にリーフさんはほっぺを寄せてくれる。
「……おさまったようですね。大丈夫ですか?まだ地中の滋派が不安定のようですね。ですがいくら火山帯が多い星といっても頻繁に地震が起き過ぎています。やはり何かが……。」
「っ!りぃふ。あしょこ。ひと、が。」
視線をもう一度集落の方へ向けると、さっきの地震で岩が崩れたのか、たくさんの岩の塊が1つの小屋を押し潰していて、その周りに10人前後の人が集まっていました。
「どうやらあの小屋の人間が生き埋めになってしまったようですね……。急いでこの原因を突き止めなければなりません。ユキ。行きますよ。」
リーフさんは、クルリと方向転換をして歩き出そうとするから、私は慌ててリーフさんの服をきゅいっと引っ張ってしまう。
「りぃふっ。たしゅ、たしゅけ、にゃくて、いいにょ?」
「ユキ……。」
リーフさんは眉を寄せて私を咎めるような眼差しを注ぐけど、怪我してる人がいるんだよ?
今なら、助かるかもしれないんだよ?
なのに、なのに、どうして?
リーフさん、こんなにも優しいのに、どうして助けてあげないにょ?
はぁ……。どうもすみませんです。今回は難産でした^^;
出来ればもう少しゆるく仕上げたかったですが……頑張ります(泣)




