ぴんちなにょっ。
んぅー・・・。
泣きつかれてウトウトしてしまってたみたいだけど、あんまり眠れなくて、窓の外は少しだけ明るくなってた。
フラフラしながら、歩き慣れた四足歩行で少し歩いてベッドを見上げて見たけど、イフさんが眠った様子はなくて、シーツはピンと張ったままだった。
寝てないんだ、イフさん・・・。
そこから少し離れた私が通れる分だけ開いてくれている扉からお部屋を覗くと、昨日おやすみなさいを言った時と同じ場所でイフさんは机に向かって何かの書に目を通しては、書き込んだりと繰り返してる。
「みゅぅ・・・。」
「・・・・・。」
少し遠慮しながらも、小さく鳴いて声をかけてみたけど、イフさんは集中していて気づいてくれなかった。
へにゃりと伏せてしまった耳と、元気なく垂れてしまったしっぽを引きずって扉の前でエイルさんが来てくれるのを待つことにしたけど、まだまだ夜更け前だから、きっとまだまだ来ないよね。
気持ちは落ち着いたのに、さみしい気持ちは消えなくて、どうしちゃったのかなぁ私。
この場所では、みんなが大切な役割を持っていて、その人じゃないといけなくて、誰にも代わりはできなくて、いらない存在なんていない。
私はただの猫で、確かにこの世界には私しか猫はいないけど、何ができるわけじゃなくて、お手伝いしたくても猫のままじゃできないし、人間になっても2さいだもん。
パカ・・・っ。
「みぁっ!?」
しゅんとした気持ちになって、扉の横の猫扉にもたれかかった私は、突然ぱかっと開いた猫扉に驚いて、勢い余って廊下に転がり出てしまった。
えー・・・?
エイルさん、もう扉なおしてくれたんだ。
びっくりしちゃった。
おさんぽ、いっちゃおうかな?
夜明け前の冷たい空気をおむねいっぱいに吸い込んで歩いたら、気持ちもすっきりするかもしれない。
でも、昨日お約束したから、声だけかけてみようかな?
私は扉から顔だけ突っ込んでお部屋の中のイフさんを見つめた。
「みゅうー。」
今度は大きめに鳴いてみたけど、イフさんはやっぱり集中していて私の声は耳に入ってない。
ぷむぅーっ。
ちゃんと声かけたからね?
後から怒ったってげんまんはやぶってないからね?
そう思いながら、私は頭を廊下側にひっこめて、くるりと扉に背を向けると歩き出した。
***
ひとしきり、パタパタと庭園で走り回って、風に揺れるお花にじゃれついてみたり、いいにおいのする草の上でコロコロと転がってみたりして、少しだけ気分が上向きになった私は、探検気分で行ったことのない建物に足を向けてみた。
といっても、私が行ったことがあるのは、おいちいごはん食べるお部屋のある館と、イフさんのいる炎の館と、王さまの住んでるお城と、リーフさんのいる王立研究院くらいだけど。
とてとて・・・。
ここの建物は・・・パスッ。
薄いレンガみたいな色の館の花壇には、私の苦手なミントとか、においの強い薬草っぽいものがいーっぱい植えてあった。
絶対ここ、地の守護精のアルフさんのお家だよ。
アルフさんいつもにこにこしてるけど、私においちくないもの飲ませるからやだっ。
ここはパスパスっ。
地の館(だと思われる)建物を通り過ぎたら、今度はとってもきれいな噴水が見える門のところに出た。
噴水から出た透明なお水は溢れて小さな川になっていて、真っ白な外壁と空色のお屋根の館のまわりを囲むみたいに流れていってる。
わぁー♪
小さな川に流れていく花びらにテンションが上がっちゃった私は、そのままぴょんぴょんと跳ねながら花びらを追いかけた。
どんなに走っても、きっと館を一周したらさっきのとこに戻るはずだし、迷子になることはないはずだもん。
・・・と思っていた1分前の私。
甘いっ。その考え甘かったにょっ!
今すぐ考えなおしてぇぇーっ。
うぅ・・・これはもう、事件です・・・。
私の頭からしっぽの先くらいまでの長さ×(かける)2倍くらい、30cmほどの幅の小川の流れを追いかけて走っていた私は、水の館(だと思う)の裏に回ったところで大きな湖になっているのを確認(その間1.5秒)した。
あっと思った時には遅くて、花びらを追いかける勢いのまま湖にダイブ。
手のひらサイズの子猫の姿でスイスイ泳げるわけもなくて、ふにゃふにゃ言いながらも死に物狂いで這い上がったんだけど・・・。
にゃーっ!?
見えるとこ全部どろんこのでろでろで、イフさんに拾われてすぐの私みたいだ。
もう言葉の通り、濡れ鼠みたい・・・。
どうしよう・・・。
こんな格好で帰ったら、イフさんきっと怒って、作り直してすぐの猫扉もまたまた一方通行になっちゃうかもしれない。
それに、こんなにきれいな裏庭も、さっき必死に前足を動かして這い上がってしまったせいで、どろだらけにしてしまった。
水の守護精のマナさんも、怒らせてしまうかも・・・。
どうしていいか分からなくて、ひたすら湖の傍でうろうろとしていたけど、ちっともいい考えなんて浮かばにゃい。
このまま逃げちゃおうかななんて、ずるいことも頭に浮かんだけど、しっかりどろんこの地面には犯人の・・・ううん、犯猫?の私の小さな肉球の跡が点々としていた。
ぴるぴると震えてへちゃりと力なく座り込んでいたら、私に覆いかぶさるくらいの影が落ちてた・・・。
絶体絶命のピンチなにょーっ!!
このお話までは桜嘩音が執筆致しました。
次回のお話から私、瑠璃夢が引継いでいきたいと思います。
至らないところもあると思いますがお付き合いくださると嬉しいです。




