ひっかかったにょっ。
エイルさんに手を振りながらお別れした後、私はリーフさんにだっこされて王立研究院に向かっていた。
リーフさんは足を進めながらも私の格好を見て、ニコニコご機嫌みたい。
「ユキ。やはりジン様のシャツよりも、とてもよく似合っていますよ。ユキにはそういう可愛らしい洋服がいいですね。」
「にゃ。ありあとぉ。りぃふ。あにょね。おくつ、へんにゃかんじ、しゅゆにょ。」
今まで言えなかった足の違和感を訴えると、リーフさんは片手で私の足を靴の上からきゅいきゅいと押して、ああ、と納得したように頷いた。
「なるほど。靴が合っていないわけではなさそうですね。ユキは元々は動物だったわけですから、靴が履き慣れなくて窮屈に感じてしまうのでしょう。すぐに慣れるとは思いますが・・・歩かないことには慣れないでしょうね・・・。」
今この場で私を地面におろすかどうかで悩んでるリーフさんをじぃっと見ていたら、おなかがまたまた鳴いた。
きゅるりぃ~・・・。
「にゅぅ~・・・。」
「・・・ぷ。ふふ。まだ夕刻ですから今頑張らなくても食事をとって、それからユキがまだ元気なら練習してみましょうか。今は、一刻も早くその可愛らしいおなかに住んでいる虫のご機嫌を取らないとですね。」
楽しそうに笑っているリーフさんだけど、ねぇ、リーフさん。
私のぽんぽん、虫なんていないよ?
朝出てきたリーフさんのお部屋を通り過ぎて、1番奥にあったお部屋に入ったら、そこはちょっと高級な食堂って感じだった。
みんなでごはん食べるお部屋とはちがって、しっかり食堂。
「あ。リーフ様。お疲れ様です。・・・リーフ様?その子供は・・・?」
ぴしっとした白い服を着たお兄さんがリーフさんに話しかけてきたけど、私を見て戸惑ってる。
周りを見渡してみても、みんな同じような真っ白なお洋服を着てるから制服?なのかな?
リーフさんはみんなの着てる真っ白な服に金色の刺繍が入った真っ白なマントをつけているから、1番えらい人みたい。
そういえば『長』って言ってたもんね。
「ああ。城から報告が入っていたでしょう?白くて小さな獣と幼子の報告書。ユキですよ。今日はエイルの配慮でこちらで食事を取ることになりました。」
「あ。そうだったのですか。それじゃあコックに・・・って、その子、食べ物はどんなもの食べられるんですか?」
その人が恐る恐るリーフさんに尋ねると、リーフさんはしまったという顔をして手でおでこを抑えた。
「・・・私としたことが。エイルにユキの食事について、きちんと尋ねておくべきでした。ユキはなんでも食べられるのですか?」
「んに?うー・・。おいちいの、たべれゆにょ。」
ふにゃりと笑ったら、目の前にいた研究員の人が膝をついて蹲って震えてた。
ど・・・どうしたんだろ・・・おなかいたいのかな?
首をコテリと傾げていたら、リーフさんは小さく咳払いして、その人から離れてしまう。
「いいですか?ユキ。もし誰かとお話をしていてああいう状況になれば、すぐにこうしてその場を離れるのですよ?」
「う?んにゅ。」
よく分からないけど、とりあえず頷いておいたら、リーフさんは満足そうに頷いて、カウンターの方に足をむけた。
肩越しにさっきの人が見えたけど、まだ蹲ってた・・・本当にぽんぽんが痛いんじゃないかな?
私の心配をよそに、リーフさんはにこにこしながら、だっこしていた位置よりもう少し私を持ち上げて、ずらーっと並んでるお料理を見せてくれた。
大きなお皿に入ったお料理は、好きなものを持っているお皿に入れていいみたい。
「ユキの好きなものを食べていいんですよ。どれか食べたいものはありますか?」
「みゃっ。いいにょ?しゅきなにょ、たべりゅにょっ。」
嬉しすぎて耳がぴくぴく動いちゃったけど、リーフさんは涼しげな水色の瞳を細めて笑顔で頷いてくれた。
「そにょ、おしゃかにゃと、あっちにょ。にゃ、あれにゃあに?」
「はい。この煮魚と、こっちのパイ包みと・・・。ああ、これはですね。パルフェと言いまして、クリームや果実などが入っているデザートですね。数が少ないのは、まあここには男性しかいませんので、甘いものは少なめに作ってあるようです。食べてみたいですか?」
リーフさんは説明しながら聞いてくれたから、コクコクと頑張って頷いて見るとクスクスと笑い出した。
「ふふ。そんなに頷くと首がぽろりと落ちてしまいそうで心配ですよ。あまり私を心配させないでくださいね。」
ぽろりって・・・これくらいじゃ私の首、落ちたりなんかしないよ?
リーフさんは、『野菜も少しは食べましょうね』って、シチューみたいなスープを入れてくれて、テーブルに向かうと私を椅子に座らせてから、リーフさんは自分の分のごはんを取りに行った。
足をぷらぷらさせながらもいい子でじーっと待ってると、向こう側の席に座ってる研究員の人と目が合ったけど、サッと逸らされたの。
ぷむぅーっと耳をぴくぴくさせて、しっぽをふあふあと動かしてたら、すごーくしっぽ見られてる。
えー・・・これ、気になるの?
期待に答えて左、右、左、左・・・と、フェイントを入れつつゆらゆらさせてみたら、視線はうろうろしっぽを追いかけてきた。
かかったにょっ。
うん、フェイントにもしっかり引っかかってくれたあの人は、すごくいい人っぽいにょ。




