おれのしろいの。
【リュウキ視点】
リーフが報告に来た後、一度俺は自室に戻ってきていた。
今聖地がいる宇宙の緑豊かで水が豊富な星、小さな幼子を連れて行っても安全な大きな都市。
あの国がいいやろうか、それともあの国の方が楽しんでくれるやろうかと、俺らしくないくらいにそわそわしてることに気づいて苦笑いが漏れた。
白いの・・・いや、今はユキか。
地球という星の小さな島国の日本という場所で過ごしたあの子猫は、人の姿になれるいうんはおかしい話やった。
やけど、ここはあの世界やないし、俺と暮らしていた頃から本当は気づいてたんや。
何年か一緒に暮らしていて、まったく出逢った頃と変わらへん姿。
周りの人間も気味悪がりだしてたけど、俺はそんなん全然関係あらへんかった。
もし、あの頃からそういう珍妙な存在やったんやとしても、俺はたぶん、否、間違いなくあいつを手放すことはせえへんかったはずや。
「・・・まだこんな時間なんやな。」
時間はまだ朝早い・・・けど、落ち着きなく時間を気にしてしまうんは、俺は早く幼子になったユキの姿を見たいと思ってるんやなぁと考えてまう思考に苦笑いをこぼした。
いつも待ってくれてたんは、白いのの方やったのに、俺の方が待ちきれへんなんて、なんや不思議なもんやなぁ。
いつもよりも少し身軽な格好に着替えた俺は、今は多分、他の守護精たちと食事を取ってるやろうユキがいる部屋に向かうことにした。
***
なんや、静かやな。
守護精たちがいるやろう部屋の前で足を止めた俺は、部屋の中の気配を探ってたんやけど、ノックしようとした手を宙に浮かせたまま止まってしもうた。
あかんなぁ・・・こんなことで手が震えとる。
相当緊張しとるらしい。
気を取り直してノックしてから扉を開いた俺の目に飛び込んできたのは、白銀色のふわりとした長い髪の幼子がエイルに膝抱きにされている姿やった。
あれが・・・ユキなんか?
呆然と立ち尽くしている俺に気づいた少し濃い桜色の大きな瞳がこちらに向いた。
ああ・・・あれは、ユキ。俺の白いの。間違えるはずあらへん。
エイルがどうしたか聞いてきて、戸惑ったがなんとか迎えに来たと告げると、イフが俺の前まで歩いてきてどういうことやて聞いてきた。
リーフからなんも聞いてへんみたいに・・・報告ミスなんてリーフにしては珍しいと思った。
ユキが必死にたどたどしい口調で説明してくれてたけど、白いの、お前、そんなかいらしい声してたんやなぁ。
俺はこの幼い姿のユキに、俺がそうやて、ちゃんと説明できるんやろうか?
そう思うたら少しだけ切ない気持ちになったんや。
イフに抱かれているユキに少しだけチクリと俺の胸が痛んだ。
ユキは心配そうに俺とイフを交互に見てたけど、イフが苦笑いを漏らして『そうか。楽しんで来い』と言うたらユキは眉を下げながらもふわりと笑うた。
俺の名前を言いにくそうにしとるユキに、俺は声をかけることにした。
「あー・・・。様なんてつけへんくてもええよ。言いやすいように呼んでくれてかまへん。」
「にゃ・・・。りゅう?」
「ん。それでええよ。」
ぎこちなくではあったけど、なんとか言葉は交わせたことにほっとした。
「ほな、出かけようか。」
「お待ちください。」
俺がなんとかこの場からユキを連れて出ようとした時、エイルからまさかの『待った』がかかる。
「・・・?何か問題でもあるんか?」
「ありますっ。大有りですっ!」
な・・・なんや?
普段のエイルはこんなに激しい性格はしてへんかったはずやけど・・・。
俺がたじたじになっていたところにエイルはイフの腕にいたユキを抱き取ると、ずいっと俺の前にユキを見せ付けるように出した。
ちんまいなぁ・・・足がぷらぷらしとる・・・じゃなくて、何がしたいんや?
そう思ってユキの向こう側で眉間に皺を寄せているエイルを見る。
「よぉーー・・・っく、このユキちゃんの格好を見てくださいっ!どう思いますかっ!?」
「あ?ああ・・・。ちんまいなぁ。」
「ええ。そうですね。小さくて可愛・・・って、違いますっ!そうではなくて・・・ユキちゃんはジン様のシャツ1枚しか着てないんですよっ!ノーパ・・・いえ、失礼しました。下着もつけていないんですっ。そんなユキちゃんをこの姿で連れ出すなんて僕は認めませんよっ。」
こいつ・・・ノーパンて言いかけたやんね・・・?
「なら・・・どうしろいうん?」
「ユキちゃん。」
「にゅ?」
「ユキちゃんがそのままの姿でもとっても可愛らしいとは思うんです。けど、今日のお買い物だけは、元の姿に戻れませんか?さすがにこの姿での外出は、ユキちゃんが危険な目にあってしまう可能性もあるんです。だから、ね?」
確かに・・・エイルの言うことはもっともやと思う。
せやけど、会話が出来なくなることは俺にとってええことなんか、それとも後回しにしてしまうんは、あかんことなんか、はっきり分からへんかった。
まあ、ユキの服を着せてから考えることにするか。
今は、ユキであり、白いのであるこの小さな存在と共にいられることで満足やからね・・・。




